2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

石炭火力捨てる選択肢はない

(日経「社説」2013/1/31付) 原子力発電をめぐる論争の陰に隠れて目立たないが、石炭火力発電についても推進派と慎重派の隔たりが大きくなってきた。慎重派の筆頭格は地球温暖化防止の旗を振る環境省だ。一方、経済界の多くや電力業界は濃淡はあっても推進…

「フタバから遠く離れて」

(日経「春秋」2013/1/30付) ドキュメンタリー映画が「フタバから遠く離れて」が、先週末に福島県内では初となる上映会が福島市であった。無念や絶望、怒り、諦念。この映画では被災者の様々な思いを四季折々の風景と重ね合わせて描いている。かつては原発…

「官邸裏の」で済まされてしまうかもしれない

(日経「春秋」2013/1/29付) 国会といえば「永田町」、東京証券取引所は「兜町」、そして「桜田門」なら警視庁である。同様に「三宅坂」は社民党の前身、旧社会党の代名詞として親しまれてきた。その社民党が三宅坂を離れ、きのう再スタートを切った。新し…

普通のことをしっかりやり、太陽を給油し、大層な1年に

(日経「春秋」2013/1/28付) 1年あれば大層なことができる、そういう気になる。背はスポーツ選手の姿が押してくれる。去年の惨敗から1年で箱根を制した日体大の駅伝が代表格か。あらためて気づかされたのは、食事を抜かないとか、6時の朝練習の前にきち…

アジアの中心で世界でもトップ級、とはいかない時代だ

(日経「春秋」2013/1/27付) 最近の若い人たちに対し、海外に関心を持たず内向き志向だ、競争を避けのんびり主義だと非難する言葉をときどき聞く。本当だろうか。就職活動前にインターンとして職場を体験する学生は多い。難関大学の学生が、老舗企業ではな…

さまざまな生を断ち切ったテロへの憎しみが募る

(日経「春秋」2013/1/26付) 搭乗者リストにあるおびただしい数の名前と向き合いつつ、残された家族の悲痛に触れた。落命した人々の、暮らしの一端を知った。1985年の日航ジャンボ機墜落事故はメディアにとって、犠牲者520人の物語をしるしていく営みでもあ…

壊すのは一日の無思慮な行動で十分だ

(日経「春秋」2013/1/25付) 80年前、ちょうど両大戦の間にドイツの有名な批評家、クルティウスが書いた。「仏独両国の和親を心から望んでいるフランス人とドイツ人は幾百万幾千万あるか知れない」。「和親に成功しない場合、何が我々を待ちかまえているか…

日揮という一企業に絶大な信頼を寄せている

(日経「春秋」2013/1/24付) 炎熱の砂漠、多湿のジャングル、氷点下の氷原。地球上のあらゆる極限の地で、この会社の社員は働いている。プラント会社の日揮は、約2千人の社員の1割以上が常に海外の建設現場にいるアルジェリアのイナメナスも、その一つだ…

効果的な勉強ができるかどうかだ

(日経「春秋」2013/1/23付) バブル期の話になると東京・芝浦にあったディスコ「ジュリアナ東京」がオープンしたのはバブルがはじけた後の1991年5月なのだが、世の中にはまだ浮かれ気分が漂っていたのだろう。この年の消費者物価指数上昇率は前年比3.3%。…

入試中止で体罰がなくなるか

(日経「社説」2013/1/22付) 大阪市立桜宮高校の自殺した事件をめぐり、市教委が同校体育科とスポーツ健康科学科の入試を中止することを決めた。「体罰を生む体質を残したままで新たに生徒を受け入れるべきではない」と橋下徹市長。これに沿った決定だが、…

無慈悲な物語が絶えない地球

(日経「春秋」2013/1/21付) 1972年2月、長野県軽井沢町で起きた「あさま山荘事件」は解決までに219時間を要した。犯人の母親による説得、送電停止、放水と手を尽くした末に、あの有名な鉄球作戦がとどめを刺す。さすがに当時でもあまりの慎重ぶりにいらだ…

努力の過程で精神面も鍛えられる

(日経「春秋」 2013/1/20付) 「大鵬さんは、最初から大きくて強かったのでしょう」「天才ですね」。そう持ち上げられるたびに、とんでもないと思ったそうだ。3その元横綱・大鵬が、72歳で亡くなった。自分は天才ではなく努力の人間だと本紙連載「私の履歴書…

一人の生命は地球より重い

(日経「春秋」2013/1/19付) ある人は「ミスター・マールボロ」と名づけた。密輸にしろ身代金目当ての誘拐にしろ、卑劣な手段でテロ資金をかき集める能力の高いことが、うかがえよう。テロリストたちが人質の一部を連れて脱出しようとしたので、軍事作戦を発…

バスの語源は、ラテン語で「すべての人のために」

(日経「春秋」2013/1/18付) 走るバスの語源は、ラテン語で「すべての人のために」を意味する「omnibus」からきているそうだ。きょう18日は「都バスの日」。1923年の関東大震災で路面電車が壊滅的な被害を受け、翌年のこの日に東京でバスが走り始め…

直下地震対策に死角はないか

(日経「社説」2013/1/17付) 6400人余りの命が奪われた阪神大震災からきょうで18年になる。都市の直下で活断層がずれる大地震は、列島のどこでも起こりうる。阪神の被災地では高校3年生までが震災を直接知らない世代になり、地元は災害体験の風化に危機感…

