2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧
(朝日「天声人語」2015年1月31日) パリの週刊新聞社やユダヤ系スーパーを襲った惨劇。日本人2人を盾にした「イスラム国」の卑劣な脅迫。エジプト出身のアルモーメン・アブドーラ東海大准教授(40)は言う。「イスラム教は平和な宗教。相手に嫌なことを…
(日経「春秋」2015/1/30付) 音楽ビジネスで成功したリチャード・ブランソン氏がヴァージン・アトランティック航空を立ち上げたのは1984年だ。5年後、バブル景気にわく日本にも直行便を就航。エコノミークラスへの個人テレビ設置など先駆的なサービスで人…
(日経「春秋」2015/1/29付) みすず書房の本はかつて、インテリの象徴だった。「夜と霧」や「全体主義の起源」を読むのが大学生のたしなみとされたのだ。そんな版元の一冊が、時ならぬブームを起こしている。トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」は異例の13…
(日経「春秋」2015/1/28付) 1945年に生まれたフランスのユダヤ人作家パトリック・モディアノは昨年のノーベル文学賞受賞者である。88年のある日、古い新聞を繰っていて41年大みそかの尋ね人欄に目をとめる。出したのは娘を捜す両親、住所はユダヤ人地区だ…
(日経「春秋」2015/1/27付) アテネは、スパルタとのペロポネソス戦争のさなか、疫病に襲われた。農地も荒れて、戦争続行への不満が広がり始める。そのとき指導者ペリクレスは民会で市民に呼びかけた。「諸君の義務は、現在耐えるべからざるを耐え忍べば、…
(日経「春秋」2015/1/26付) 中東について大学生にリポートを書かせると、「私たち平和な日本からは想像できない……」。文化や宗教が違うから戦争もテロも仕方ない。そんな意識がのぞくという。30年近く前、リュックを背負い、この地域を旅したことを思い出…
(日経「春秋」2015/1/25付) 「きょうはプレゼントを持ってきました」。イスラム教徒が祈りのときに用いる数珠、東京拘置所の面会室にて、海賊行為を働き日本で有罪判決を受けたソマリア人と後藤健二さん。2年前の2月である。ソマリアは公用語のソマリ語…
(日経「春秋」2015/1/24付) 何度落ちたことか。夏目漱石は留学先のロンドンで自転車の稽古に励んだ。深刻な心の病の気分転換にと勧められた。その悪戦苦闘ぶりを作品に書いている。事故も起こしかけた。鉄道馬車と荷馬車の間を抜けようとしたら向こうから…
(日経「春秋」2015/1/23付) 明治のはじめ、新政府の施策にあらがう農民一揆があちこちで起きた。よく知られるのは地租改正や徴兵令反対の一揆だが、国民あまねく学校へ通えという学制にも怒りは向かう。教育の大切さはやがて人々に浸透して、明治10年には…
(日経「春秋」2015/1/22付) 38年前の衝撃。日本赤軍が日航機を乗っ取り、刑務所にいる仲間の釈放と身代金を要求したダッカ事件。「イスラム国」とみられるグループの蛮行で、政府は緊迫した雰囲気に包まれている。犯人側の要求をのんだダッカ事件で、日本…
(日経「春秋」2015/1/21付) 200万人という11日のパリのデモ行進、50に近い国の首脳が腕を組んで歩いた。テロを許さぬ。寛容を尊び、多様性を認めるからこそ、イスラム教徒もユダヤ教徒もキリスト教徒も、あるいは無宗教の人々も、風刺週刊紙の姿勢に賛否は…
(日経「春秋」2015/1/20付) インドネシアの熱帯雨林で、卵ではなくオタマジャクシを産むカエルが見つかった。カエルの世界には、オタマジャクシどころか子ガエルを産む種類までいるそうだ。環境に適応する苦肉の策か。一匹の生涯だけを見ても、卵から幼生…
(日経「春秋」2015/1/19付) 萩原朔太郎はよく散歩した。そして、しばしば迷子になったらしい。どこまで虚構か分からないが、短編小説で自らの性癖について書いている。北陸の温泉地でも道に迷い、恐ろしい体験をする。気づくと町の住民がすべて猫になって…
(日経「春秋」2015/01/18) 警視庁から各局。至急、至急! 1995年3月20日の朝、警察無線のやり取りは緊迫の度を増していた。地下鉄サリン事件の発生である。「同時多発重要事案に緊急配備を発令する」と声を高ぶらせた。至急、至急! そんな応答を収めた73…
(日経「春秋」2015/1/17 3:30) 阪神大震災は「不意打ち」だった。「日本沈没」の作者で、地震に詳しい小松さんでもそうだった。この地域は昔から安全だと思っていた人が多かったという。その大地が揺れて20年たつ。「不意打ち」を防ぐには、つらい記憶を含…
