「はやぶさ2」往復52億キロを飛行、6年後に地球に

(朝日「天声人語」2014年12月4日) ハヤブサの妙技は人々を魅了する。動きが素早く勇ましい様子を、この鳥に見立てることが多く、色々なものの名前にも使われる。東北新幹線の「はやぶさ」、かつて東京と鹿児島を結んだ寝台特急にも同じ名があった。さかのぼれば旧日本陸軍にも「隼(はやぶさ)」と呼ばれる戦闘機が存在した。名機とされた隼の設計を手がけたのは、故糸川英夫博士だ。戦後になって日本の宇宙開発をリードした。4年前、奇跡の帰還を果たした探査機「はやぶさ」が到達した小惑星は、この「ロケットの父」にちなみ「イトカワ」と名づけられている。探査機の命名にも博士の過去の業績との縁を感じるが、違うらしい。小惑星に着陸して素早く試料を採取し、1秒ほどで離陸する作業が、獲物を急襲するハヤブサを思わせたからという。後継機「はやぶさ2」が、きのう打ち上げられた。往復52億キロを飛行し、6年後に地球に戻る。本家ハヤブサも及ばないだろう宇宙での技に期待が高まる。
(JN) 「はやぶさ2」は、沢山の夢を乗せて、遥か宇宙へ。日本の宇宙開発は、子供心に米ソの有人ロケットの時代に、糸川先生のペンシルロケットであった日本が、ここまでになるとは、思いもよらなかった。その糸川先生は、あの名機「隼」の設計を手掛けていた。「隼」は、ゼロ戦より、身軽で素早い動きであったと聞いているが、子ども時代に作ったプラモデル、ゼロ戦とは違うその美しさに心を引かれた。現在の「はやぶさ」は、新たな目的地にどんな姿で舞い降り、獲物を捕らえて巣に帰って来るのか、6年後が楽しみである。その6年後は、日本はどうなっているのか、オリンピックで景気が良くなっているのか、原発はどうなっているのか、「はやぶさ2」がこれから迎える困難とともに、私たちも大変だ。お互いに良い姿で再開したい。
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