2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「生産年齢」を64歳までに限ることはない?

(日経「春秋」2013/8/31付) 「初老」という言葉は最近あまり使われないが、辞書を引くと、もともとは40歳の異称なのだそうだ。現在だと何歳くらいなら初老と呼べるか? NHK放送文化研究所の調査によれば男性55.5歳、女性58.4歳だと。先日の総務省の発表…

内戦を一刻も早く終わらせるという正義

(日経「春秋」2013/8/30付) 54、55……。おでこやおなかに無造作に貼られたガムテープに数字、10歳にもならないだろう子どもの死体、それが何十も丸太ん棒のように並んでいる。21日にシリアで使われたという化学兵器(神経ガス)の犠牲者の映像がある。子ど…

短慮が、かえって「ゲン」をいよいよ有名にした

(日経「春秋」2013/8/29付) 松江市教育委員会による閲覧制限が問題になった漫画「はだしのゲン」。騒動をきっかけに読者が殺到し、いま書店では品切れが続出、図書館でもほとんど貸し出し中とあってめったに手にできない。版元は増刷を急ぐそうだ。こんな…

私には夢がある。

(日経「春秋」2013/8/28付) 50年前のきょう、マーティン・ルーサー・キング牧師がワシントンで人種差別の撤廃を訴えた演説は有名だ。「私には夢がある。私の4人の小さな子どもたちが、いつの日か、肌の色でなく人格の中身によって判断される国に住むこと…

地名とは「日本人が大地につけてきた足跡である」

(日経「春秋」2013/8/27付) 文芸評論家、山本健吉が戦後日本の三大愚行を挙げた。(1)旧仮名を新仮名にしたこと。(2)尺貫法をメートル法に変えたこと。そして(3)住居表示法施行による地名の改悪。前ふたつは愚行と決めつけがたいが、地名改悪だけ…

マイナスは隠し、能書きは多くという従来の商売とは逆

(日経「春秋」2013/8/26付) 「ようこそ日本一あついまちへ」。高知県四万十市は、お盆の時期、観測地点に近い地元産品の直売所を訪れた客は、平年の6倍に達したという。急きょ開いた、激辛うどんを皆で食べる催しも盛況だったと。緑に囲まれ清流が流れる…

暑くてもなんでも、雲はもう秋の顔である

(日経「春秋」2013/8/25付) 「人まじわりすると血がにじみますから、未明の水を眺めてしばらくすごしたいと思っています」。釣り好きの先輩作家、井伏鱒二にあてた開高健の手紙。たとえ血がにじむほどの傷を負っていなくても、とかくに人の世は住みにくい…

職場や教室に、尊敬し合う同志は何人いるだろう。

(日経「春秋」2013/8/24付) 修行僧の顔から、ふと子供の笑みがこぼれた。4千本安打を達成、仲間が祝福に集まってきた。「記録が特別な瞬間をつくるのではなく、僕以外の誰かがつくってくれる」。イチロー選手はそう語った。初めに驚いた表情を見せたのは…

自主運営型の工作部屋「ファブラボ」

(日経「春秋」2013/8/23付) 「欲しいけどどこにも売っていないものを、自分の手でつくりたい」。米マサチューセッツ工科大学(MIT)で15年前、講座名は「(ほぼ)なんでもつくる方法」。10人の募集枠に100人が応募した。工学科に交じり、芸術科などの学…

勇気とか覚悟といった言葉が浮かんでくる。改めて感じる8月

(日経「春秋」2013/8/22付) 「乗船していたら、間違いなく海の藻くずになっていた」。大鵬は「私の履歴書」でこう書いた。68年前のきょう、樺太からの引き揚げ者を乗せた小笠原丸が「国籍不明の魚雷」の攻撃を受け北海道沖で沈んだ事件のことだ。同じ日、…

結婚と離婚を繰り返して法的な親の時間を分かち合っている

(日経「春秋」2013/8/21付) 一か月ほど前の英国では、「It’s a boy!」であった。子どもを持った夫婦がまず受ける質問だろう。ところが、先日、生後9カ月の子がいるスウェーデン人と話す機会があった。「で、どっち?」に答えは「まだ赤ちゃんです…

時間を自己管理できなければダメだ

(日経「春秋」2013/8/20付) 1959年ごろにキヤノンが「ゴー・ホーム・クイックリー」、つまりできるだけ早く仕事を終えて家に帰ろうという社内運動を始めた。ただ当時の社長で発案者だった御手洗毅氏は、世間の反応が不満だった。マイホーム主義と混同され…

広島と長崎で都市が丸ごと消えた。東京は焦土となった

(日経「春秋」2013/8/19付) 身近な人が亡くなると、まわりの空気の色がひとり分だけ変わる。別れの寂しさはやがて時が埋め、人の死を越えて残った者の関係が新しい均衡点に移っていく。時は移ろい、人は成長する。週が明けて8月も終盤に入った。帰省先や…

戦った相手は「韓国」、終戦の年は1038年

(日経「春秋」2013/8/18付) 「ももいろクローバーZ」の5人のメンバーは今の日本を生きる17歳から20歳の少女でもある。現役高校生を含む彼女らは、先の戦争をどう理解しているか。若手社会学者が試験をした。戦った相手は「韓国」、終戦の年は1038年と珍…

彼らは多感な年ごろで敗戦を迎えた世代でもあった

(日経「春秋」2013/8/17付) 半世紀前、東京・西新宿の台湾料理店で日本SF作家クラブの設立発起人会が開かれた。当時は、SFに対する無理解や偏見は随分強かったらしい。そんな逆風に立ち向かい、いわば未踏の地を切り開いたパイオニアたちだった。彼ら…

