2012-01-01から1年間の記事一覧

大晦日の時間は大切に過ごしたい

(日経「春秋」2012/12/31付) 日ごろは矢のように過ぎ去る時間が大晦日(おおみそか)にはゆっくり流れる。うれしかったこと。悲しかったこと。日付が変わる瞬間に向かって一年の思いが凝縮する。ニューヨークのカウントダウンには世界中から百万人が集まる…

無駄な公共事業のバラマキにつながる気配が拭いがたく漂う

(日経「春秋」2012/12/30付) 「地球か……。何もかもみな懐かしい」。イスカンダル星との往復30万光年の旅から帰還してきた沖田十三艦長が感極まってつぶやく言葉だ。総選挙での自民党圧勝から2週間。年の瀬の慌ただしい首相指名に組閣、新大臣の記者会見な…

松井秀喜選手、浮かぶのは矜恃の一語

(日経「春秋」2012/12/29付) 「ピッチャーというのは、ノーマルな人間は大成しませんね」。長嶋茂雄さん「われわれ(打者)は逆に、ノーマルじゃないと仕事ができないんです。相手があって商売が始まりますから」。松井秀喜選手、その姿勢は引退を明かした…

国の予算が年を越すのは19年前の細川内閣以来

(日経「春秋」2012/12/28付) 「今年もお疲れさまでした」「あっという間の1年だったよね」。28日は多くの企業で「仕事納め」だ。官公庁で明日から1月3日まで休みと決まったのは明治6年の太政官布告までさかのぼる。現在の法律をみてもこの6日間は休み…

安倍自民の力結集し政治の安定を

(日経「社説」2012/12/27付) 自民党の安倍晋三総裁が5年ぶりに首相に返り咲き、第2次安倍内閣が船出した。今回の内閣を「危機突破内閣」と命名し、経済再生・デフレ脱却を最優先する考えを示している。安倍首相は組閣に先立つ党役員人事で、来年夏の参院…

方向性見えぬ海江田民主党

(日経「社説」2012/12/26付) 民主党が野田佳彦首相の後継代表に海江田万里元経済産業相を選出した。失った国民の信頼を取り戻せるのか。本人の弁の通り「解党的な出直し」をするしかない。海江田民主党の立ち上がりは不安を感じさせる。「与党が何を主張し…

制約社員を生かす多元的な人事制度を作れ

(日経「春秋」2012/12/25付) 「いま就活をする学生たちが本当に気の毒」。内田樹さんが、映画「七人の侍」を論じた中での発言だ。村を守ると約束した侍は腹心、参謀、剣の達人を集める。残り3人が変わっている。腕はもうひとつだが場を和ませ「苦しい時に…

サンタクロースは本当にいる

(日経「春秋」2012/12/24付) どんなに小さい嘘でも、なにか大事なものを守る善意の嘘でも、嘘をつくときには、人の心はチクリと痛むものだ。これほど平気で堂々とつける楽しい大嘘は、ほかにない。「サンタクロースは本当にいる」。「愛や寛容、献身が存在…

ばらまき排し経済成長促す補正予算を

(日経「社説」2012/12/23付) 26日に発足する安倍晋三政権が、来月中旬にも大型の経済対策を打ち出す。国費で10兆円規模の2012年度補正予算案を編成し、金融緩和の強化に動く日銀とともに景気を下支えする方針だ。だが不要不急の公共事業をばらまき、経済対…

何を反省すべきかがわからない民主党

(日経「社説」2012/12/22付) 民主党の体たらく。両院議員総会を22日に開いて新代表を選出するはずだった。ところが党内から「敗因の分析や反省もせずに代表は決められない」と異論が噴出した。問題はどちらにするかをなかなか決められず、決めた方針も変わ…

気になるのは日銀の独立性だ

(日経「春秋」2012/12/21付) 徳川時代、商業の中心地の日本橋と江戸城を結んでいたのが、外堀にかかった常磐橋だ。城側から橋を渡ったところに、幕府発行の金貨を製造する町人集団「金座」があった。幕府は差益、金座を運営する有力町人は鋳造の手数料を狙…

オバマ氏の涙では足りぬ

(日経「春秋」2012/12/20付) 不気味な駆け込み需要があったものだ。銃乱射で犯人が使った型の自動小銃が、事件のあとよく売れているという。この国には、生命に関わる問題なのに他の国と相いれない価値観がある。「規律ある民兵は自由な国家の安全にとって…

老いるインフラをどうするのか

(日経「春秋」2012/12/19付) ベテラン運転手でもひやりとした経験が一度ならずあるのではないか。東京の大動脈、首都高速道路である。ちょうど50年前のきょう19日、首都高の開通を翌日に控えて記念式典が開かれた。当日の本紙の記事をみると「夢のハイウエ…

衆院選の無効判決が出たことが一度だけある

(日経「春秋」2012/12/18付) 戦前の大審院で、衆院選の無効判決が出たことが一度だけある。1942年の「翼賛選挙」で政府や軍部による妨害を受けた非推薦候補の訴えにこたえ、その判決は下された。入念な検討を経たうえで、終戦の年の3月に下した判断が「之…

次回も名入れ作業は大ごとになりかねない

(日経「春秋」2012/12/17付) 東京の下町に「ぬしさ製作所」という漆器店がある。ここは、戦後の第2回国会以来、「氏名標」作りを一手に請け負っている。きのう当選した議員の名前も、間もなく書き入れる作業が始まる。前職の分はそのまま使えるので、新た…

