2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

仮想通貨の取引拠点がアキバと並ぶ日本のポップ文化の名所シブヤ

(日経「春秋」2014/2/28付) 戦争や政変があれば、紙幣は紙くずになるかもしれない。銀行に預けても、銀行そのものが消えるかもしれない。国家と中央銀行より金銀や宝石の信用が勝る途上国、新興国は少なくない。金の腕輪も仮想通貨のビットコインも、法的…

「瑞穂の国の資本主義」がふさわしい

(日経「春秋」2014/2/27付) 「瑞穂の国」というのは安倍首相がよく使う言葉のひとつだ。日本人は古来、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣(ほうじょう)を祈ってきたと。日本には、米国流の「強欲」ではない「瑞穂の国の資本主義」がふ…

彼女とその文章は類いまれな生命力を得た

(日経「春秋」2014/2/26付) 「あなたになら、これまでだれにも打ち明けられなかったことを、なにもかもお話しできそうです」。東京や横浜の図書館で「アンネの日記」や関連の書籍が破られた事件が気味悪いのは、人の記憶を切り裂くような仕業だからである…

「女性が輝く国」戦略は実を結ぶかどうか

(日経「春秋」2014/2/25付) 林芙美子の絶筆、未完の「めし」。舞台は新聞に連載していた昭和26年当時のサラリーマン家庭だ。サラリーマンの妻、28歳の三千代は、「私ね。こんな、女中のような生活、たまンないンですッ」と怒りをぶつける。高度成長期に入…

東京オリンピックでは何を売ろうか

(日経「春秋」2014/2/24付) 「小さいおうち」は、戦前の中流家庭を描く。作中で玩具会社に勤める男性が、ベルリンで開催中の五輪の報道に興奮しながら、こう語る場面が登場する。「これが、東京であってみたまえ、どれだけ玩具が売れることか!」 昭和11年…

「いつになったら人は学ぶのか」

(日経「春秋」2014/2/23付) 娘が花を摘んで若者にささげる。若者は兵士になり、やがて墓に帰ってくる。墓にはまた花が咲き、花を娘が摘む……。フォークソング「花はどこへ行った」、この曲をつくった米国のピート・シーガーが1月末、94歳で死んだ。彼は、…

可能性に挑む勇気の大切さを教えてくれた

(日経「春秋」2014/2/22付) 森喜朗元首相が、「真央ちゃん、見事にひっくり返りました。あの子、大事なときにはかならず転ぶんですね」と。残念無念の思いで口にしたに違いない。この人は2020年東京五輪組織委員会の会長である。いまに始まった話ではない…

「放した馬は捕まえられるが、放した言葉は捕まらない」

(日経「春秋」2014/2/21付) 引っ越しで家具を動かすと、乱雑な過去と遭遇する。今年もまた異動や転勤の季節がやってきた。モンゴルの遊牧民は、引っ越しに特別の感情を抱かないそうだ。年に4回も移動するのだから当然だろう。日本人ひとり当たりの所有物…

「2013年は低価格スマホ元年だった」

(日経「春秋」2014/2/20付) 「靴メーカーでも明日からスマホを作ることができる」。中国の電機業界ではこう語られているそうだ。異業種からの参入が相次いでいる。一昨年に政府が確認したメーカーは377社あったという。1台につき1万円以下で売られている…

限られた情報で判断するよりこの目でかの国を見るのも手だ

(日経「春秋」2014/2/19付) 「日本海を韓国式に東海と呼ぶ法案を米国の州議会が可決」「米国には従軍慰安婦の碑を建立した町も」「伊藤博文を暗殺した安重根の記念館が中国に開館」――。たしかに愉快な話ではない。しかし限られた情報で判断するより、一度…

政治をめぐる議論の声音は一段と高くなっているだろう

(日経「春秋」2014/2/18付) 「北からおりてくる列車は花の匂いがするが、北へのぼっていく列車は汗の匂いがする」と開高健(「夏の闇」)。欧州連合(EU)が抱えてきた南北問題まで垣間見る気がする。北の代表がドイツなら南の大国はイタリアだろう。メ…

思い出しておきたい。自分が一人の力で生きているわけではない

(日経「春秋」2014/2/17付) 首都圏はたった一日の吹雪で大混乱になる。悪いニュースばかり目立つが、都会の大雪には良い点が一つある。困っているはずなのに街で会う人々が明るく生き生きとした顔になる。歩行者が滑らないよう店先で雪かきに精を出す店員…

「勝利を気高く祝い、敗北を気高く受け入れる」

(日経「春秋」2014/2/16付) 「世界一」や「勝利」の価値とは何か。森博嗣氏は、敗者から何かを奪い、彼らの不幸を見るのが楽しいのか。それでは精神が貧しい。自分をコントロールし、努力と鍛錬を続けられたことに楽しさや喜びを感じるのだろうと記す。選…

テンプルちゃん、享年85歳。20世紀がまた少し遠ざかる

(日経「春秋」2014/2/15付) テンプル人形が七五三には彼女にあやかった髪形が大流行、晴れ着までテンプル風が登場するほどのフィーバーぶりだった(秋山正美著「少女たちの昭和史」)。名子役、日本での人気は特にすさまじく、昭和10年代前半にその名を知…

