2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

コツコツと同じ作業を繰り返して技能を覚え

(日経「春秋」2013/10/31付) 高校に進学する女子は3人に1人。男子も2人に1人は中学を出ると働き始めた――。日本が経済発展に向かう前の1950年。戦後の復興半ばのなかを、汗を流して働く若者たちの姿が浮かんでくる。そのころ多摩川河川敷のグラウンドで…

「秘密」

(日経「春秋」2013/10/30付) はやり歌に多い言葉といえば、昔ながらの歌謡曲であれ近年のJポップであれ基本はそんなに変わるまい。恋、愛、心、夢、涙、別れ……。それに秘密。スマートフォンの歌詞検索アプリで調べたら「秘密」を含む曲が2955件。人の世に…

「夜明けのコーヒー 二人で飲もうと〜」

(日経「春秋」2013/10/29付) 同じホテルに泊まるフランスの若い俳優が歌手の越路吹雪に声をかけた。「あす朝早く二人でコーヒーを飲もう」。うなずいた越路さん、約束を守ろうと翌朝、眠い目をこすり彼の部屋をノックすると、彼は一睡もせず待っていた……。…

うまい日本のコメに未来はある

(日経「春秋」2013/10/28付) 「力業をする人が三膳の御飯のたべられぬと言ふ事はなし」(樋口一葉「にごりえ」)。3杯とは、現在なら誰もが持て余そう。しかし明治時代にはコメを毎食このくらい食べるのは珍しくなかったという。かつて、コメは年に1石で…

「アニメの県」 埼玉

(日経「春秋」2013/10/27付) 「エースをねらえ!」「クレヨンしんちゃん」「ルパン三世」「らき☆すた」。これら人気の高い漫画やアニメの共通点は何か。何らかの形で、すべての作品に「埼玉県」が登場するのだ。郊外に住む作家が描き、やはり郊外の若者が…

あなたは何も考えず命令に従ってはいないか

(日経「春秋」2013/10/26付) 映画監督フランソワ・トリュフォー、「人は皆、自分の仕事と映画批評家というふたつの職業を持っている」。だれもが映画を語る時代はとうに終わってしまったが、それでも、時には語りたくなることがある。「ハンナ・アーレント…

成功の道は信用を得ることである

(日経「春秋」2013/10/25付) 人の名前は商品に不思議な力を与えるらしい。同じ野菜でも「山田さんのトマト」とあると、ただのトマトではなくなる。真偽を確かめる暇も必要もなく、人はものを買い、商品は流通し続ける。日々お金を払って消費されているのは…

自然の尊重という日本人の精神を体現した食に関する社会的慣習

(日経「春秋」2013/10/24付) 草野心平、「日本料理は捨てる料理つまり犠牲の料理です。対照的なのが中国料理で、包容の料理なんです」。日本料理には厳選した素材のいい部分だけ使う印象があるが、それも和食、そうでないのも和食ということだろう。ユネス…

「環境難民」

(日経「春秋」2013/10/23付) 人口10万人強、陸地面積700平方キロあまり。赤道直下の太平洋に浮かぶキリバスは、海抜3メートル以下の高さしかない。この島国を6年前に離れてニュージーランドで暮らしてきた男性が、難民として認めてほしいと裁判に訴え、…

ネット講義を広めて大学改革に生かせ

(日経「社説」2013/10/17付) 大学の授業をインターネットで無料で配信する動きが世界で広がり、日本でも来年春にサービスが始まる。多くの人に教育の機会を広げ、大学の知名度を高める手段としても期待は強い。これを大学改革や国際競争力の強化にどう役立…

優先席、控えめに希望を伝えたらと

(朝日「声」2013年10月18日) 12日の「声」の「優先席を若者が占有する国とは」について、団体職員の新谷ゆかりさんより投稿があった。気になったのは「席を譲ってもらえないか」と自ら声をかけたのか、という点だ。目の前の妊娠さんに気付かなかったかもし…

「田毎の月」と自由貿易

(日経「春秋」2013/10/20付) 「田(た)毎(ごと)の月」、山あいの農村に並ぶ棚田の一枚一枚に、月が映って浮かび上がるさま。姨捨はその光景の名所として知られる。芭蕉や一茶ら多くの俳人が訪れ、ここで名月の句を残した。大小合わせて2千枚ほどもある…

1964年東京五輪と43年10月21日の出陣学徒壮行会

(日経「春秋」2013/10/19付) 「ゲニウス・ロキ」という言葉がある。地霊を意味するラテン語。転じて、その土地に宿る記憶、その土地ならではの雰囲気をさすようになった。明治神宮外苑はゲニウス・ロキ、刻まれた記憶が、ふたつある。1964年東京五輪と43年…

普段は観察できない現象を見つけ出す

(日経「春秋」2013/10/18付) 薄いガラスでできたフラスコや試験管を、どうしても優しく扱えない学生がいる。机の上の勉強が得意でも、すごい発見をする研究者になれるとは限らない。実験は、上手な人と下手な人の差が大きい、とノーベル化学賞を受けた鈴木…

いざという時の危険度合いは年を追い増していく

(日経「春秋」2013/10/17付) 19年ぶりに30個を上回るかもしれないという。今年生まれた台風の数の話だ。26号が列島を襲い、伊豆大島では多くの尊い命が失われた。観測史上最多という大雨による土砂崩れが主な原因だ。自然のままの山や崖をふだん目にせず暮…

