2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

飛び続けたい思いが強すぎて青年は闇にのみ込まれた

飛び続けたい思いが強すぎて青年は闇にのみ込まれた (日経「春秋」2015/3/31付) 「世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば。」(山上憶良)あえて訳せば、この世はつらいところだけど飛び去ることはできない、鳥じゃないから。およそ…

攻め寄せる花の波。うかうかしてはいられない

攻め寄せる花の波。うかうかしてはいられない (日経「春秋」2015/3/30付) 赤瀬川原平さんの「お花見は戦争」、攻め寄せる花の波。うかうかしてはいられない。偵察を出す。陣地を構え、弁当や酒を手配し迎え撃つ。お花見は日本独特の民衆文化だという。群桜…

3月の末には気持ちが揺れ動く

3月の末には気持ちが揺れ動く (日経「春秋」2015/3/29付) 職場のスチール机の奥に鍵がある。何の鍵だろう。そういえば……。ずっと前に人から預かった記憶が、ふとよみがえる。異動で身辺を整理する時、引き出しの底から思い出がこぼれ出す。家のたんすの中…

判決に一喜一憂せず1票の格差是正急げ

判決に一喜一憂せず1票の格差是正急げ (日経「 社説」2015/3/28付) 1票の格差が最大2.13倍だった昨年12月の衆院選を巡る高裁判決の内容がばらついている。高裁を一審とする1票の格差訴訟17件のうち、27日までに14件の判決があり、「合憲」4件、「違憲…

Jリーグに続き、きょうセ・パ両リーグが開幕する

Jリーグに続き、きょうセ・パ両リーグが開幕する (朝日「天声人語」2015年3月27日(金)付) 野球ファンは「サッカーはなかなか点が入らない」とぼやき、サッカーファンは「野球の試合は間延びしている」などと不平を言う。二つの球技の違いをあれこれ思い…

地方議員をどう選ぶか

地方議員をどう選ぶか (朝日新聞「天声人語」2015年3月26日) 千葉県流山市議の松野豊さんは驚いた。定例会最終日、演壇の議会運営委員長が突然、松野さんの名を挙げて「改革を長年にわたり牽引(けんいん)し……」と発言した。「議会改革に明け暮れた16年…

「前線」、性質の異なるものがぶつかり合う場所のこと

「前線」、性質の異なるものがぶつかり合う場所のこと (日経「春秋」2015/3/25付) 沖縄県からスタートし、おととい東京に到達した桜の開花前線は、いまごろどのあたりを移動中だろうか。忌まわしい話だが、「前線」という言葉は国際テロの世界でも使われる…

トップ選びの難しさ

トップ選びの難しさ (朝日「天声人語」3月24日) 「おもろい会社である」。1977年1月、山下俊彦氏が松下幸之助氏の代わって松下電器産業を担うことになった。たたき上げの技術者で、取締役26人中、序列25番目だったから、「山下跳び」といわれた。…

野球ひじ 少年期の予防が重要だ

野球ひじ 少年期の予防が重要だ (毎日「社説」2015年03月23日) ダルビッシュ有投手(28)がマウンドで躍動する姿を今季は見られなくなった。精密検査で異常が見つかった右肘靱帯(じんたい)の修復手術を受けたためだ。先発投手は「中4日」が主流の大リ…

無着成恭さんや永六輔さんらによる名回答に珍回答

無着成恭さんや永六輔さんらによる名回答に珍回答 (日経「春秋」2015/3/22付) ダイヤル、ダイヤル、まわして――。TBSラジオ「全国こども電話相談室」、半世紀以上放送されてきた長寿番組が、今月で幕を下ろすことになった。無邪気だったり、哲学的だった…

いつのまにか匂いに鈍感になってはいないだろうか

いつのまにか匂いに鈍感になってはいないだろうか (日経「春秋」2015/3/21付) 「沈丁の香の石階に佇(たたず)みぬ」(高浜虚子)。強く鮮やかな香気が鼻先から頭の上に抜けると、春の息吹が体にしみ込むようだ。久世光彦さんは、ときどき自分が誰か分から…

なぜ、イスラム国に若者が蝟集するのか

なぜ、イスラム国に若者が蝟集するのか (日経「春秋」2015/3/20付) 3分の1は獣。3分の1は機械。3分の1は堕天使。獣で機械で悪魔、それが人間なのだ(仏文学者の渡辺一夫)。人間は、恐ろしい本性を克服する努力を諦めないこと。狂気、不寛容、暴力の…

勝利なのに、主役のはずの労組は影が薄い

勝利なのに、主役のはずの労組は影が薄い (日経「春秋」2015/3/19付) 労使交渉の結果が電話で入ってくるのを待ちながら、金属労協の職員はみんなタバコを吸っていた。1980年代の春闘一斉回答日の、そんな光景を思い出す。いまよりずっと組合の組織率は高く…

平和と安定を考え抜く政治家が見当たらない

平和と安定を考え抜く政治家が見当たらない (日経「春秋」2015/3/18付) 「愛というのは、その人の過ちや自分との意見の対立を許してあげられること」と、ナイチンゲール。また、「私は地獄を見た。私は決してクリミアを忘れない」と。泣き、叫び、看護師に…

「便利だから」(クリントン氏)では理由にならな

「便利だから」(クリントン氏)では理由にならない (日経「春秋」2015/3/17付) 首相と官房長官が「驚くべき取引」をした。1945年夏、チャーチルは、第2次大戦中の働きに対しなんの報酬も名誉も要らぬと言った。代わりに求めて手に入れたのが戦時中の膨大…

歩道を行くときには、ときどき上を見て、注意する

歩道を行くときには、ときどき上を見て、注意する (日経「春秋」2015/3/16付) 大昔の中国、杞(き)の国に心配性の男がいた。天が落ちてきたらどうしよう。考えると眠れない。食事ものどを通らない。「杞憂(きゆう)」はこの話からきたが、最近の天変地異…

BOSAIはやがて世界共通の言葉として定着?