人と人が顔突きあわせる大切さにあらためて思い至る

(日経「春秋」2014/2/14付) 電車の中、「私は役者のタマゴです。朗読するので聴いてください」、顔を真っ赤にして戯曲や詩の一節を読み続ける青年がいた。60年近く前の仲代達矢さんの姿である。引っ込み思案だった仲代さんは、こうして俳優としての自意識…

遠いソチの空に、大人たちの心も吸われていく

(日経「春秋」2014/2/13付) 「不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて/空に吸はれし/十五の心」(石川啄木)まだまだ子どもに見られるけれど少し大人の感情も宿り、そのアンバランスに自分でも戸惑う――。15歳といえばそういう時期だ。だからこそ怖い…

国としての独自性を追い求める思い

(日経「春秋」2014/2/12付) カザフスタンのナザルバエフ大統領が先週、国名の変更を提案した。「カザフエリ」、カザフ語で「カザフ人の国」という意味だそうだ。現在の国名も同じ意味。どうも大統領は「スタン」がお気に召さないらしい。モンゴルは末尾に…

「言葉というのはカメレオンで、環境に合わせて色を変える」

(日経「春秋」2014/2/11付) 「大丈夫」とは、「金銭の誘惑に負けたり、権威に屈したりしない、志の高い男子」(新明解国語辞典)。もとの漢語の意味に近いのだが、読みは「ダイジョウフ」。日本に伝わってから二通りに読むようになったらしい。もちろん「…

「今日の日本には創造者がいない」

(日経「春秋」2014/2/10付) 「幕末、江戸にぼつぼつ蘭学塾ができ始めたころ、蘭学の先生が旗本か御家人の入塾志願を『学問は田舎者に限る』といって、断ったそうです」と司馬遼太郎。学問のように洒落(しゃれ)っ気のない根気仕事は江戸の人間に向かぬと…

自国の結果ばかりが関心を集め、世界の選手になかなか目が向かない。

(日経「春秋」2014/2/9付) 東京都心にきのう13年ぶりの大雪警報が出た。街は煙り、列車も運休。雪不足のソチに分けたいと思う方もいたろうか。そのソチから届いた国際オリンピック委員会会長のスピーチ、「私たちは皆さまの夢をかなえるためにある」と語り…

サッポロが華やいだその年、ミュンヘンでの夏季五輪は血に染まった

(日経「春秋」2014/2/8付) 冬のオリンピックといえばグルノーブルを思い出す、記録映画「白い恋人たち」と同名のテーマ曲によっていまも人々に強い印象を残している。フランシス・レイのあの曲を口ずさんで、さあ次は日本で開催だと昭和の子どもたちも心を…

周到に世の中を欺き続けてきた

(日経「春秋」2014/2/7付) 探偵小説家の横溝正史は、先輩格である江戸川乱歩の代作をしたことがある。内容が劣るといった批判はとくになかったようだ。そのころ20代の横溝は、作家として独り立ちする自信を持ったことだろう。もちろん代作は大問題だが、人…

受験生にとって大変な受験シーズン

(日経「春秋」2014/2/6付) 春は名のみの風の寒さや――。体調管理に気をつけたい。とりわけ、年に1度の勝負に挑む受験生は。記憶をよみがえらせてみる。今となっては懐かしい思い出だ。インフルエンザが全国的にはやりやすい季節なので、受験生にとって大変…

お客さんは薄情なのだ

(日経「春秋」2014/2/5付) 新宿末広亭の楽屋の2階へ通じる階段の途中にいたら、落語家にやんわりたしなめられた。「そこに立ってられると、客足を止めるっていって縁起が悪い」。「お客さんあってこそ」だからだが、その客が集まらず、名古屋の大須演芸場…

選ぶ側の消費者や有権者が振り回されるだけならごめんである

(日経「春秋」2014/2/4付) 「バンドワゴン」、なんだか面白そうだと、後ろについて歩き出す人がいる。追随者が増えるにつれて興奮はさらに高まり、しまいには街中の人が行進に加わる。社会科学でいう「バンドワゴン効果」である。政治の世界では見慣れた光…

ある種「解禁の喜び」、恵方巻き

(日経「春秋」2014/2/3付) ずしりと重い太巻きのすしを丸かじりする。ある種「解禁の喜び」なのだと東海林さだおさん。すっかり日本中に広まった恵方巻きのことだ。きょう1日でどれくらい売れるだろう。始まりは関西らしい。そもそも土用の丑のウナギや大…

お上に任せず、泥だらけで蘇(よみがえ)らせる池

(日経「春秋」2014/2/2付) 井の頭公園で、大きな池から水を抜き、水質浄化などのため池の底を天日に干す「かいぼり」という作業が進む。そのため、ふだんと違う池の姿が見られるのだ。水が消え、残念ながら現れたのはゴミの山。自転車、家電、携帯電話、靴…

「競技は選手間の競争であり、国家間の競争ではない」

(日経「春秋」2014/2/1付) この2月は、7日に始まるオリンピックの月である。もう一度ぜひ見たい場面が1月にある。41歳7カ月になってジャンプのワールドカップ(W杯)に優勝した葛西紀明選手を、ライバルが祝うシーンである。大飛行を終えたばかりの勝…