「平和の守護者たち」

(日経「春秋」2014/12/23付) 11月24日朝、米カリフォルニア州ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)本社に出勤してきた社員たちは、さぞ驚いたのではないか。立ち上げた端末の画面に「これは始まりにすぎない」との言葉。SPEの内部情報はすべて手に入れた。要求に従わないなら機密情報を公開する……。ハッカー集団が盗み出した情報の量は、およそ100テラバイト。世界で最大級の図書館、米国議会図書館が収蔵する印刷物をすべて足し合わせて10テラバイトほどなので、想像を絶する規模だ。厚かましくも「平和の守護者たち」を名のるハッカー集団は許しがたい。かくも膨大な、外に漏れてはならない情報が盗まれたこと自体に、底冷えするような感覚を禁じ得ない。日常のかたわらに、実はブラックホールがぽっかりと口を開けているような。時代の一面というべきなのだろうか。
(JN) 書類の管理面で、非常に便利であるペーパーレスによる電子データ管理であるが、その保護の壁を破られると、大量のデータが簡単に、しかもスピードを以て世界中にばら撒くことができる。便利で安全なこのデータ管理が、「平和の守護者たち」に掛かると最も容易く丸裸にされてしまう。この電子方式は、その保管だけでなく情報伝達の中心であり、これをコントロールできれば、様々な混乱を引き起こせるし、恐ろしい指示を出すこともできよう。自国から核ミサイルを飛ばさずとも、お互いに何かができる恐ろしい世の中である。もう、電子の網から我々は逃れることはできない。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO81232990T21C14A2MM8000/