2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

敗れて重荷を背負う必要はない

(JN)世界中から集まる実力者たちも、日ごろの実力以上のものが出る時もあれば、思うほどの力を出せないときもある。国を代表しているこの人たちを常に称えなければならない。がんばれ選手たち。私たちの感情を動かしてください。 (日経/春秋 2012/7/31付)…

ソーシャルベンチャー

(日経/春秋 2012/7/30付) 「社会貢献に商機見いだす」。仕事を探す障害者への研修や、生活の苦しい人向けの安価な健康診断。社会問題をビジネスで解決する「ソーシャルベンチャー(社会的起業)」を若い人が次々に立ち上げているとの内容だ。英国は、この…

避暑のためにはまず「避社」を

(日経/春秋 2012/7/29付) 明治になって日本にやって来た外国人たちは、夏の暑さと湿気にほとほと閉口した。それで「発見」したのが軽井沢や箱根、六甲山、雲仙といった高原の保養地であった。「ホテルのテラスにはいつも外国人たちが英字新聞を読んだり、…

さあ、ロンドン五輪だ

(日経/春秋 2012/7/28付) さあ、ロンドン五輪だ。開会式のテーマは「驚きの島々」。会場である8万人収容のメーンスタジアムは周辺の再開発で余ったガス管などを使い、環境に配慮した設計なのだそうだ。「いちばん」をつくろう――。建て替えることが決まっ…

ナショナリズムと平和が五輪で溶け合っている

(日経/春秋 2012/7/27付) 東京五輪は、国ごとに教科書通り行進した開会式と、国も男女もごったになった選手に肩車されて日本選手団の旗手が姿をあらわした閉会式の対照は鮮やかな印象を残した。その光景にナショナリズムと平和の問題を感じた、と言ったの…

最低賃金上げより生活保護の脱却を促せ

(日経/社説 2012.07.26) 2012年度の最低賃金の引き上げ額の目安が時間あたり平均7円で決着した。焦点となったのは、最低賃金で働く人の手取り収入が生活保護の支給額を下回る「逆転現象」の解消だ。仕事に就くより、生活保護を受ける方が暮らしに余裕があ…

まず隗(かい)より始めよ

(日経/春秋 2012/7/25付) 中国の故事に由来する味わい深い言葉は多い。「まず隗(かい)より始めよ」は、そんな成語の一つだろう。遠大な事業をなし遂げようとするなら足元から着手すべきだ、という意味。大津市の中学2年生が自殺した問題をめぐる平野博…

犠牲という問題が正面からとりあげられていない

(日経/春秋 2012/7/24付) 宗教学者の山折哲雄さんが日曜の連載中の「危機と日本人」に、頬をひっぱたかれたような気がしたことがある。その痛みが、きのう発表された福島第1原発事故についての政府事故調査委員会の最終報告を見てよみがえった。大切な話…

守るべきは命であり、線量計や会社ではない

(朝日/天声人語 7月23日付) 英語のカバーは「見せかけ」の意味でも使われる。収束作業に携わる建設会社の役員が、線量計を鉛のカバーで覆い、被曝線量を低く装うよう作業員に指示していた。彼らは、法定の被曝量に達するとしばらく働けない。現場を仕切る…

卒業証書なら壁に飾ってある。でも何の助けにもならなかった

(日経/春秋 2012/7/22付) 「卒業証書なら壁に飾ってある。でも何の助けにもならなかった」。米国の歌手、ビリー・ジョエルさんが1982年に発表した「アレンタウン」という歌の一節だ。まじめに働けば報われるという教師の言葉はウソだった。職場が消えてい…

97歳の最重要戦犯

(日経/春秋 2012/7/21付) 人々は貨車に詰め込まれ、アウシュビッツに送られた。(「夜と霧」)。ナチスの親衛隊将校が右を指せばガス室へ、左を指せば強制労働へ。そんな貨車に人々を乗せる役割を果たしたとされる97歳の最重要戦犯が先日、ハンガリーの首…

第18共徳丸が、そのままの姿で残されている

(日経/春秋 2012/7/20付) 陸に打ち上げられた船は悲しい。気仙沼の県道沿いに全長が60メートルもある第18共徳丸が、そのままの姿で残されている。忘れたいけど、忘れたくない。被災地を歩くと、人々の迷いが具象化したような場所に出くわす。あの日の悪夢…

秋霜烈日

(日経/春秋 2012/7/19付) 検察の取材で、名前と肩書だけの名刺を何度かもらったことがある。外の人の意見を聞くつもりはないので連絡先は不要、という意味だったのかもしれない。信頼回復が最大の仕事となった検事総長が20日付で交代する。組織をいじり、…

「見て見ぬふり」

(日経/春秋 2012/7/18付) 日本人の心にもっとも深く刻まれる「見て見ぬふり」をしたのは、歌舞伎「勧進帳」で義経、弁慶主従をあえて見逃す安宅の関守、富樫左衛門だろうか。このところの「見て見ぬふり」が意味するのは保身、なれ合い、遠慮に臆病、そし…

暮らしや産業を豊かにするため、お金を有効に使う

(日経/春秋 2012/7/17付) 渋沢栄一は事業家の第一歩を静岡で踏み出した。幕臣だった彼は維新後、徳川慶喜が隠退していたこの地に10カ月滞在。そのとき藩に設立を説き、自らかじ取りしたのが、商社と銀行を合わせた「静岡商法会所」という組織だった。明治…

