2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

社会から欠けたものに若者は敏感だ

(日経「春秋」2013/6/30付) 大人を待たせて子供たちが買い物に熱中する。そんな光景に、哲学者の鷲田清一さんが疑問を投げかけていた。場所は京都。子供らは修学旅行生。大人とはタクシー運転手のことだ。寺巡りは短く済ませ、繁華街に急ぐ生徒も。運転手…

穿山甲の受難

(日経「春秋」2013/6/29付) 「歩く松ぼっくり」。センザンコウという動物は英語でこう例えられる。主に東南アジアとアフリカに生息している。漢字では穿山甲。中国語でもこう書く。ただ、かつてはさかなへんの漢字を組み合わせて表したことがあったらしい…

同性婚を認めた国々でも対立は深く、社会を二分している

(日経「春秋」2013/6/28付) 公立学校での人種差別禁止を言い渡したのは1954年。女性の妊娠中絶の権利承認は73年だった。新たな歴史が加えられたのは、同性婚禁止を違憲とした26日の判決である。同性のカップルを異性の結婚と同じように法的に位置づけ、税…

安心で高品質な農産物に需要があるのは間違いない

(日経「春秋」2013/6/27付) 好きな食べ物は何? 都会の子供たちにそう聞くと、ハンバーグやカレーライスなど料理の名前が返ってくる。ところが身近に生鮮品が採れる地方は違う。トウモロコシ、ジャガイモ、アスパラガスと、料理ではなく野菜の名が次々とあ…

スノーデン元職員の心の奥底もみえてはいない

(日経「春秋」2013/6/26付) 安全な町、あるいは国、危ないからと締め出しを図り、さらには危なそうだからというだけでダメを出す。そこに首をもたげているのは、自らと違ったものを拒む排除の思想である。ある小都市を訪ねたときには、安全の標語の裏に移…

桃といえば夏から秋。なのに新学期?

(日経「春秋」2013/6/25付) 「三四郎」は、大学に入るために主人公が九州から上京してくる場面で始まる。その長い汽車旅の中で、三四郎が乗り合わせた広田先生から水蜜桃を分けてもらい、かぶりつく。桃といえば夏から秋。なのに新学期?。読み進めば「学…

「友達」や「フォロワー」の数だけを追う候補者が現れないか

(日経「春秋」2013/6/24付) 古い友人を持つ意義について、評論家の粕谷一希さんは、「どのような栄耀(えいよう)栄華を得ようが、若き日の旧友の眼に耐えられない人生は空(むな)しい。どのように蹉跌(さてつ)の人生であろうと、語りうるひとりの旧友…

ニッポンの日常食にしびれる、「英国一家、日本を食べる」

(日経「春秋」2013/6/23付) ソース焼きそば、鉄板で盛大に炒めて青のりと紅ショウガたっぷりの、あれが、ある英国人の家族は東京・新宿のガード下でその一皿に出合い、ニッポンの日常食にしびれる。列島を北へ南へ、A級B級なんにでも挑みつづけた親子4…

資金を集め、社会に環流して国を富ませる

(日経「春秋」2013/6/22付) 日本で最初の銀行はみずほフィナンシャルグループの源流のひとつ第一国立銀行の株主総会史料によると、「国益に資することなら、貸し付けの利息が減ってもこれに助成すべきである。銀行の利益だけを追うのでなく、金融で広く事…

消費者が忘れ去った「定価」が復活?

(日経「春秋」2013/6/21付) 物の値段には名前がある。「特価」、「大特価」、「超特価」、さらに「出血価格」、「限界価格」と。「定価」という呼び方は、すっかり姿を消した。メーカーが小売価格まで「定める」のはおかしいと、政府が名前のつけ方に指針…

高市は、現在も「3.11」前の世界に生きているのだろうか

(日経「春秋」2013/6/20付) 事件事故や災害が起きたとき、メディアは、そして世の中も、まっさきに死者の数を意識する。×人死亡か、と第一報。一転全員無事とわかれば胸をなで下ろしつつ、関心はよそへと向かうのだ。自民党の高市早苗政調会長は、現在も「…

無粋の押しつけ、といいたくなる趣旨だ

(日経「春秋」2013/6/19付) 1984年に公開された米国の映画「フットルース」。保守的な大人が多くダンスが禁じられている田舎街に引っ越してきた少年が、踊りの素晴らしさを訴え因習を打ち破る。そんな物語だ。ダンスを禁止するなんて映画の中だけのことと…

「禁止することを禁止する」

(日経「春秋」2013/6/18付) 「禁止することを禁止する」。5月革命とも呼ばれた1968年のパリの学生運動で有名になったスローガンである。機知に富み、語呂がよく、なにより権威へのNONを端的に表している。トルコ各地でエルドアン首相への反発が収まら…

母親型のリーダーが、時には新風を吹き込む

(日経「春秋」2013/6/17付) 売り上げの振るわない店の業績を、どう改善するか。ある和菓子チェーンの会社はビデオを使ってみた。成績不振の店で接客時の動きなどを記録し、直すべきところを指摘していったという。結果は、ムードが悪くなり、ますます売り…

「怪童」、がむしゃら、野性といった形容が似合う名選手の記憶

(日経「春秋」2013/6/16付) 13日に68歳で死去したプロ野球の元投手、尾崎行雄さん、1961年、高2の夏に甲子園で優勝すると学校を中退、17歳で東映(現日本ハム)に入団した。とにかく球が速い。1995年にはベテラン審判へのアンケートで「戦後最も速い球を…

