何げない言葉に呪いがあると『明窓(231127山陰中央新報)』。『天空の城ラピュタ』、主人公たちが唱えると城が崩壊する呪文。言葉の力のすごみ、現実にも恐ろしい言葉は転がっている▼「(残業が)嫌ならやめれば」「(低賃金は)仕方がない。みんな我慢している」。「お母さんなんだからしっかり」。法政大の上西充子教授によると、これらは思考の枠組みを縛る「呪いの言葉」▼一見まともだが、都合良く黙らせる支配構造が潜在▼上西さんの講演を聴き自問自答。呪いの言葉をかけていたかも。いやかけられたこともあるか…。思い出せないことが呪縛の中にいた証拠。対極にあるのが相手の力を引き出す「灯火の言葉」。自然と口にするにはまず自分にかかっている呪いに気付かなければ。
(私たちは)知らずと呪文を唱えているのか。他人を苦しめ、自分を縛っているのか。言葉は呪文か。言葉が人や社会を発展させ、また破壊するのか▼エロイムエッサイム。言葉は、私たち自分の中の悪魔を呼び出すのか。そんなことを思うと、語れなくなってしまう。呪いに恐れず、語るにはどうすればよいのか。
「医師の役割」「生命の尊厳」は重い 231127
誕生50年のブラック・ジャックに『有明抄(231126佐賀新聞)』は思う◆73年11月に週刊「チャンピオン」で連載が始まった。当時、手塚さんは作品のマンネリ化を指摘される逆境の中、その作品が大ヒットした。延命措置や安楽死など手塚さんが信条とした「生命の尊厳」が存分に描かれたからだろう。命とは? 医師とは? 医師を志す人にも影響を与えた◆この誕生50年企画として生成AIを使った新作がチャンピオンに掲載された。人工心臓で生きながらえる少女がテーマ◆「医者は人を治すのではなく、人を治す手伝いをするだけ」。50年を経ても手塚さんが問いかける「医師の役割」「生命の尊厳」は重い。
(私の)50年前、若く元気であったころゆえ医師は身近ではなかったが、いまでは保険証を使う機会が多い。内科、外科及び耳鼻咽喉科等を中心に、世話になっている◆患者はたった数分だが、医師は1日に何人相手をするのか。医師の役割は患者個々によって違ってくるだろう。誠に大変だ。心身を大事にしていただきたい◆ところで、我が街のブラックジャックは何を見つめ考えているのか。
漬かる時間は10分以内が目安 231126
11月26日、「いい風呂の日」に『滴一滴(231126山陽新聞)』は入浴を思う▼この時季に気を付けたいのがヒートショックである▼消費者庁によると、2021年に浴槽で意識を失い死亡した人は全国で約5100人。交通事故の犠牲者2150人の2倍を超える。その9割は65歳以上の高齢者▼そうならないために、湯の温度は41度以下で、漬かる時間は10分以内が目安。自宅なら入浴前に脱衣所や浴室を温めて寒暖差をなくしておくのが望ましい▼日本気象協会は地域ごとのヒートショック予報をホームページで毎日公開。5段階に分けた危険度は自己防衛の参考になるだろう▼左党にとって、飲酒直後の入浴はリスクを高めるとされている。日頃から対策を習慣として身に付けておきたい。
(私は)自宅の風呂に入りながら思う。雪の露天風呂で酒をいただく。幾らでも、お湯と酒に漬かっていたい▼それは、身体によくないようだ。夏はサッサと出てしまうが、冬はボーっと知らぬ間に長湯になっている▼「遠い世界に旅に出ようか」などと歌わずに、気をつけないと遠い世界に逝ってしまう。残念だが、いい風呂はサッサ出ねばならない。
国会がザルの穴を埋める時 231125
抜け穴だらけの「ザル法」とやゆされることが多いのが、政治とカネの規制と透明化を担う政治資金規正法に『余録(231125)』は思う▲政治資金パーティーによる収入などの、収支報告書への不記載問題だ。多額の記載漏れを指摘する告発があり、東京地検特捜部は派閥の担当者に任意で事情を聴いた▲本来禁じられているはずの政治家個人への企業・団体献金には、政党や支部への献金という抜け穴がある▲消費税課税の把握に向けインボイス制度が導入され、多くの人が苦労して対応している。その一方で、政党や政治家の財布が不透明な身勝手さに怒りの声が出ているのもうなずける。今度こそ、国会がザルの穴を埋める時だ。