A級戦犯が墨でしたためた寄せ書きがアメリカでみつかった

(日経「春秋」2013/8/16付) 「世界中の人間はみんな同じ性質で結ばれているんですな」。東京裁判の最中、1946年秋にA級戦犯が墨でしたためた寄せ書きがアメリカでみつかった。日系の米兵看守に贈られたものだという。写真に見えるかぎり、署名の前に中国…

死を日常の風景とまでした昭和の戦争の過ちを忘れない

(日経「春秋」2013/8/15付) 昭和20年8月15日、「どう云う涙かと云う事を自分で考えることが出来ない」と百間はしたためている。人々はただ、泣いた。それは無念の涙だった。悔恨の、憤怒の涙だった。幻滅の、虚脱の涙だった。「父母(ちちはは)の泣けば…

「本モノ」の空襲の前に、なぜ戦争をやめられなかったか

(日経「春秋」2013/8/14付) 「本モノノ空襲警報ガ初メテ鳴ッタノハ昭和十九年十一月一日デアル」(内田百間の戦時日記「東京焼盡(しょうじん)」)。大戦の空襲というと、何年間も続いていたイメージがある。しかし敗戦前年の秋までは案外ノンビリ構えて…

若い世代の結びつきが細っている

(日経「春秋」2013/8/13付) 「長期的にみた日米間の最大のリスクは安全保障でも経済でもなく、若い世代の結びつきが細っていることにある」。アメリカのルース駐日大使が先週、離任を前にそう語ったそうだ。慧眼(けいがん)と強い危機感とを感じる。大使…

世界に羽ばたくブランドを増やそう

(日経「社説」2013/8/11付) 日本企業はアジア企業には激しく追い上げられ、収益力では米欧勢に見劣りする。もう一度世界で輝くために何をすべきか。ブランド力の向上こそ、大きなカギである。日本企業はよく「技術で勝って事業で負ける」といわれるが、そ…

「大阪に住みつき男日傘かな」

(日経「春秋」2013/8/11付) むかし上方では、男の日傘がはやったという。講談社版「日本大歳時記」の夏の部に「江戸後期には京阪地方で男の日傘が流行したことがあったが、後に禁制になった」などとある。「大阪に住みつき男日傘かな」小原野花。関西には…

「私たちだって鋳型に入ってはござんせぬ」

(日経「春秋」2013/8/10付) 「菊の井のお力(りき)は鋳型に入った女でござんせぬ」。樋口一葉の「にごりえ」を引くまでもなく、「鋳型」には画一だの平凡だのといったイメージがつきまとう。ところが琵琶湖の西、滋賀県高島市で出土した銅剣の鋳型はこれ…

「バルス」とは?

(日経「春秋」2013/8/9付) 先週金曜日、午後11時21分50秒。日本全国から少なくとも、のべ14万人が参加しバルス祭りがピークを迎えた。この時間、あるテレビ局が映画「天空の城ラピュタ」を放映した。終幕で主人公たちが唱える滅びの呪文(じゅもん)「バル…

「手口に学べ」

(日経「春秋」2013/8/8付) 何を言いたかったのか、いまでもやっぱりわからない。麻生太郎副総理兼財務相が先月末に講演で口にして騒ぎになった「ナチス」うんぬんである。海外でも批判が高まるやご本人はあわてて釈明して発言を撤回し、まわりも幕引きを急…

ヴェルディ、ドラッカーに続きたい

(日経「春秋」2013/8/7付) ヴェルディの作品中でも指揮者や歌手が入念に準備する名作が「ファルスタッフ」だ。この喜劇は、音楽と台本が見事に調和した円熟の作品といわれる。完成は1893年。ヴェルディ80歳の頃だ。「いつも失敗してきた。だから、もう一度…

甘利明さんが「同じ釜の飯を食って団結しよう」と

(日経「春秋」2013/8/6付) 夏は合宿の季節である。合宿といえば緊張もするし、ワクワクもする。青春の合宿の記憶は汗と涙の味がする。TPP交渉の作戦を練るため、約100人の官僚たちが研修所で合宿をした。担当大臣の甘利明さんが「同じ釜の飯を食って団…

働き方を朝型に、夜8時以降の勤務は原則禁止し10時に完全消灯。

(日経「春秋」2013/8/5付) 「朝活」という言葉が広がったのは2009年ごろ。東京駅前で開く「丸の内朝大学」で各種講座に通った人は、4年間でのべ1万人に達したとのこと。朝型人間の増加もヒントになったかどうか。伊藤忠商事が社員の働き方を朝型に変えて…

織田作之助が、ちょっとしたブームらしい

(日経「春秋」2013/8/4付) うなぎの「まむし」、かやくご飯に粕汁(かすじる)、関東煮(かんとだき)、あらかじめ混ぜてあるライスカレー……、織田作之助の「夫婦善哉」。オダサクが今年が生誕100年。NHKがこの代表作をドラマ化するなど、ちょっとした…

ルース大使のよく練れた「外交辞令」

(日経「春秋」2013/8/3付) 「私は5人の首相とつきあった」とジョン・ルース駐日米大使は安倍晋三首相に。またキャロライン・ケネディ次期大使は1人の首相とつきあうだけでいいだろうから「うらやましい」とも。なかなかよく練れた「外交辞令」を繰り出し…

韓国にはまだまだ「発見」がある

(日経「春秋」2013/8/2付) 韓流ブームのきっかけになった「冬のソナタ」に、いい場面がある。工事現場の男たちとの飲み会で、チェ・ジウさん演じるヒロインが一曲披露するのだ。雨降る湖南線 南行列車、これが、日本人の琴線にも触れる。韓国文化をめぐる…