身近な自然に理解を深める日

(日経/春秋 2012/7/16付) 明治末の1910年夏、東京を大洪水が襲った。台風のもたらす長雨で荒川や綾瀬川の堤防が次々に決壊。浅草や千住、亀戸など下町一帯は一面の湖に。国土交通省によれば死者は369人に達する。この惨禍を契機に本決まりになったのが荒川…

地名には人々が残した教訓が隠されている

(日経/春秋 2012/7/15付) 東北地方の沿岸部には女川や小名浜のように「おな」がついている地名が点在している。高く打ち寄せる波である「男波」が語源なのだそうだ。地名にはその土地の成り立ちやいにしえの人々が残した教訓が隠されている。そんな地名の…

慣れた日常の中に、怪しいムラは出現していないだろうか

(日経/春秋 2012/7/14付) 難しげな専門用語が飛び交う場所には、気を緩めると「ムラ」ができてしまうものらしい。金融大手バークレイズが、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を不正に操作。中央銀行までが「ライボー村」の住人だったのか。LIBOR…

ことばは天を目指すが心は地にとどまる

(日経/春秋 2012/7/13付) 最近とみに違和感。二言目には「国民のみなさま」と口にする首相。生まれた新党の名がズバリ「国民の生活が第一」とは。かくして「国民」の名の下に民主党は分裂した。「国民の生活が第一」は民主党が3年前に政権を奪ったときの…

麻薬組織の撲滅をめざし

(日経/春秋 2012/7/12付) 「美しすぎる警察署長」。マリソル・バジェス・ガルシアさん。当時、20歳。犯罪学を学ぶ現役の女子大生で、1児の母でもあった。メキシコ北部の町で警察署長に就いたことは、世界的なニュースになった。メキシコの北部、米国との…

見て見ぬふりをしていて、これも立派ないじめ

(朝日/天声人語 7月11日付7月10日付) 以前、いじめ問題で取材した小学校の先生は、担任するクラスを「海」にたとえた。子どもの世界という広くて深い海の中で、何が起きているのか。把握するのは本当に難しい、と。この先生は深刻ないじめに気づかずにいた…

野球によつて、数字による明快で能率的な認識の方法を刷り込まれた

(日経/春秋 2012/7/10付)プロ野球が日本にもたらしたものは何か。とりわけ大事なのが「数量化する態度」だと丸谷才一さんは書いた。打率、防御率、ゲーム差……。「われわれは野球によつて、数字による明快で能率的な認識の方法を刷り込まれた」と著書にある…

無理せず賢く無駄をなくしたいものだ

(朝日/天声人語 2012年7月8日(日)付)文明開化の明治の初め、「ランプ亡国論」なる珍説が世に流布したが、開化の奔流は止められず、西洋の利器はもてはやされ、日本の夜を明るくした。しかし、ランプの天下は長く続かない。「世の中は、電気の時世になっ…

日本の気前のよい支援に感謝します

(日経/春秋 2012/7/8付)来日したIMFのラガルド専務理事は10代のころ、シンクロナイズドスイミングの選手だった。「歯を食いしばってニッコリ笑うこと」。人生の指針を、厳しい訓練から学んだという。シンクロの演技の美しさは、一糸乱れぬ動きにある。…

土建国家は時代遅れだ

(日経/春秋 2012/7/7付)かつて中央線の大ターミナルだった万世橋駅の遺構、都会の真ん中で忘れられていたこの鉄道遺産が集客施設として生まれ変わるという。来年夏にオープンするそうだ。最近の鉄道ブームをまた盛り上げる効果があるかもしれない。さてそ…

科学研究のやり方には警視庁型とアマゾン型

(日経/春秋 2012/7/6付)科学研究のやり方には警視庁型とアマゾン型の2種類がある。結果の目星がついていてその結果を得るための研究が警視庁型、研究対象の何たるかも分からぬまま秘境に分け入るのがアマゾン型――。さしずめ警視庁型の極みである「ヒッグ…

豊かな森や水こそが、日本が世界に誇る資源

(日経/春秋 2012/7/5付)「国内消費量の200年分以上」と聞いて驚いた。携帯電話や電気自動車の製造に欠かせないレアアースが、南鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)の海底に眠っているという。他、燃料も、採掘技術やコスト面の課題が解決できれば、…

昭和オヤジも昭和を知らぬ若い人もげんなり

(日経/春秋 2012/7/4付)昭和時代の学生って、どんな生活してたんですか? 昨今の若者にとって、昭和は遠いのだろう。政治の世界ならば、いわば「昭和な人」がいまも活躍中だ。まずはこんどの民主党分裂劇の主役、小沢一郎さんの挙措の古めかしさといったら…

タイの中央銀行は通貨バーツの変動相場制への移行

(日経/春秋 2012/7/3付)15年前のきのう。タイの中央銀行は通貨バーツの変動相場制への移行を発表した。そしてバーツは暴落した。その衝撃波はアジア全域、さらに世界に及んだ。いわゆるアジア通貨危機だ。韓国は国際通貨基金(IMF)に助けを求めて駆け…

僕は、あの一行に羨望を感じたな

(日経/春秋 2012/7/2付)作家の三浦哲郎が、生涯の師と仰いだ井伏鱒二をはじめて訪ねた日の思い出を残している。「君、今度いいものを書いたね」。「僕は、あの一行に羨望を感じたな」と言ったという。なにより、若者の才能をまっすぐ敬う井伏の器の大きさ…