(私たちは)カネの奴隷なのか。政治にカネが必要なのか。カネがある方が人を動かしやすい。人々はカネに心を奪われ、カネのために動くようになっているのか▲政治は何のためにあるのか。カネの力でしか政治ができないのか。政治家の能力は何なのか。ザル法によりカネの流れ、止まれとなるか。
臭い物にふた 231124
ホウレンソウがおいしい季節に、『小社会(231124高知新聞)』は「報連相」を思う。「報告・連絡・相談」、1982年、山種証券の社長だった山崎富治さんが社員に提唱したのが始まり。これが瞬く間に世間に広がる。それから40年余り、いまや報連相はどの組織でも常識である。ただ、ややもすれば部下にのみ課される心得になっていないだろうか。山崎さんが説いたのは「上下の報告」「左右の連絡」「上下、左右にこだわらない腹を割った相談」だった。つまり組織全体の風通し。報連相にはそれを上司やトップが生かす姿勢が欠かせず、「臭い物にふた」は「大敵」とした。旧ジャニーズ事務所や宝塚歌劇団、日本大学の問題、いまの政権…。どれもゆがんだ報連相が見えてくる。
(私は)思う。報連相はなかなか難しい。言ってはならぬことを広げて、伝達しなければならぬことを隠してしまう。組織は上下左右の関係で考えが異なる。その中で、危険物が隠され、秘かに一部で報連相。それはゆがんだ報連相の一種か。二種か、多種多彩であり、危険物を隠していると、その内ふたが閉まらず飛び出してしまい、大騒ぎである。
サケの未来はどうなるか 231123
今年の秋サケの全国的に不漁に『筆洗(23年1120)』は思う▼太宰治は魚のサケが好物だった▼友人がサケを土産に持ってきた。「太宰は(略)身を一ひらずつはがしては口に入れ、一口ごとに酒を飲み、間断なくしゃべり、合間に煙草をのみ、実に忙しい」▼その顔が曇る話だろう▼北海道の漁獲高は前年比で、36%減(9月末現在)。特産地、村上市のサケの博物館では三面川を遡上するサケが極端に減り、一時は展示さえできなくなった▼近年の海水温の上昇がサケの里帰りを妨げているそうだ。サケの未来はどうなるか。<サケサケナサケ>。村上市で以前見かけたキャッチフレーズ。漢字で書けば<鮭、酒、人情>。特産品はひとつも失いたくないのだが。
(私の)想い出では、その昔は年末に新巻鮭をいただくことが多かった。あれは塩っぱかった。子供のころサケとは塩っぱいものだと思ったいた▼大事な保存食、昔は母なる川へ大量にサケが上ってきたのだろう。クマも大事なタンパク源、美味しくいただいていただろうが、いまは
木の実もサケも取れず困っているだろう▼この気象現象はまだ続くのであろうか。
テレビの放送開始70年 231122
本日のケネディ大統領の没後60年に『有明抄(231122佐賀新聞)』はテレビ放送を思う◆日本でテレビ放送が始まったのは1953年。技術の発展は目覚ましく、10年後の63年、初の海外中継が行われた。1回目は午前5時半、2回目はその3時間後、ケネディ大統領による日本向けのスピーチを予定していたが、「悲報」に変わった◆ケネディ大統領が凶弾に倒れた。衛星放送の成功で、64年の東京五輪も世界に中継された◆プロ野球中継も開始70年◆戦後の日本を映してきたテレビも娯楽の多様化とインターネットの発展に伴い、苦戦を強いられている◆ケネディ大統領の残した言葉の一つ、「大きな失敗を恐れない者だけが、偉大なことを成し遂げる」。メディアをはじめ岐路に立つ人たちへの激励に思える。
(私は)テレビっ子。しかし、テレビを見なくなった。ニュース以外は何を見ているだろうか。「ブギウギ」「ブラタモリ」「どうする家康」。NHKの回し者か◆すっかり、映画やスポーツを見なくなった。家族で見ることがなくなり、個々に楽しむものになっている。あのテレビ画面は、今後、どのような情報が映し出されるようになって行くのか。