2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

認知症で喜怒哀楽をはっきり出すようになり・・・・・

(日経「春秋」2014/8/31付) 認知症の母親と暮らし、介護しながらその姿を映像に記録し続けた関口祐加さんの記録を映画「毎日がアルツハイマー」との題で2年前に発表され、その続編が現在、都内などで公開され、上映期間を延長するヒット作になっている。…

大人の対応、その分、分かりにくさが残った

(日経「春秋」2014/8/30付) 「大統領のラストチャンス」。ルモンド紙の社説、なんともベタな言い回しから、政権の経済政策をおおっぴらに批判した大臣の首を側近にすげ替えたオランド大統領の切羽詰まった立場が透けてくる。人気も国の行方も先が見えず、…

民法の改正案がまとまった

(日経「春秋」2014/8/29付) どなた様に限らず、現金でお願いいたします。飲食店などでたまに目にする。「ツケお断り」の意思表示である。裏返せばそれだけツケが通用していたということだ。ツケ払いでたまった飲み代を、年の瀬に店のママさんが徴収して回…

戦争のことはまた来年、否、忘れてはならない

(日経「春秋」2014/8/28付) おととい80歳で急逝した俳優・米倉斉加年さんの生家は福岡市の大きな炭屋で、三和土(たたき)に絵を描くのが幼いころの遊びだった。飄々(ひょうひょう)として繊細なその演技を愛する人も多かっただろうが、とても副業とはい…

全国学力テストをめぐる各地の一喜一憂ぶり

(日経「春秋」2014/8/27付) 東京大学の入試では0.0001点の差で運命が分かれることがある。今春の文科1類(前期)の合格最低点は332.7444点である。そこには究極の公平さがあるが、人間の能力をみるモノサシとしてはいささか安易だろう。そんな声を背に、…

事故を二度と起こさないために

(日経「春秋」2014/8/26付) 雪煙のなかを落ちていった友が残したものは、切れるはずのないザイルのすり切れたような跡だった。「氷壁」は、1955年に前穂高岳で起きたナイロンザイル切断事故が題材になっている。この事故で弟を失った登山家の石岡繁雄氏は…

トランクの中の日本

(日経「春秋」2014/8/25付) 占領軍の一員として日本に上陸した米国の従軍写真家ジョー・オダネルさんは福岡の農村で、ある墓を見る。木で手作りした十字架に、「米機搭乗員之墓」とある。ある市の市長宅でごちそうを振る舞われる。奥さんが作ったのだと考…

主要な登場人物がみな絶望している

(日経「春秋」2014/8/24付) ドストエフスキーは極限の体験をしている。反政府運動に加わったかどで投獄。銃殺寸前、恩赦が伝えられシベリア流刑となる。十数年後、世界的作家となり「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」などの作品を生む。先日亡くなった哲学…

バラマキというのでは地方に熱さは戻らない

バラマキというのでは地方に熱さは戻らない (日経「春秋」2014/8/23付) お盆を過ぎたのに連日の猛暑、どうか熱中症にご注意を……などと残暑見舞いの文句を書きかけて、いや違うと筆を止めた関東在住の方は少なくあるまい。景気のほうも首都圏と地方ではずい…

人の心の奥に巣くうものがいかに根深いか

(日経「春秋」2014/8/22付) 成績には何の問題もない一人の黒人の若者が大学への入学を希望する。その願いを町ぐるみで潰しにかかる。最高裁は入学を認めるよう大学に命じ、ついにはケネディ大統領が派遣した軍に守られ、白人群衆が罵声と怒号を浴びせるな…

住まい方にも工夫を凝らしてきた歴史を忘れるな

(日経「春秋」2014/8/21付) 「浜の真砂(まさご)」といえば古くから数がおびただしいことのたとえだ。万葉集をひもとけば「八百日(やほか)行く浜の真砂(まなご)も我(あ)が恋にあにまさらじか沖つ島守」という歌がある。記録的な豪雨による土砂崩れ…

1本、そのバナナが日本で100円以上で売れている

(日経「春秋」2014/8/20付) 世界で1番バナナの輸出量が多い国はどこか。フィリピンではない。南米のエクアドルである。このエクアドルでバナナ農業に一大革命を起こした日本人がいる。大農場を経営する田辺正裕さんだ。高校生だった47年前に日本から移住…

人間の方が技術の部品と化し、ただ酷使されている

(朝日新聞「天声人語」2014年8月19日) 小中学校の同級生と久しぶりに会い、いまは大学の哲学教師だと近況を報告した。相手は驚き、そういえばお前は子どものころから忍術が好きだったと応じた。「哲学なんて半分詐欺のようなことをやっていて」と語ったこ…

谷口吉郎は、日本の文化の巧みな使い手だった

(日経「春秋」2014/8/18付) 明治時代の建造物を移築した愛知県犬山市の博物館明治村は来年で開業から50年になる。貴重な古い建物が取り壊されていくのを惜しみ、この野外博物館の構想を描いた谷口吉郎は、明治建築の何にひかれたのだろう。明治村に集めた…

「昔この国に帰省ラッシュという現象があった」

(日経「春秋」2014/8/17付) この週末で夏季休暇も終わり、という職場も多かろう。きのうの土曜日、大荷物を抱えた客でにぎわう東京駅をのぞいてみた。下りの新幹線に「空席あり」の表示が並び、夏も盛りを越えたと実感する。都会へのUターンラッシュはこ…

