（日経／春秋）辻説法を四半世紀、野田代表は地味なようで意外に弁が立つ。「金魚をまねても仕方がない」と泥臭さを際立たせてみせるあたりは、うまいものである。小泉総理へは「室伏選手はハンマー投げの金メダリストですが、小泉総理は丸投げの金メダリス…

（日経／春秋）「金もうけ確保省」を置くくらいでないと駄目だと松下幸之助は主張した。「経営の神様」は国家の経営を企業に見立てた。民主党新代表の野田佳彦は松下政経塾の第1期生だ。代表選での発言は物足りなかったが、これからはいかに。野田代表には「…

（日経／春秋）『1989年の因果』において保坂正康はサミットでの状況を描く。日本の首相の「好々爺然とした視線」に比べ他の6人の目には相手を射すくめる百戦錬磨の厳しさがあった。彼らは、時に自らの決断一つで戦いが始まり、自他ともに多くの命が消えるか…

（日経／春秋）スティーブ・ジョウブズが経営のトップの座を退く時、アップル社の株価は急落し、2兆円近くの時価総額が吹き飛んだ。「残念だがその日が来た」と辞任表明の手紙は、そっけないほど短かった。菅直人首相の辞任記者会見は長かった。次の首相に名…

（日経／春秋）首相の資格を城山三郎が中曽根康弘元首相に問うた。それに対して、責任感が強く、やる気があってギラギラしていないと。そして、大局をつかむ力と懐の深さであると。民主党代表選に出馬するという面々を眺めてみると、行儀よくギラギラしてい…

（日経／春秋）菅内閣発足時に「奇兵隊内閣と名付けて」と。高杉晋作の信奉者だったのであろう。高杉の名言に「人間、窮地に陥るのはよい。意外な方向に活路が見出せるからだ」という。それが「脱原発依存」発言だったのであろうか。「平成の開国」はあっさ…

（日経／社説）◆国債格下げが迫る財政再建の覚悟。◆汚染除去の見取り図が先だ。 （日経）ブラックホールに吸い込まれる星。ＪＡＸＡなど世界初の観測。 （日経）アップル「王国」転機。ジョブズＣＥＯ辞任。 （日経）肉牛出荷停止全て解除。福島・岩手・栃木…

（日経／春秋）何の気なく金魚に餌をやると、パクリと食べた。この小さな生き物に自分が必要とされているのだと知った。自分が意味ある存在に変わる瞬間だった。亡くなった竹脇無我さんは、うつ病から立ち直った自らの体験をそう語った。金魚に教わったのは…

（日経/春秋）里親・里子の習わしは平安時代からあったらしい。京都の公家が幼児期に子を近郊の農家で育ててもらったのが始まりで、それが一般に広がったという。わけあって親と離れた子に乳を与え、手塩にかけて育て上げる。そんな営みが繰り返されるはずだ…

（日経／春秋）向田邦子が台湾の飛行機事故で51歳の命を奪われて、きょうで30年になる。その作品には、どもページを繰っても、暮らしの場から辞書の中へと追いやられていった言葉が見つかる。その昭和臭さが古臭さとはまったく別のものだから、いまだに読ま…

（日経／春秋）「フードデザート」の撲滅に米政府が大手小売業と協力し取り組み始めた。食の砂漠、つまり野菜や果実を安く買える店が近所にない地域、全米で2500万人あり、改善しようというものだ。生活の質を上げ、新たな出店で地域の雇用を増す。私たちも…

（日経／春秋）最初は魔法使いのかわいい女の子を思い浮かべた。おととい福島第1原発で本格的な運転に入った東芝製造のサリー（SARRY）、シンプリファイドイド・アクティブ････なんとかなんとか、という長い英語の頭文字。6月から稼働している外国製の浄化装…

（日経／春秋）ガガーリンは、「月面着陸を抜けば米国に負けなかったのに」、「ゴルバチョフは間違った道を選んでしまった」と言ったとか。ソ連の保守派がクーデターを起こしてきょうで20年、1991年の3日間の天下は逆にソ連に民主化の嵐を巻き起こし、ソ連崩…

（日経／春秋）自宅庭の草木や野菜の株元に敷き詰めていた腐葉土をかき集めた。混ぜ込んでいた堆肥を掘り返した。放射性セシウム検出のためである。今年は緑のカーテン作りでゴーヤを育てようと買い求めた人も多いはず。農家の落胆が実感できるような気がす…

（日経／春秋）幕末、孝明天皇の妹和宮が将軍家に嫁いだ。公武合体のためである。大連立はこのようにはいかない。震災から5カ月余り、挙国一致という気持ちも分るが、国の基本政策をどうすり合わせるのだろう。幕末の公武合体は、その後、落ち着くどころか逆…

