春の労使交渉は始まってから来年で丸60年

(日経「春秋」2014/12/18付) 7日に亡くなった根本二郎・元日本郵船社長は財界労務部といわれた日経連の会長時代に慌てたことがある。1996年1月、日本の生産性の低迷を考えベースアップ(ベア)の見送りを表明した。ところが豊田章一郎トヨタ自動車会長(当時)らが「賃上げする企業があれば止められない」と。そんな声を聞いた根本氏は、個別企業は支払い能力をもとに判断することになるとの談話を出すなど対応に追われた。賃金交渉は、経済界として方針を掲げても結果は企業によってバラツキが出る。逆に、日経連を統合した経団連アベノミクスを応援するため増額を呼びかける。会員企業は応じてくれるだろうか。心配なのは政府の要請でもあるからと無理をして賃上げした場合に、労働組合や社員に会社の真の実力が誤って伝わることだ。翌年の賃金交渉の議論がかみ合わなくなる恐れもある。春の労使交渉は始まってから来年で丸60年。節目に危うさも漂う。
(JN) 足並みをそろえる、これは日本人の和の形なのであろうか。労使どちらも、揃えたがるのは、日本人の平等主義であろうか。本当は平等ではないので、平等に見せようとしているのか。政府は、財界に対して要請をするのは勝手であるが、それを受ける受けないは、それぞれの企業や労働者の判断である。政府、企業、及び労働者は、それぞれに考え方が違うし、理解し合うことが難しい。それなのに、揃えましょうというのは、無理があろう。アベノミクスのために企業があるのではなく、企業や労働者のためにアベノミクスが機能しなければならないが、そんな魔法はない。一喜一憂、経済は蛇行しながらがれ、邪魔なものを押し流して行く。その大河の流れを止めることはできない。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO81049010Y4A211C1MM8000/