いまも世界でくすぶる戦さの火は敬えない

(日経「春秋」2014/8/16付) 見つけたとき、どれほど驚いたか。闇の怖さは薄れ、寒さを防いだ。煮炊きすれば、生と違う香味がした。悪霊も退散すると信じた。はるか古代ペルシャで山上神殿の火を拝む宗教が生まれた。そのゾロアスター教が飛鳥時代、伝来し…

こうして人々は一色に塗りたくられていく

(日経「春秋」2014/8/15付) 「この大戦争でパパはなにをしたの?」。第1次世界大戦の初期、英国ではこんな図柄のカラー刷りポスターがつくられた。英国は当時、参戦した主要な国の中で唯一徴兵制度がなかった。軍に志願せず子どもの疑問に答えられるのか…

墓とは誰のためにあるのだろう

(日経「春秋」2014/8/14付) 3代前から東京で暮らしている。先祖代々の墓は広島の寺にある。東京で亡くなった祖父母も、広島に長く住んだわけではない父も、そこに眠っている。墓参りに行かねばとも思うが、足が遠のいて久しい。墓とは誰のためにあるのだ…

サッカー以外について「日本の情報はあまりない」

(日経「春秋」2014/8/13付) 「日本人は人前で笑わないと思っていた。私がこれまでに取材した人は誰も笑わなかったわ」「日本人は人をからかったりはしないんじゃないのかい」。「おいおい、そんなわけないだろ」と反論しながら、決して少数ではないであろ…

土壇場まで世界に背を向け、悲劇を積み重ねていった

(日経「春秋」2014/8/12付) 広島原爆忌の6日が過ぎ、長崎の惨禍を心に刻む9日を経て、今年もまもなく15日が巡ってくる。8月――。69年前の今ごろの一日一日は日本の運命を決していった。たとえばきょう12日は、ポツダム宣言受諾交渉のなかで連合国側の回…

核廃絶への一念

(朝日新聞「天声人語」2014年8月10日) 後に天才外科医となる若い男が、空き家を見つけて住もうとした。そこに突然、見知らぬ大工があらわれる。この家はその昔に自分が建てた、だから自分に改築させろ、という。男は任せた腕のいい職人はほどなく白血病で…

食生活は普段は目に見えないところで支えられている

(日経「春秋」2014/8/10付) 夏休みに親子で楽しむ人気のイベントに、工場見学がある。今月初め、特別な工場見学に出かけた。7カ月間操業を停止していた旧アクリフーズの群馬工場である。この日はマルハニチロの直営工場として再スタートを切って5日目。…

いい旅を通じ、人生を豊かにするような刺激を

(日経「春秋」2014/8/9付) 「若者よ、旅に出よ」と、思想家の東浩紀さんが近著「弱いつながり」で呼びかけている。同時に、その旅を充実させるために2つ助言をしている。いつも通り携帯端末を持ち歩き、ネット情報をフル活用せよ。同時に、フェイスブック…

「最後のヒロシマ・パイロットの死」

(日経「春秋」2014/8/8付) 1959年、精神錯乱だからと米軍の病院に収容されていた元パイロットに手紙が届いた。「私たちが、このお手紙をさしあげるのは、私たちがあなたに対して敵意など全然いだいていないことを、はっきりと申しあげたいからでございます…

名をつけただけで、ものを支配することは出来ない

(日経「春秋」2014/8/7付) 大海原が広がっていた。天空から降りてきた巨大な矛が水面をかき回す。矛先から滴った海水が積もり、やがて島が出現する。・・・・・・潮がひとりでに凝り固まってできたから自凝(オノゴロ)島という。そう名付けられて国産みの島とな…

笹井氏の死は科学の進歩にブレーキをかける

(日経「春秋」2014/8/6付) 死者は、どんな厳しい、また見当外れな非難を受けても、聞く耳がない。傷つけられても、傷つけられたことを永遠に知らない。これこそ死者の特権である――、と串田孫一。死者からすれば「なんと身勝手な言い草か」ということがある…

ウイルスにヒトが触れたときから始まった災厄

(日経「春秋」2014/8/5付) 1960年代、大阪市の真ん中で奇妙な病気が流行した。発熱や頭痛をともなって腎不全を発症、ひどくなると皮下出血を起こす。約120人の患者が出て2人が亡くなった「梅田熱」である。原因は、ネズミを自然宿主とするハンタウイルス…

日本人のビール好きは明治のむかしからのDNA

(日経「春秋」2014/8/4付) 湯上がりにビール、ビールとはやる心を抑えつつ冷蔵庫を開けて、無情にもそこに買い置きの缶がなかったときのショックはなかなか大きい。日本人のビール好きは明治のむかしからのDNAにほかならぬようだ。田山花袋の「田舎教師…

その結果、大阪の街頭犯罪は東京を下回った

(日経「春秋」2014/8/3付) 米国の検事に頼まれ、日本の治安状況を説明したことがある。犯罪の少なさ以上に先方が驚いたのは、小さな事件まで漏らさずに記録する日本式の統計だ。「でも日本もこの先、犯罪が激増すれば米国式の統計になると思う」。検事が別…

コスプレは文化交流にも役立つが、詐欺は言語道断

(日経「春秋」2014/8/2付) 狐狸庵先生、遠藤周作は変装が大好きだった。あるとき、仙人のような格好で杖をついて銀座の酒場の扉をくぐる。山口瞳、池田弥三郎といった旧知の人々もホステスも仰天。ポカンと見ていたが、正体にまったく気づかなかった。衣装…