（日経／春秋）京都五山の送り火、かつては九も十もあり、その中に「い」の送り火があった。これはその年に家族を亡くした人が焚く習わしだったという。この送り火がなくなった理由ははっきりしていないが、もし続いていれば震災の犠牲者の供養にどれほどふ…

（日経）平和、不戦、誓い新たに。66回の終戦の日、被災地からも参列。 （日経）震源地海底に亀裂を発見。海洋機構。「しんかい6500」が撮影。

（日経・春秋）「災害ユートピア」が昨年末に日本語訳が出版され、3月出大震災で注目を集めている。ふだんは競争に明け暮れる人々も、パニックに陥らず、助け合い、食べ物を分けるなど「無数の利他的な行為」が見られたと。日本も例外でなく、人々が支え合っ…

（日経／春秋）金歯や胸元の金のネックレスをどう思うかは別として、地下金庫のような秘密の場所や薄暗い所で輝きを増すようである。その金の値上がりがすさまじい。ドルやユーロの不安、世界がどんより暗くなる中で、金が不気味な光を放ち始めている。日本…

（日経／春秋）ある生命保険会社の調査によると、夏の過ごし方として「帰省」をあげた人が今年は例年になく多いそうだ。お盆の里帰りはきょうとあすがピークである。東北とその周辺の料金所は、被災地支援の通行料無料のため数珠つなぎとなっている。東京に…

（日経／春秋）株式市場や円高、お盆休みなのに落ち着かない。火元は欧米の財政危機。大判振る舞いを重ねたあげくが借金の山。歳出減や増税といった不人気政策等を避ける政府への警告に違いない。そこに気づいて財政の大手術を始めた英国、若者たちの暴動が…

（日経／春秋）「温泉宿の廊下から･････山々を遠望していると、一種の自責と言っては大げさだが何かすべきよりよきことを怠っているといった感じをまぬがれない」。終戦の4年後、志賀高原に滞在していた仏文学者・桑原武夫が記したものだ。その後、彼は「そ…

（日経／春秋）きのう、コメの先物取引が東京と大阪で始まった。72年ぶりの復活である。日本のコメ先物取引は江戸時代半ば8代将軍の徳川吉宗の1730年に幕府認可で大阪堂島米会所が発足した。世界でも初めての商品先物市場だったとされている。200年以上続い…

（日経／春秋）就活、婚活、保活。新しい略語が次々に生まれる中で意味を直ぐに想像しにくいものの一つに朝活だ。ある生命保険会社が昨年秋、２０代と３０代の会社員男女に聞いたところ、４割が朝活実践中と答えたそうだ。最新版のレジャー白書によれば、余…

（日経／春秋）谷川俊太郎さんは、古いラジオの収集家。ラジオの魅力とは随筆集「ひとり暮らし」に「その過去の遺物に私たちがそれぞれに自分なりの物語を見いだしたいと思っているから」と。１９５５年のきょう、国産初のトランジスタラジオの発売日だ。ト…

（日経／春秋）「一、昨八月六日、広島市は敵Ｂ２９少数機の攻撃により相当の被害を生じたり。二、敵は右攻撃に新型爆弾を使用せるものの如きも詳細目下調査中なり」、大本営。徳川夢声の日記には「牛鍋の煮つまる如く、ありゃという間に終局となるは、今や…

（日経／春秋）133年も前の明治11年の今ごろ、岩崎弥太郎と渋沢栄一の「隅田川船中大論争」があった。「一緒に事業ができないか」と持ちかけた弥太郎は「会社の利益は社長の一身に帰し会社の損失は社長の一身に帰すべし」とうたう男。株式会社を信奉する栄一…

（日経／春秋）夏休みの宿題に手をつけずゲームばかりしている子に母親が問う。「いったい、いつになったらやめるの」。子は「一定のめどがついたらやめます」。「動きを注視していきます」と。震災の直後は、人々の言葉に重みがあった。また、5か月前のあの…

（日経／春秋）宮沢賢治がイーハトーブと名をつけた岩手の悠然とした山河は今も変わらない。都府県でトップの面積のそんな広大な土地だというのに、県南部の２市町で産した牛から暫定規制値を超す放射線セシウムが出ると、岩手県のすべての牛の出荷停止にな…

（日経／春秋）映画「アマデウス」の一場面、サリエリがモーツァルトの書き下ろしした楽譜を見て才能の差に愕然とする。「書き直した跡が一つもない！書く前に、すでに頭の中で曲が完成しているのだ」。同じような話がある。赤塚不二夫さん、猛スピードで仕…