2014-01-01から1年間の記事一覧

何が起きても、お互いが助け合う、そんな社会

(日経「春秋」2014/12/31付) 大きくなったら、どんな仕事がしたい? 小学生の男の子に聞くと、最近では、警察官や消防士、自衛官と答える子が増えているらしい。「人を助ける仕事だからなのでは」と、先生たちは分析している。こうした職業の人気は、近年…

現代の羊は、顧客情報だろうか

(日経「春秋」2014/12/30付) ベルリンから季節の便りが届いた。「ハルキ・ムラカミを見て、とてもうれしかった」と。作家は独紙の文学賞を受賞。先月、壁崩壊から25年の地で「世界には民族、宗教、不寛容といった壁」が残ると講演していた。「村上さん」と…

「地方創生」各自治体が持ち味を光らせることが大切

(日経「春秋」2014/12/29付) 柳田国男が民俗学の研究に入っていったのは、30歳をすぎたころ。彼が訪れ、滞在経験が財産になった土地に、岩手県遠野地方と宮崎県椎葉村だ。民俗学の先駆者は地域による違いを興味深くとらえて、世の中に発信した。それぞれの…

男女対等の戦いも米国式民主主義を伝える役割を果たした

(日経「春秋」2014/12/28付) NHK紅白歌合戦の第1回は1951年に開かれたと。実はその6年前、終戦を迎えたその年の大みそかに、「第0回」にあたる生放送番組があったのだという。題名は「紅白音楽試合」。2人の若手局員が新しい時代にふさわしい音楽番…

研究そのものが壮大な虚構だったということか

(日経「春秋」2014/12/27付) 冬ざれの川は流れる水が減って、それまで見えなかった景色がむき出しになる。いまごろの季節のそんな眺めを「水落石出(すいらくせきしゅつ)」と言うそうだ。転じてこの四字熟語は、ベールがはがれて真相が露(あら)わになる…

表現の自由は名作か駄作かを選ばない

(日経「春秋」2014/12/26付) チャップリンの映画「独裁者」が米国で公開されたのは第2次大戦のさなか。そのころ、チャップリンのもとには脅迫状が次々舞い込んだ。暴動を起こす、映画館に悪臭弾を投げこむ、スクリーンを蜂の巣みたいにしてやる。思いあま…

アベノミクスは道半ばで、足踏みしている

(日経「春秋」2014/12/25付) 作家中島敦は、開戦1年後の昭和17年12月に33歳で没した。生前、発表した最後の作「名人伝」の主人公は天下一の弓の達人になろうと志す。並びない名手に弟子入りして、苦しい修行に打ち込むこと5年。ついには、連射しても、百…

資本主義と格差をめぐる問題の議論は尽きない

(日経「春秋」2014/12/24付) 「何がクリスマスおめでとうだ!」、「何の権利があってお前がめでたがるのかってことよ。貧乏人のくせに」。「クリスマス・キャロル」に登場する、強欲を絵に描いたような商人スクルージの悪たれ口。そんな老人だが、幼いころ…

「平和の守護者たち」

(日経「春秋」2014/12/23付) 11月24日朝、米カリフォルニア州のソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)本社に出勤してきた社員たちは、さぞ驚いたのではないか。立ち上げた端末の画面に「これは始まりにすぎない」との言葉。SPEの内部情報は…

愛称ブームは、地方空港の経営が苦しいことの裏返し

(日経「春秋」2014/12/22付) いつの間にか、空港の名前がにぎやかになっている。富士山静岡、徳島阿波おどり空港、対馬やまねこ、五島つばき空港、富山きときと空港、米子鬼太郎空港、鳥取砂丘コナン空港と・・・・・。愛称ブームは、地方空港の経営が苦し…

小さな木の実がなんとも大きな騒ぎを引き起こしたわけだが

(日経「春秋」2014/12/21付) 韓国でマカデミアナッツの売り上げが急増しているそうだ。「ナッツリターン騒動」のそのナッツがマカデミア、ということでにわかに世の好奇心がうずいているらしい。その航空会社はナッツ航空、ナッツ航空を傘下に置く財閥令嬢…

開業100周年の駅、今日も人が出会い、新たな記憶を刻んでゆく

(日経「春秋」2014/12/20付) 駅は巨大な記憶の箱である。大正11年3月、19歳の娘は夫の待つ欧州へ出発した。停車場で父は皆の後ろにいた。それが最後だった。娘は思い出を書いて、作家になった(森茉莉「父の帽子」)。翌年、関東を襲った大地震に耐えた駅…

その両国が国交回復の交渉を始めると発表した

(日経「春秋」2014/12/19付) 「人間、ぶちのめされたって負けることはねえ」、ヘミングウェイの「老人と海」の主人公の独白。この一節を、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長は「国の歴史を貫く鬨(とき)の声だ」と受けとめ、集会や行進のスロ…

春の労使交渉は始まってから来年で丸60年

(日経「春秋」2014/12/18付) 7日に亡くなった根本二郎・元日本郵船社長は財界労務部といわれた日経連の会長時代に慌てたことがある。1996年1月、日本の生産性の低迷を考えベースアップ(ベア)の見送りを表明した。ところが豊田章一郎・トヨタ自動車会長…

政治の側に低成長世代の思いをくみ取る努力が足らない

(日経「春秋」2014/12/17付) 20代を対象に政治意識を調査のなかに、投票に行かないと決めている若者に対し理由を聞いた結果がある。「投票したい」と思う候補者がいない、政党や政策がない、という答えが多かったという。若い世代の望みはどこにあるのか。…

