アベノミクスは道半ばで、足踏みしている

(日経「春秋」2014/12/25付) 作家中島敦は、開戦1年後の昭和17年12月に33歳で没した。生前、発表した最後の作「名人伝」の主人公は天下一の弓の達人になろうと志す。並びない名手に弟子入りして、苦しい修行に打ち込むこと5年。ついには、連射しても、百発百中。第3次安倍内閣が発足し、3本の矢でデフレ脱却をめざすという。経済は膠着が続く。円安が進んだことへの不満も広がった。財政出動、大胆な金融緩和という2本の矢は的に刺さったようだが、3本目の成長戦略は届かない。徒然草にこんな話がある。矢を2本持って的に向かう弟子を師匠が戒める。後の矢をあてにすると、始めの矢がおろそかになる。ただ、この一矢で決すると思えと。的確な経済運営は、名人でも難しい。まして、アベノミクスは道半ばで、足踏みしている。頼みの矢ばかりが増えても肝心の的に当たらなければ意味がない。
(JN) 少々的外れかもしれないが、1本の矢は簡単に折れるが、3本重ねると折れにくい、この力強い3本の矢の政策で日本は、再生されるのであろう。しかし、この3本の矢は、3本にまとまらず1本1本になっているようで、折れてしまうのではないか。毛利家は、関が原でどうであったか。しかし、その3本の精神が引き継がれたから、明治まで生き延びることができたのであろうか。素晴らしい君主でない限り、良い矢を3本選ぶことも難しい。従って、愚衆の民主主義では、いっぱい打つこととなり、これがまた財政悪化を招く。話しはどんどん的外れになって行く。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO81290310V21C14A2MM8000/