2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

国威発揚型ではなく、成熟国家ならではの五輪を

(日経「春秋」2014/6/30付) 「織田選手一等に入賞し 初めて大マストに日章旗翻る」。アムステルダムで開かれていた五輪で、日本人として史上初の金メダルを三段跳びの織田幹雄選手が獲得したときの報道だ。いまなら「織田 日本人初の金」だろう。しかし当…

試作車は、運転開始と終了のボタンがあるだけ

(日経「春秋」2014/6/29付) 米グーグルが自動運転車を独自に開発した。先日公開した試作車は、運転開始と終了のボタンがあるだけ。人による無謀運転や不注意をなくせば事故が減る。高齢者なども出かけやすくなる。省エネにも優れる。2020年の実用化を目指…

「自由への希求」

(日経「春秋」2014/6/28付) 100年前のきょう、ハプスブルク帝国の皇太子がサラエボで暗殺された。25年前に訪ねた現場には、19歳のセルビア人青年がここで発砲したという足形があった。足形には、暗殺を「自由への希求」とたたえるパネルが添えられていた。…

いつもそばに先生がいた

(日経「春秋」2014/6/27付) 物理学者でもあった随筆家の寺田寅彦は、意外にも子供のころ算数が大の苦手だったそうだ。親が心配して頼み込み、夏休み中、中学教師の自宅に通って教えてもらうことになった。その庭にある高い松の木に凌霄花(ノウゼンカズラ…

一流どころの選手はこぞって「らしさ」を出している

(日経「春秋」2014/6/26付) ここ数日、寄ると触るとこの話題だったサッカー・ワールドカップ。たとえ可能性が低くても、夢を語り合うのは楽しいものである。もう突破を決めた相手のコロンビアにやる気はないはず、という訳知り顔があった。それでこの結果…

日本の企業文化に、新しい風が激しく吹き始めたようにもみえる

(日経「春秋」2014/6/25付) フォード、バイエル、シーメンス、タタ……。人名を冠した企業は世界に数多い。おおむね、創業者の名前に由来しているようだ。わが国も、トヨタ自動車、ホンダ、伊藤忠商事、野村証券、など。ユニークなひねりを加える場合がある…

「戦後日本のイノベーション100選」は、38件が登場している

(日経「春秋」2014/6/24付) 50代以上ならたくさんおられよう。昨今の言葉を使えば「エアそろばん」をはじき暗算をこなす子もいた。もし電卓なかりせば、あのスキルの差はわれらの人生を左右したかもしれない。いまでは100円ショップに並ぶ電卓だが、そんな…

友情や仲間意識は男性だけのものではない

(日経「春秋」2014/6/23付) 近年人気のエンターテインメントに「女性の相棒モノ」が目立つ。アニメ「プリキュア」シリーズ、ドラマ「あまちゃん」、そして映画「アナと雪の女王」など。いま放映中のNHK連続テレビ小説「花子とアン」も、この系譜に入る…

そんな意識が社会の中になお消えず残っている

(日経「春秋」2014/6/22付) 吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件で、警視庁は脅迫電話の声の分析を試みた。犯人が自供したため活用されなかったが、この事件以降、声紋鑑定は広く知られるようになる。犯罪がらみのそんな言葉を、東京都議会で耳にするとは思い…

パスカルは思いつく、それは世界初の公共交通機関

(日経「春秋」2014/6/21付) パスカルといえば、「考える人」。沈思し続け「人間は考える葦(あし)である」と説いた。39歳で没した天才は数学、物理の法則を見つけ計算器も発明する。晩年は信仰に生き、貧者の救済に腐心していた。あるとき、思いつく、そ…

その瞬間にいつ出くわすかもしれないのがW杯の楽しさでもある

(日経「春秋」2014/6/20付) 4年前のサッカー・ワールドカップ、今も強烈に記憶に残る一節、「スペイン―ドイツの準決勝で、スペインのプジョルがヘディングシュートを決めた瞬間、なぜか涙があふれました」と元東大総長の蓮實重彦さん。スペインはこの1点…

項目だけはテンコ盛りで、成長戦略を錦の御旗に

(日経「春秋」2014/6/19付) 尊皇攘夷、大政奉還、廃藩置県、富国強兵、自由民権……。日本の近代史はこういう4文字7音の言葉でたどれると、半藤一利さんが「あの戦争と日本人」に書いている。五族協和に国体明徴、天壌無窮、・・・・・・・・八紘一宇、七生報国、…

知略が得意なロシアとどう向き合うか。

(日経「春秋」2014/6/18付) 小さな緑色の男たち、「トイ・ストーリー」にも登場する火星人、どこからともなくゾロゾロと現れる正体不明の連中。規律が正しく、無駄がない行動が不気味だ。その火星人になぞらえて、ウクライナ東部で活動するロシアの工作員…

どの人も分け隔てなく、互いの人格や権利を認め合う

(日経「春秋」2014/6/17付) 中世アイスランドの説話にこんな物語がある。首長格のフラフンケルは、ある日、羊をちりぢりにしてしまった若い羊飼いの前に馬が現れる。彼はこれにまたがり羊を集め終えた。怒った有力者は若者を殺してしまう。羊飼いの父トー…

「一億ヲ目標トス」

(日経「春秋」2014/6/16付) 50年後でも人口1億人――。政府が今月末にまとめる「骨太の方針」にこんな目標が盛り込まれるという。その昔、昭和16年に閣議決定した人口政策確立要綱にもこうある。「昭和三十五年総人口一億ヲ目標トス」。そのために国は「産…