投票率が最低という危機

(朝日「天声人語」2014年12月16日) 赤坂真理さんが『愛と暴力の戦後とその後』で、そのころを描いた漫画に出てくる空き地には、決まって土管が3本、ピラミッド状に積んであった、と。赤坂さんは、そんな光景を現実には見ていないというが、懐かしく思い出…

安倍政権も、野党も、有権者も、責任がある

(日経「春秋」2014/12/15付) 半世紀も前だが、正面に少女を描いた明治の粉ミルクの缶があった。絵の少女は同じ缶を手にしていて、その缶にも少女が描いてある。その少女も缶を持ち、そこに少女が……。ずっと続いていく絵柄を自ら政治に向き合う姿に重ねてい…

権利の上に眠るものは、保護に値せず

(日経「春秋」2014/12/14付) 「消費税は所得が多い人にも少ない人にも等しくかかるからね」「でも、国の借金を放っておいちゃいけないじゃない」。地下鉄に乗っていたら、こんな会話が聞こえてきたので驚いた。どう見ても小学校の5、6年生といったところ…

衆院選は冬を追い払い、春を招くだろうか

(日経「春秋」2014/12/13付) アンデルセンの「即興詩人」、主人公アントニオの舟が突然、竜巻に遭う。混乱した船頭は「尊きルチア、助け給へ」と叫ぶ。気づくとカプリ島の青の洞窟に漂着していた。金銀財宝の入った壺(つぼ)を見つけ、盲目の少女ララに救…

「あなたの想(おも)いを一票に」

(朝日「天声人語」2014年12月12日(金)付) 若い男性が「これからの未来を2人でつくろうよ」と語りかけ、若い女性が「もちろん。うれしい」と応える。「あなたの想(おも)いを一票に」、松山市選管のCM。11月16日にあった愛媛県知事と松山市長のダ…

「セルース猟獣保護区」、ゾウの数がこの5年で半分に

(日経「春秋」2014/12/11付) タンザニアの「セルース猟獣保護区」は、狩猟用の動物を保護するため設けられたのが始まりだ。今では狩猟は禁止。1982年に世界自然遺産に登録された。面積はおよそ5万平方キロ。九州よりも広い動物たちの楽園だ。ところが、ゾ…

禁令はそれ自体が人々を縮み上がらせる

(日経「春秋」2014/12/10付) レバ刺しを出した焼肉店経営者ら逮捕――。この1年ほどの間に、こんな摘発が2度もあった。おととしの夏に食品衛生法で牛の生レバー提供が禁止となり、やがて警察は強権発動に踏み切ったのだ。法律が独り歩きするケースの見本か…

73年前、真珠湾攻撃の戦果の興奮に包まれていた

(日経「春秋」2014/12/9付) 終戦間際の話だ。もし米軍が海から東京周辺に上陸したら、北関東の戦車部隊が迎え撃つため南下することになっていた。しかし、大八車を引いて北へ逃れる人の群れで道はごった返すだろう。どうすればいいか。尋ねられた上官は言…

リコールの判断基準はただ1つ。ユーザーの安全である。

(日経「春秋」2014/12/8付) 企業向けに書かれた危機管理の教科書を開けば、必ず出てくるのがタイレノール事件。1982年、米国の製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソンの主力商品だった解熱鎮痛剤タイレノールに、何者かが毒物を混入した。シカゴ周辺で、…

中央頼みはもう続かないことに有権者も気づいている?

(日経「春秋」2014/12/7付) 米シアトルは、マイクロソフトの創業者が故郷、シアトル近郊に本社を移して30年余り、移転当時のシアトルは製造業の不振で失業率も高く、人口減と犯罪の多さに悩んでいた。今では高い技術を持つ労働者が増え、同じ学歴同士で比…

裁判所が無頓着、無責任だった証し

(日経「春秋」2014/12/6付) 町奉行の下で市中の見回りや取り調べにあたる与力に辣腕でならす男がいた。ある日、家に帰ると下男を「金を盗んだな」と問い詰めた。無実は承知のうえである。もちろん下男は否認したが、厳しい追及にやがて罪を認めてしまう。…

「ミシュランガイド」、星なし5000円以下の良質店

(日経「春秋」2014/12/5付) 花のお江戸の人々は外食が大好きだった。グルメガイドも出版されていて、「江戸名物酒飯手引草」なる本が出ている。高級料亭あり、うなぎ屋ありで、つまり昔からちまたの店の格付けをひどく気にするわれらである。そんな伝統ゆ…

「はやぶさ2」往復52億キロを飛行、6年後に地球に

(朝日「天声人語」2014年12月4日) ハヤブサの妙技は人々を魅了する。動きが素早く勇ましい様子を、この鳥に見立てることが多く、色々なものの名前にも使われる。東北新幹線の「はやぶさ」、かつて東京と鹿児島を結んだ寝台特急にも同じ名があった。さかの…

その姿に生き返る気がした人は多かろう

(日経「春秋」2014/12/3付) 「私は、自分の内部の不良少年に絶えず水をやって、枯死しないようにしている」と哲学者の鶴見俊輔さん。気づけば身過ぎ草、世過ぎ花ばかりが心のあちこちにはびこり、とげっぽいのは枯れかけていたりする。そんなときは映画館…

アベノミクス。出口がまだ見えない。

(日経「春秋」2014/12/2付) クレタ島の迷宮は一度入ると出られない。牛頭人身の怪物ミノタウロスが幽閉され、貢ぎ物の少年少女を食べていた。英雄テセウスは自ら、いけにえとなって潜入する。魔物を倒すと、王の娘が渡した赤い糸をたぐりながら出口を目指…