正義の味方というなら、まず飢えている人を救わなくては

(日経「春秋」2013/10/16付) アンパンマンの物語は、幼児向けの絵本から始まったとはいえ、これほどなごやかな争闘も珍しい。善と悪とは分かれている。とはいえそこに憎悪は存在しないのだ。「倍返し」などといきり立たず、敵にさえ手を差し伸べる主人公で…

優先席を若者が占有する国とは

(朝日「声」2013年10月12日) 大学研究補助員である中島美鈴氏は、出産を迎える娘さんと電車に乗った。そこでの優先席は談笑する若者、化粧をする女性で埋まっていた。一席空いたが、するりと若い男性が座ってしまい、この身重の娘さんは立ちっぱなしであっ…

きょうは「鉄道の日」

(日経「春秋」2013/10/14付) 明治に入り鉄道が全国へ延び始めたころ、車掌は「車長」と呼ばれていたそうだ。「車掌」には列車内を掌握するという意味もあろうから、これも悪くない言葉だ。ただ「車長」からは、列車運行に責任を持つという姿勢がより伝わっ…

1973年、黄金の高度成長はこれを機に終焉、日本人はすこし大人になっ

(日経「春秋」2013/10/13付) 1973年のテレビドラマに「それぞれの秋」という作品があった。家族の脆(もろ)さを正面から描き、タイトルどおり、物語は秋の深まりとともに回を重ねた。ちょうどそのころ、日本中を騒然とさせていたのが石油ショックである。…

旺盛な起業家精神と地域のつながりの健在が米国の強さの土台

(日経「春秋」2013/10/12付) 米デトロイトが財政破綻してから、まもなく3カ月たつ。そのデトロイトがいま、起業やニュービジネスにわいているという。2年前、高級時計の工場を開いた経営者がいる。今年夏にはこの街とニューヨークに直営店を開くまでにな…

水銀による被害と、その克服を経た我々だからこそ

(日経「春秋」2013/10/11付) 「言葉尻だけを捉えるのはつまらない話です」。城山三郎がくぎを刺した。ただ「その人の本質を表すような言葉が出たときには、それはもう容赦なく批判すべきですね」。でも、安倍首相が水俣条約の会議に寄せたメッセージで「水…

赤いナポレオンの死

(日経「春秋」2013/10/10付) 20世紀を象徴する人物がまた1人、ベトナムのボー・グエン・ザップ将軍が4日、亡くなった。1911年生まれで102歳だったという。赤いナポレオン。そんな異名をさずかるほどの軍略家だった。フランスからの独立をめざしたインド…

「成人力」、24カ国中で日本がトップ

(日経「春秋」2013/10/9付) 「成人力」とは何か。作家の浅田次郎さんは「この人は人物だな」と思わせるような人が持つ人間としての成熟度だと言い、近藤誠一前文化庁長官は「数字では測れない、人が持つ総合的な魅力や知恵を連想する」と言った。しかし、…

こんな言葉の暴力はやはり許されない

(日経「春秋」2013/10/8付) 人間は口のなかに猛獣を飼っているらしい。「口の虎は身を破る」といえば言葉を慎まないために身を滅ぼす大事にいたることだ。その猛獣をあえて、これでもか、これでもかと解き放って省みない人たちがいる。東京・新大久保のコ…

アルバイトが規則を踏み外した行い

(日経「春秋」2013/10/7付) パンの上に寝そべったり、食材を顔に張り付けたり。今年の夏、飲食店や小売店のアルバイトが規則を踏み外した行いをし、写真に撮ってネットで公開するという出来事が相次いだ。同じようなことが起こるのを防ごうと、店長と交流…

「志は高かったんですけどね」

(日経「春秋2013/10/6付) 甲子園の高校野球であった話だという。主将も務める4番打者が初回に先制のタイムリーヒットを放った。ところが、攻撃が終わっても彼一人だけが頭を抱えてベンチに座ったまま、守備につこうとしない。目を真っ赤にし、「オレはダ…

「靖国とアーリントンを一緒にしないで」

(日経「春秋」2013/10/5付) 千鳥ケ淵戦没者墓苑はアーリントン国立墓地に「最も近い存在だ」――。米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥ケ淵墓苑に献花したことに関し、米国防総省高官はこう述べたそうだ。5月の安倍晋三首相の発言と引き比べると…

おかげ参りは抜け参りともいう

(日経「春秋」2013/10/4付) 伊勢の大御神宮に、おかげ参りとて国々の人ども、おびただしく詣づる事のありし……。本居宣長の「玉勝間」に、宝永2年(1705年)の伊勢神宮参拝ブームについての記述がある。訪れた善男善女は4月9日からの50日間に、じつに362…

咄嗟だからこそ、人の一番奥に潜むものがのぞく

(日経「春秋2013/10/3付) A・ガードナーという英国のコラムニストが書いている。「人間というものは、いくつかの習慣に上着とズボンを着せたような存在である」(行方昭夫訳)。しかし、そこに割り込んでくる何事かも、またある。父の会社で働き、父の運…

オバマケア

(日経「春秋」2013/10/2付) 広く国民が保険に入れるようにしたいと、第26代大統領セオドア・ルーズベルトは、100年ほど前に国民皆保険への道準備したが、それは遠く、クリントン政権もそのための改革をめざしたが実現できなかった。オバマ大統領は、それを…