のびのびと、思い切ったプレーで観客を魅了してくれ

(日経「春秋」2014/6/15付) 時計を気にしながら、ワクワクしたり緊張したり。きょう午前10時から始まる。相手国はコートジボワール。サッカーW杯は五輪を上回る世界最大のスポーツ大会だ。なぜこうも人気なのか。文化人類学者の今福龍太氏は、人は足を動…

アフガニスタンできょう、大統領選挙の決選投票が行われる

(日経「春秋」2014/6/14付) 英BBCが2010年から断続的に放映しているドラマ・シリーズに「シャーロック」、舞台を21世紀に移して、新鮮な魅力を生んでいる。ホームズの相棒であるワトソンは、アフガニスタンでの戦争に軍医として参加し、体をこわした男…

ウナギ、絶滅に追いやる前に日本人こぞって自重するしかあるまい

(日経「春秋」2014/6/13付) 本山荻舟「飲食事典」にこんな話がある。天保年間のこと、ウナギで名高い京都・宇治の料亭にお大尽がやって来た。酒やつまみをいろいろ出すが肝心のウナギが遅い。やっと出たと思ったら細い貧弱なのが数本――。さて勘定を頼むと…

へそは安全運航と顧客満足のはず。

(日経「春秋」2014/6/12付) 金の冠に銀を混ぜてないか調べよ。湯船につかった。あふれると同時に体が浮く。その時、閃(ひらめ)いた。「アルキメデスの原理」発見の瞬間である。また、てこの原理の例として「私にどこか足場があれば、地球を動かしてみせ…

ナマコのようによたよたしながらでも理想を立てていたい

(日経「春秋」2014/6/11付) 「流儀はいろいろありうると思うんだけども」、哲学者の鶴見俊輔さんが40年前、自分の流儀はまず単純に線を引いてしまうことであり、複雑な状況を全部考えていくと生きる信念は出てこないような気がする、と言っている。信念と…

試されている空間

(日経「春秋」2014/6/10付) 東京急行といえば、東横線などの電車を走らせる電鉄会社のこと。と思いきや、冷戦時代のソ連空軍機の「東京急行」、東京に向かって頻繁、同じ機体に同じ航路。防空識別圏に侵入すれば、航空自衛隊はスクランブル発進する。する…

不二家生ミルキーのアイス 赤城乳業

(日経 2014/6/9 ) 赤城乳業(埼玉県深谷市)は10日、不二家(2211)の人気菓子「生ミルキー」を再現したカップ入りアイス「不二家ミルキーカップ」を発売する。生クリームを使った高級タイプのミルキーをアイスで再現。価格は税別160円。8月下旬まで全国…

元気に働く高齢者、大事なのは自己実現だ。

(日経「春秋」2014/6/8付) 「万般の機械考案の依頼に応ず」。東芝の源流になるこの小工場を興したのは技術者の田中久重。75歳での創業だった。若いころ、からくり人形作りに没頭した田中は、幕末に精巧な置き時計を発明して有名になる。佐賀藩に招かれて蒸…

学ぶ喜びを忘れていないか

(日経「春秋」2014/6/7付) ドキュメンタリー映画、良質でも地味で、おおむね客集めに苦労する。そんなイメージがあるが、いま異例のヒット、「世界の果ての通学路」。ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インドで長い道のりを通学する子供たちをフランスの監…

諫早湾干拓をめぐる政府と二つの裁判所の相反する判断

(日経「春秋」2014/6/6付) 「憚(はばか)りだねえ」。この憚り、いまは聞かないので辞書を引くと「憚りさま」を縮めたもので、世話になったとき使うちょっとした挨拶代わりの言葉とあった。それに比べ、時代劇や落語で耳にする「憚りながらお奉行さま」の…

人口減への危機感共有し少子化対策急げ

(日経「社説」2014/6/5付) 2013年の出生数は前年より約7千人少ない103万人弱にとどまり、過去最少を更新した。1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計である合計特殊出生率はわずかに上昇したが、1.43と依然、低水準だ。出生数と死亡数の差である自然増…

天安門事件を見直せない中国の危うさ

(日経「社説」2014/6/4付) 中国の民主化を訴えた学生たちを共産党政権が武力で制圧した天安門事件から、きょうで25周年だ。民主と自由を求める声は絶えないが、共産党政権は力で抑え込む姿勢をむしろ強めている。その後は事件に関する情報を厳しく統制し、…

「緊張してたら、太りませんッ」

(日経「春秋」2014/6/3付) 女優の故高峰秀子さんはまったく間食をしなかった。彼女の晩年に養女になった斎藤明美さんが、「太っちゃって」とぼやいて一喝された。「緊張してたら、太りませんッ」。高峰さんは45年前のウエディングドレスが着られたというが…

電話、かかってくるのも特別なことだった。

(日経「春秋」2014/6/2付) 黒電話の、あの重厚な存在感は侮れない。なぜか玄関に置く家庭が多かった。人間を威嚇するように、けたたましくベルが鳴った。姿を消したのは、昭和の後半だろうか。色が黒である理由は謎である。米AT&Tが開発した1号機から…

多すぎる情報、人々からじっくり考えるという営みを奪っている

(日経「春秋」2014/6/1付) 月刊誌「中央公論」の元編集長で評論家の粕谷一希さんが84歳で亡くなった。雑誌「東京人」や外交専門誌「外交フォーラム」の創刊編集長も務めた。「文明が成熟すると人々は都市に興味を持つようになる」と語っている。1977年から…