0番線に息づく地元への温かいまなざしを

(日経「春秋」2013/1/16付) 日本各地に0番線のホームがある鉄道駅がいくつもある。その多くは後から敷いたローカル線のために付け足した乗り場だ。豪雪地帯にあるJR東日本の越後湯沢駅も、0番線には、北陸の町を結ぶ「ほくほく線」の普通列車が乗り入…

きょうは東京警視庁が創設された日

(日経「春秋」2013/1/15付) 近ごろ暗いニュースばかりで、と嘆いちゃいけません。世の中が明るいから、暗い話が目立つわけで。立川談志さんの落語の枕。警察庁が発表した昨年の犯罪情勢の記事を読んだからだ。犯罪は10年連続で減り、約30年前の水準に戻っ…

ソーシャル世代の生かし方

(日経「社説」2013/1/14付) 今年の元日を20歳で迎えた新成人は122万人。団塊世代が20歳だった1970年ごろの半分。貴重な若い「人財」をどう育て、それぞれの場で活躍してもらうか。昨年の日本生産性本部の新入社員調査で、いまの会社に一生勤めたい人の割合…

こうして化かし合いが加速する

(日経「春秋」2013/1/13付) 付属高校からエスカレーター式に大学に入った学生は、就職活動で不利になる。そういううわさがあるそうだ。本紙電子版の連載企画「就活探偵団」で記者が採用担当者などを取材した。ある食品会社は「付属校上がりはお断り」。理…

新成人にこんな青春像を伝えたい

(日経「春秋」2013/1/12付) 青春と病気と貧乏、明治になってプライベートな思いをうたうようになった近代短歌の三大テーマだと、歌人の三枝昂之(たかゆき)さん。病気は正岡子規、貧乏は石川啄木。そして青春が与謝野晶子である。「ゆあみする泉の底の小…

おぞましき王国

(日経「春秋」2013/1/11付) むかし、軍隊では一般社会のことを「地方」と呼んでいた軍隊こそが日本の中心だと、その閉鎖性、密室性、排他性。ここでの古兵が新兵に加えるリンチはときに凄惨を極め「地方」を夢のように遠く感じたそうだ。大阪の市立高校の…

未来へつなぐ企業社会であってほしい。

(日経「春秋」2013/1/10付) 伊勢神宮は20年に一度、社殿を新しく建て替えてご神体を移す。飛鳥時代の持統天皇の世から1300年以上続く決まり事である。今年はその「式年遷宮」の年。建物だけでなく装束や宝物などの道具も新調するそうだ。20年の歳月がたて…

「庶民のマグロ」日本が守ろう

(日経「社説」2013/1/9付) 今年の初セリで1匹1億5千万円を超す史上最高値を記録したクロマグロは、上質なトロがとれるためもっとも値段が高い。一方、価格が手ごろなのがメバチだ。その「庶民のマグロ」の資源減少が危惧されている。主漁場である太平洋…

国力を高める(最終回) 世界の人々から求められるために

(日経「社説」2013/1/8付) 外交、科学技術、生活文化。日本が世界から求められる国であるために、強みとして生かしたい分野だ。人々が平和で豊かな生活を送るための貢献が、結果として日本の地位を高めることになる。すぐに規模を増やすのは無理だが、限ら…

国力を高める(5) 多様な人材が革新と成長を生む

(日経「社説」2013/1/7付) 国籍や性別、年齢などにとらわれず、多様な人材を組織に集める「ダイバーシティー」が日本でも重視され始めている。日産自動車は社内の上位98のポストのうち48を外国人が占める。女性の視点も企業にとって貴重だ。ローソンはプラ…

国力を高める(4) 国際ルール順守だけでなく創出を

(日経「社説」2013/1/6付) 日本人はルールを守るのは得意だが、全く新しいルールをつくり出すのは下手だといわれる。世界のどこかで誰かが決めた規範を真面目に守るだけでは、国際競争で優位に立ち、日本の国力を高めることはできない。国際的な技術基準や…

国力を高める(3) 産業の新たな担い手を育てたい

(日経「社説」2013/1/5付) 産業の視点から2012年を振り返ると、戦後の日本の成長をけん引した家電産業の失速が誰の目にも明らかになった年だった。自動車などなお強い部門もあるが、それも拠点の国際展開が進み、国内における事業の裾野は徐々に小さくなる…

高齢化を嘆くより、家族の力を生かす

(日経「春秋」2013/1/4付) 「お母さん」。俳優の高倉健さんが亡き母親に呼びかける。「あなたに褒められたくて、ただ、それだけで」頑張ってこられたのだと。かつてエッセー集で、そう真情を吐露していた。年末年始の帰省で、ふだんは自身が子を持つ立場で…

国力を高める(2) 富を生む民間の活力を引き出そう

(日経「社説」2013/1/3付) 米国の学者リチャード・イースタリン氏が「幸福の逆説」を唱えたのは1974年である。1人あたりの国内総生産(GDP)が増えても、国民の幸福感が高まるとは限らないという意味だった。だが雇用や賃金を生み出し、国民に富をもた…

中小企業への就職を促そう

(日経「社説」2012/12/31付) 景気は不透明なままで新卒者の就職は依然として厳しい。効果的な就職活動の手助けが要る。求人数の多い中小企業と学生の橋渡しに力を入れるべきだ。中小企業は独自技術で付加価値の高い製品を開発したり、地域に密着して顧客を…