見せたかったのはチームの力

(日経「春秋」2013/6/15付) 今はJFEスチール、川崎製鉄の千葉製鉄所といえば、高度成長への道を開いたところだ。「業界秩序を乱す」との批判にひるまず建設したこの最新鋭工場の成功で鉄鋼業界は投資競争に入る。川鉄の初代社長、西山弥太郎氏の決断の…

つまりは国の経済をどう鍛えていくか、厳しいトレーニングの献立表だ

(日経「春秋」2013/6/14付) 久々にカルシウムたっぷりのサプリメントを並べられた気がする。国の経済財政政策の基本だという「骨太の方針」がまとまり、きょう閣議決定される。「骨太第1弾」をつくったのは小泉純一郎氏首相人気も相まって、その年の流行…

NPB、昨今はひそかに猛打の増産も企てるらしい

(日経「春秋」2013/6/13付) 7年前に亡くなった清岡卓行さんは戦後の一時期、日本野球連盟に勤めていた。日本野球機構(NPB)の前身である。「アカシヤの大連」の芥川賞作家らしからぬ経歴だ。清岡さんの仕事でいまも受け継がれているのが、1試合に3…

8月から運用を始める「特別警報」

(日経「春秋」2013/6/12付) 「特別」なる言葉には力がある。特別捜査部や特別会計、特別委員会、特別急行……。この2文字が付けば一般とは違うはずだと存在感が強まり、オーラを放つことだってある。近ごろ気になる特別は気象庁が8月から運用を始める「特…

こころをば、なににたとへん。こころはあぢさゐの花。

(日経「春秋」2013/6/11付) ミュージカル、万華鏡、ピーターパン、剣の舞、花吹雪、隅田の花火……。アジサイは、品種改良のたびに新しい名前がつく。クルクル回ったり、四方八方に飛び散ったり。この花の名所が多い鎌倉では「国際アジサイ会議」が開かれ、…

入念な制度設計で「到達度テスト」に道開け

(日経「社説」2013/6/9付) 大学入試の改革は教育改革の本丸である。日経は、1979年の共通1次試験導入以降続く「一発勝負型」入試体制を改めるべきだと主張してきた。受験生が複数回挑戦できるテストを新たに設け、そのうえで各大学が工夫を凝らした選抜を…

「9秒クラブ」に日本の若者2人が名を連ねようか

(日経「春秋」2013/6/9付)この国の一番は長く世界の一番と同じ舞台には立てていない。男子100メートルでオリンピックの決勝を走ったのは、後にも先にも1932年のロサンゼルス大会6位の吉岡隆徳しかいない。これまで10秒を切った84人のうち82人がアフリカ系…

アベック、カップル、デート、ルージュ・・・・・

(日経「春秋」2013/6/8付) フランス語に由来する言葉にも肩身が狭くなったものが幾つもある。たとえばアベック。いまだに平気で使うのはまず中高年で、大多数はカップルという。その中高年もランデブーはさすがに口にしづらい。デートがまあ普通だろう。そ…

政府は一般用医薬品のネット販売解禁を決めた

(日経「春秋」2013/6/7付) 目の錯覚や思い込みを利用した、だまし絵と呼ばれる絵画をご存じの人は多いだろう。もしかして、これもそのたぐいでは……。薬のインターネット販売のことである。政府は一般用医薬品のネット販売解禁を決めた。市販薬のうち、じつ…

少女たちに悩めるニッポンの男たちが夢を託している

(日経「春秋」2013/6/6付) 上場企業の課長さんたちが、いま悩んでいることは何だろう。産業能率大学の調査結果が今月まとまった。3位は「上司と考えや意見が合わない」。2位は「業務が多すぎ余裕がない」。中間管理職ならではの苦労だ。1位は「部下がな…

かくもネズミ捕りが嫌われるのは

(日経「春秋」2013/6/5付) 「ネズミ捕り」という俗語はいつごろから世に広まったのだろう。たしかに違反は違反だが、なにもあんなところで……。タクシー無線が「○○付近、ただいま工事中」と連呼していたら、たぶんネズミ捕りのお知らせである。かくもネズミ…

24年前のきょう未明、共産党政権は民主化運動を武力で粉砕した

(日経「春秋」2013/6/4付) 趙紫陽・元中国共産党総書記が亡くなったのは、8年あまり前。大学生にインタビューしたところ「誰?」。趙氏が失脚したのは、1989年、天安門広場で盛り上がっていた民主化運動への対応が、生ぬるい。そんな批判を、保守的な幹部…

そもそも自分を伝える熱意がないからなのか

(日経「春秋」2013/6/3付) 「東京2020はダイナミックなイノベーションとグローバルなインスピレーションを共にもたらします。日本人のユニークな価値観とグローバルなトレンドを発する都市の興奮を、試合のパワーと一体化します」――(東京五輪の招致委員会…

夫婦の同姓・別姓ももう少し柔軟に考えてはどうだろう

(日経「春秋」2013/6/2付) 外からかかってきた電話を新入社員が受けたが、先方が口にするAという名に覚えがない。困って全員に呼びかけた。「Aさんという方、居ますか」。女性社員のBさんがすかさず答えた。「それ、私の昔のダンナの名字だから。覚えと…

中身が盛りだくさんになり姿勢がかすんでしまっては

(日経「春秋」2013/6/1付) 「方針」という言葉をいくつかの国語辞典で引いてみたら、「およその方向」としている例があった。「針」のイメージをもっと出したらどうだろうか。1980年代に提携先の横河電機との交流を通じて、この日本語を社内に取り入れたの…