(朝日「天声人語」2015年1月16日) 縁起のことを験(げん)とも言い、お相撲さんはよく験をかつぐ。「験」のもとの字の右側は「僉(せん)」と書いて、二人が並んで舞い祈る姿を表している。祈りに応えて、しるし、きざしが現れることを「験」というと。そ…
(日経「春秋」2015/1/15付) 「どんでん返し」は江戸中期の大坂で始まったらしい。歌舞伎の舞台転換技法、並木正三が考案したという。「大阪都」構想をめぐる、年末からのどんでん返しは誰のシナリオなのだろう。住民投票に反対していた公明党が方針転換、…
(日経「春秋」2015/1/14付) 路線、政策、方針、計画、完成。中国の令という姓を共有する5人の兄弟姉妹の名前。地方の幹部だった父親が、当時の新聞によく載っていた言葉を子どもたちにつけたのだそうだ。中国で広く知られるようになったのは、4人目の令…
(日経「春秋」2015/1/13付) ハードボイルド小説に一番しっくりくる街は、やはり新宿だろうか。「新宿鮫」、物語の中の新宿では今宵(こよい)も欲望と熱気が渦を巻く。暴力団と外国マフィアがにらみ合い、銃声が響く。かくして街は眠らない。こんな新宿の…
(日経「春秋」2015/1/12付) 「未成年」という言葉には、どこか危なげな若者のイメージがある。そんな難しい年ごろだけに選挙権などまだお預け、というのがニッポンの常識だった。それがいま、劇的に変わろうとしている。こんどの通常国会に、選挙権年齢を1…
(日経「春秋」2015/1/11付) ビール競争の歴史は古い。明治に入るや輸入品が広がり始め、横浜には外国人が相次ぎ醸造所を設けた。後にサッポロビールになる「開拓使麦酒醸造所」も参戦する。札幌にできた官営工場だ。官営工場の売りは、低温でじっくり発酵…
(日経「春秋」2015/1/10付) 異物混入問題で揺れる日本のマクドナルド、本家米国でも以前から業績不振に悩み、昨秋、インターネットで思い切ったキャンペーンを始めた。例えば「マクドナルドのビーフにミミズは入っていますか?」。牛肉100%だと訴えるため…
(日経「春秋」2015/1/9付) 手塚治虫さんは「漫画の神さま」と呼ばれる。膨大な作品が世の中に与えた影響は計り知れない。歴史大作の「陽だまりの樹」や「アドルフに告ぐ」など長編が得意だったが、じつは、1コマ漫画にも並々ならぬ情熱を注いでいた。そこ…
(朝日「天声人語」2015年1月8日) 『黒の試走車』、マイカー時代の扉が開き、自動車業界の火花が激しさを増す高度成長期。新車開発の秘密情報をめぐるサスペンスは人気を呼んだ。開発中の新型車を覆面のようなベールで隠して試走する。それから半世紀。自た…
(日経「春秋」2015/1/7付) ぽつりぽつりと遅れて届いていた年賀状もそろそろ尽きた。どこか知らない場所で、始動ボタンはもう押されている。加速する時間に追いつこうと焦る自分がここにいる。フィギュアスケートの解説者が「ジャンプが成功するかどうかは…
(日経「春秋」2015/1/6付) 昨年の暮れ、2人の語り部が亡くなった。1人は長崎で被爆した片岡ツヨさん。もう1人は女学校当時、沖縄戦にひめゆり学徒隊として動員された宮城喜久子さん。語り部の人たちの高齢化を止めることはできない。そうわかってはいて…
(日経「春秋」2015/1/5付) 電話からメール、さらに交流サイト(SNS)と、そのあおりを受けて今年の正月用の年賀はがきの発行枚数はおよそ34億、ピークだった2004年用に比べ2割あまりも減った。それでも、心のこもった年賀状を受け取ったときに胸をひた…
(日経「春秋」2015/1/4付) 帰省も終わり、子供たちは集まったお年玉の使い道に思いを巡らせているころか。有力候補のひとつが、おそらく「妖怪ウォッチ」関連のあれこれだろう。おととしゲームが発売され、昨年のアニメ放映で人気に火がついた。ゲームをつ…
(日経「春秋」2015/1/3付) 「がおる」と「おがる」。宮城県名取市で海岸の松林をよみがえらせようと活動する人たちに聞いた。がおるはしおれる、おがるは逆に、大きく成長するという意味だ。人々は震災の翌年、クロマツの種をまいて苗をつくることから始め…
(朝日「天声人語」2015年1月1日(木)) 「蒲団(ふとん)から首出せば年の明けて居る」(正岡子規)。時間とはありがたいもので、荷車を押すように力を込めなくても流れてくれる。明けて新春。365日、8760時間の1年がまっさらな顔で始まった。「十…