2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧
(日経「春秋」2014/5/31付) 北朝鮮が、拉致された人々ら彼(か)の国にいる可能性のある日本人の安否を再調査することを約束したという。そもそも拉致は無辜(むこ)の市民に対する北朝鮮の国家犯罪である。今回の日朝の合意には「従来の立場はあるものの…
(日経「春秋」2014/5/30付) 「僕たち、きれいに別れよう」。日本維新の会の分党を石原慎太郎氏はこんなふうに持ちかけたそうだ。世間は「この2人、無理があるよなあ」と思って見ていたからそんなに感動したかどうか。役者は両方とも大物で、なかなか力ん…
(日経「春秋」2014/5/29付) 「人を殺そうと思った」「誰でもよかった」、AKB48のメンバーに切りつけ逮捕された男が、調べにこう話しているという。過去にも同様の事件で、犯人らが口にしてきた言いぐさだ。こうした手合いは、多くの場合、力の強い大人…
(日経「春秋」2014/5/28付) 「愛新覚羅」という不思議な名字を新聞の訃報に見つけて、おやっと思った人も多いに違いない。ラスト・エンペラーとして知られる溥儀(ふぎ)はそれを受け継いだ最も有名な人物だろう。その王族の最後のひとりが亡くなった。北…
(日経「春秋」2014/5/27付) 女性が国のトップをつとめることは、今やそう珍しくない。それでも、2人の女性が20年以上も争い続けているバングラデシュの政治の風景は、独特だろう。かたやハシナ首相。こなたジア前首相。1991年以来、クーデターによる軍政…
(日経「春秋」2014/5/26付) 活気にあふれた職場では、決してない。希望がなく悲壮感だけが覆っているわけではない。やらなければならない仕事が目の前にある。職員は黙々と働いている。事故から3年2カ月がたった福島第1原子力発電所を訪ねた。廃炉には…
(日経「春秋」2014/5/25付) ラーメンにいきなりコショウを振りかけるかどうか――。ある店の店主に聞くと「かける派」「かけない派」はほぼ半々らしい。この香辛料の品不足が続き、取引価格が高騰している。今年のマレーシア産黒コショウの国際価格は前年同…
(日経「春秋」2014/5/24付) ヌーベルバーグの時代のフランス映画に「大人は判(わか)ってくれない」という傑作があった。フランソワ・トリュフォー監督の1959年の作品である。原題を直訳すると「400発」。無分別やらんちき騒ぎだという。400発の「発」に…
(日経「春秋」2014/5/23付) 堀場製作所が、「おもしろおかしく」という独特の社是を定めたのは1978年だった。そのころ社員の働き方についても、完全週休3日制を考えた。月曜から木曜の労働時間を1日8時間から10時間に増やし、残り3日は休む。仕事の能…
(日経「春秋」2014/5/22付) 「渭城(いじょう)の朝雨軽塵(けいじん)を●(さんずいに邑、うるお)す 客舎(かくしゃ)青青(せいせい)として柳色(りゅうしょく)新たなり」(雨が洗った柳の柔らかな新芽が目にしみる)。詩人王維が阿倍仲麻呂に送別の…
(日経「春秋」2014/5/21付) 「スーッと出て、パッと消えるのがスーパーだ」。1960年代、誕生したばかりのスーパーマーケットは、そう揶揄(やゆ)されたが、ダイエーが三越から小売業として売上高日本一の座を奪ったのは1972年のことだ。スーパーは、まさ…
(日経「春秋」2014/5/20付) 不祥事を起こす。幹部が並んで頭を下げ、謝罪し、組織の出直し・再生を誓う。おおかたの口をついて出るのは「一丸となって」である。ただし、常(じょう)套句(とうく)になればなるほど言葉の持つ重みはうせていく。おととい…
(日経「春秋」2014/5/19付) 「こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)は、週刊少年ジャンプの連載を一度も休むことなく38年続いている。単行本だけですでに189巻、累計1億4千万部の売れ行きだ。国民的漫画といっていい。ところが作品名にある「派出所」…
(日経「春秋」2014/5/18付) 子どもの頃「エイトマーン!」 劇画のヒーローではない、ABCと数えていって8番目がH。子どもなりの隠語でお互いをからかったのである。8やHが特別な意味を持つ国はそれで済まない。米国のP&G社がドイツで売り出した洗…
(日経「春秋」2014/5/17付) 町が突然、消滅した。一体、何が起きたのか。理由は分からない。爆音も振動もなく住民数万人が消えた。人がいた痕跡も残っていない。初めから町はなかった。政府は町の名を抹消し思い出に浸ることを禁じる。地図の空白は広がっ…