1票の積み重ねが政治の潮流を生む

(日経「社説」2012/12/16付) 衆院選の投票日を迎えた。選挙戦の現場を歩いていて、誰に投票してよいかがわからないとの声を何度も聞いた。「岡目八目で、他人の打つ手は批評が出来(でき)るが、さて自分で打って見ると、傍で見て居た様には行かないものさ…

これまでのホームランも次の1本を保証してはくれない

(日経「春秋」2012/12/15付) 10日間ほど、毎日のようにノーベル賞受賞者、山中伸弥・京都大学教授のニュース。「予想外の結果にこそチャンスがある」とは科学の実験に限らないと。心境を問われて迷わず色紙に書いたという「初心」の一言である。「研究者を…

若い力と発想をどんどん生かしていきたい

(日経「春秋」2012/12/14付) ゴミを投げたら、落下地点までゴミ箱が自動的に移動し、すとんと受け止めてくれる。今月都内で開かれた素人工作の展示会で見た。センサーでゴミの動きを読み、底に駆動装置を付けたゴミ箱に指示を出す仕掛け。大手製造業の若手…

節義廉恥を失て、国を維持するの道決して有らず

(日経「春秋」2012/12/13付) 武士の遺訓ならまず「三本の矢」だろうか。時代が下るにつれ一武家を超えた公的性格を遺訓が持ってくるが、隣の国にはお家のことしか眼中にない遺訓がなおはびこっていた。きのうの北朝鮮の弾道ミサイル発射は「故金正日総書記…

クラシック音楽を使う貧困対策

(日経「春秋」2012/12/12付) ベネズエラのチャベス大統領が病に倒れた。独裁者か英雄か。これまで2度がんの手術を受けている。自ら完治宣言して4選を果たしたばかりだが、持ち前の強気で病魔に勝てるかどうか。突き抜けた個性は毒舌だけではない。貧しい…

「戦争ってものは、なっちゃってからでは止められません。」

(日経「春秋」2012/12/11付) 昭和30年代あたりの日本映画を見ていると、小沢昭一さんがやたら出てくる。脇役が多いけれど、作品をぴりりと引き締めて存在感抜群で、あとあとまで忘れられない。やがてラジオで「あしたはお父さんの小遣いについて考えるのコ…

大学は月給とりをこしらえて威張っている

(朝日「天声人語」2012年12月9日) 赤シャツといえば、漱石の小説「坊っちゃん」に出てくる嫌みな中学教頭だ。時は明治、学士様の値打ちは今と比べものにならないとはいっても、子規は〈孑孑(ぼうふら)の蚊になる頃や何学士〉と揶揄(やゆ)したような一…

正しく恐れ、行動する難しさを思う

(日経「春秋」2012/12/9付) おとといの夕方、東北と関東地方を襲ったマグニチュード7.3の地震も、東日本大震災の余震だという。あの日から1年9カ月近く。大地の暦では「引き続いて起こる」の範囲内なのか。このたびのものは「アウターライズ地震」に分類…

71年前のきょう、日本は対米開戦に踏み切った

(日経「春秋」2012/12/8付) 山岳遭難で多いのは「道迷い」だ。警察庁のまとめでは昨年の全国の山の事故のうち4割を占める。おしゃべりや景色に夢中で分岐点を見逃す。迷いはじめたときに引き返さず、ついもうちょっと、と進んでしまう。多くの登山家が指…

歴史に学ばなければ人は成熟しない

(日経「春秋」2012/12/7付) 自分が生まれる前に起きたことを知らないでいれば、ずっと子どものままだ――。共和政ローマ末期の政治家、キケロはそう書いた。キケロは、独裁に反対し共和制を守ろうとした。カエサルの暗殺は歴史に名高い。キケロも政敵に追わ…

教育改革を語るなら地に足つけた議論を

(日経「社説」2012/12/5付) いじめ問題から大学「秋入学」の是非まで、教育をめぐる議論は多岐にわたるだけに国民の関心の対象も実にさまざまだ。だから選挙となると、構えの大きい制度改革論と学校現場の身近な課題がない交ぜになって語られることになる…

いま直ちになすべきことがあろう

(日経「春秋」2012/12/5付) 1962年の日活映画「憎いあンちくしょう」はロードムービーの傑作といわれる。東京から九州の無医村へ、ジープを陸送する男とジャガーを駆ってそれを追う女。まだ高速道路はない。ひたすら一般道を走る旅だ。その年の暮れ、首都…

てんでんばらばらのまま、数合わせに浮足立つ

(日経「春秋」2012/12/4付) 「太陽」が消えて「維新」が残り、「生活」と「脱原発」が「未来」になった。1カ月余りの政界ドタバタ劇が終わり、衆院選がきょう公示される。師走に選挙があるのは現行の憲法下では5度目、直近では1983年の中曽根内閣以来、2…

やはり政策と人間力で魅了してほしい

(日経「春秋」2012/12/3付) 中国の新しいリーダーとして習近平さんが共産党のトップに立ったが、その直後から、というよりその前から、10年後に習さんの後を継ぐ候補の代表格として、中央の指導部の一角に49歳の若さで食い込んだ胡春華さんが挙げられるだ…

どことも違う一段上の日用品という道を日本車は切り開けるか

(日経「春秋」2012/12/2付) 男性のしぐさで、かっこいいと感じるものは何ですか。女性にこう尋ねると、定番の答えの一つが「車庫入れする姿」だそうだ。車庫入れでうっとりしてもらえるのも長くないかもしれない。運転席から振り向くと、背後の様子が地面…