BOSAIはやがて世界共通の言葉として定着? (日経「春秋」2015/3/15付) カラオケ、碁、悟り、禅、盆栽、萌(も)え……。日本語の発音がそのままで英語として定着している言葉は少なくない。碁や禅は漢語だったが、日本が世界に広がる起点になったために…

華やかなブームのかげで、在来線は第三セクター化

華やかなブームのかげで、在来線は第三セクター化 (日経「春秋」2015/3/14付) 「窓硝子にアイスクリームのやうな灯(ひ)が映つて/青海(あをみ)といふ駅/しらしらと夜明のうすあかりの中に/日本海は荒れてゐる」(田中冬二「日本海」)。旅に出たくな…

若い芽を伸ばすには、夢見る雰囲気、磨き合う環境を

若い芽を伸ばすには、夢見る雰囲気、磨き合う環境を (日経「春秋」2015/3/13付) 週刊誌が東大合格者数の高校別順位を載せる季節になった。今年も中高一貫の私立勢が上位を固めている。公立高では都立日比谷などが目立つ程度だ。この番付で首位だったころの…

いかに抗っても抗いきれぬものをやり過ごす知恵を

いかに抗っても抗いきれぬものをやり過ごす知恵を (日経「春秋」2015/3/12付) 沖縄には「チュラカサ」という言葉があるそうだ。漢字だと「美瘡」、つまり疱瘡をあえて美称で呼ぶのである。人を苦しめる天然痘と対決するのでなく上手に敬遠し、身をかわし、…

なぜあの大事故の後も原発を持ち続けようとするのか

なぜあの大事故の後も原発を持ち続けようとするのか (日経「春秋」2015/3/11付) あと1日、東日本大震災から4年というきょうまで日本にとどまっていたら、と残念に思う。1泊2日で慌ただしく終え、10日に離日したドイツのメルケル首相である。きょうなに…

「皆さん肩までお湯につかると、必ず笑顔になります」

「皆さん肩までお湯につかると、必ず笑顔になります」 (日経「春秋」2015/3/10付) 波打つ日本海を背景に走る新幹線。その向こうには、雪をいただいた立山連峰がそびえ立つ。こんな「風景」を眺められる場所が東京都内にある。そのためには服を脱いで裸にな…

卒業式が全国で相次ぎ中止になったことがこれまで何度かあった

卒業式が全国で相次ぎ中止になったことがこれまで何度かあった (日経「春秋」2015/3/9付) 「一人歩きを始める/今日は君の卒業式」。さだまさしさんの歌、恋の終わりを描いた作品だと。どうしようもない一つの区切りであり、悲しいような、弾むような響き…

何が患者連続死を招いたか

何が患者連続死を招いたか (日経「社説」2015/3/8付) 群馬大学病院で先進的な手法によって肝臓の切除手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していたことが明らかになった。驚くべきは、この医師は従来型の開腹手術でも複数の死亡事故を起こしていたことだ…

法や制度が変わっても人間はたやすく変わらない

法や制度が変わっても人間はたやすく変わらない (日経「春秋」2015/3/7付) 「血の日曜日事件」と聞けば「1905年。ロシア・ペテルブルクの冬宮広場。」しかし、世界にはもう一つ、大切な「血の日曜日事件」があった。その日からきょうで50年になる。「セル…

「爆買い」、日本だって同じような道をたどってきた

「爆買い」、日本だって同じような道をたどってきた (日経「春秋」2015/3/6付) バブル景気まっただ中のころ。出張の折にたまたま立ち寄ったパリ市内の高級ブランド店で、日本の国会議員が色とりどりのスカーフがずらりと並んだ売り場で両手を広げ、「え〜…

武蔵発見の報に接して胸をよぎる、歴史の痛苦である

武蔵発見の報に接して胸をよぎる、歴史の痛苦である (日経「春秋」2015/3/5付) 捷(しょう)一号作戦――。昭和19年7月、日本海軍はフィリピンに迫る米軍を迎え撃つ覚悟を決めた。しかし3カ月後、レイテ島沖での実戦は戦艦3隻、空母4隻を失う大敗に終わ…

晴れた日には、広い世の中を遠く見渡したい

晴れた日には、広い世の中を遠く見渡したい (日経「春秋」2015/3/4付) 窓のない世界は想像もできない。リルケの詩がある。「窓よ、われわれの大きな人生を雑作もなく区限(くぎ)つてゐる。いとも簡単な図形」(堀辰雄訳)。ひとは、多様な図形から世界を…

法務省はようやく全編現代語に改める方針という

法務省はようやく全編現代語に改める方針という (日経「春秋」2015/3/3付) 「人ヲ欺罔(ぎもう)シテ財物ヲ騙取(へんしゅ)シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス」。なんだこりゃ? 古くは明治時代に誕生した多くの法律の文語体カタカナ書きは、現代語化に手間…

韓国も先日、憲法裁判所が「刑法の姦通罪は違憲」との判断

韓国も先日、憲法裁判所が「刑法の姦通罪は違憲」との判断 (日経「春秋」2015/3/2付) 「姉から、来てほしいと言ってきて」と偽って家を出た若妻、一度は心とがめて引き返しかけるのだが、「もう悪人でも構わない」と決めてしまえばあとは急ぎ足で……。24歳…