(日経「春秋」2014/5/16付) 明治のむかし、自由民権運動のころに各地で憲法草案づくりが盛んになった。その数60本余に及ぶという。なかでも異彩を放つのが、東京都あきる野市に原本が残る「五日市憲法」だ。この草案は、自由や人権を重んじるきわめて先進…
(日経「春秋」2014/5/15付) テレビアニメ「機動戦士ガンダム」が初めて放映されてから、35周年を迎えたという。いまやファンは世代をまたぎ、国境さえもまたいで広がる。一大市場を築きあげた観がある。優れたSFは時に、科学技術と人間の相克を鮮やかに…
(日経「春秋」2014/5/14付) タイのプミポン国王は地図好きで、国内のどこを視察するにも専用の地図をつくって持っていく。その国王も86歳、健康の不安が伝えられ、地方への旅行も差し控えているようだと。この国の民主主義が持つ「絶妙」とも評された国王…
(日経「春秋」2014/5/13付) たとえば交通事故で失った顔の骨をそっくりそのまま再現し、患部にぴたりとはめ込めば容貌は元通り――。3Dプリンターを使った医療革命のなかでも実用化目前の技術だ。かくなる福音をもたらす道具も、ひとたび悪用されたら……と…
(日経「春秋」2014/5/12付) 「レリゴー、レリゴー」。街や家で子供や女性たちが口ずさむ。「アナと雪の女王」の主人公の一人が自分らしく生きようと決め「Let it go」と歌い上げる。これでいいの、という意味合いの英語が耳にレリゴーと残るわけだ…
(日経「春秋」2014/5/11付) 職種は「現場総監督」です。原則1日24時間の勤務。年間365日、休暇はありません。食事をとる時間はありますが、他の同僚が食べ終わってからです。徹夜で働く場合もあります。サラリー? 無給です。世界で一番大事な仕事ですよ…
(日経「春秋」2014/5/10付) 渋沢栄一が先行き、心配でならなかったのが1890年開業の帝国ホテルだ。景気の波に翻弄され、業績は低調。そこで彼は開業後20年がたとうとしていたころ、巻き返しに動く。ひとつは有能な支配人のスカウトだった。後に経営を立て…
(日経「社説」2014/5/9付) これで調査を尽くしたと言えるのか。論文不正問題をめぐる理化学研究所の対応には、首をかしげざるを得ない。小保方晴子氏らが発表した「STAP細胞」論文には捏造(ねつぞう)や改ざんがあったと認定し、これに小保方氏側が不…
(日経「春秋」2014/5/8付) 安保反対デモで騒然となった1960年は、ポリオ大流行の年としても日本の戦後史に刻まれている。もっぱら小児マヒと呼ばれ、その年に5000人を超え、300人余が亡くなった。翌年も流行が続くなかで劇的な効果をもたらしたのが、ソ連…
(JN) 5月5日の早朝に関東は、2度揺れた。一度目は、5時2分ごろの茨城県南部を震源とするもので、我が東久留米の自宅では特に揺れを感じなかったというか、それでは目を覚ますことはなかった。そして、5時18分ごろの揺れで目を覚まさせられた。意識朦朧…
(日経「春秋」2014/5/6付) 「風の壁を抜けると急に、視界が広がる。小さな街並みや工場、光る川が目に飛び込んでくる。壮大な音楽に体をさらわれ、空を滑っていく」、ヘッセ「空の旅」。空中散歩がよほど気に入ったのか。1928年には、開設早々のルフトハン…
(日経「社説春秋」2014/5/5付) 「仕事と子育ての両立」が社会の大きなテーマになって久しい。両立支援のために、保育サービスを拡充することは大切だ。それと同時に、職場が変わっていくことも欠かせない。男女ともに働きながら子育てできるようにすること…
(日経「春秋」2014/5/4付) 「早く仕事をしなさい、この『人手不足』っ」。1970年代の刑事ドラマ「俺たちの勲章」、口は悪いがきっぷのいい女将と剽軽(ひょうきん)な店員の近しさを表現した。戦後復興から高度成長へと、長く人手不足が当たり前だった。映…
(日経「春秋」2014/5/3付) 「むきあって同じお茶すするポリと不良」。風天の号で俳句を詠んだ俳優の渥美清にこんな一句がある。そこにカメラやレコーダーがあると空気はどう変わるのか。警察や検察の取り調べを録音・録画すると、ひいては冤罪(えんざい)…
(日経「春秋」2014/5/2付) 居眠りする中年女、ぼんやり前を見つめるオヤジ、子をあやす母親、ひそひそ話のサラリーマン2人、いちゃつくアベック……。荒木経惟さんの「往生写集」、そこにあるのは1972年の、ふつうの日本人のたたずまいだ。これが、いまだっ…