2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「お家騒動」、争いが続くと悲劇を招く

「お家騒動」、争いが続くと悲劇を招く (日経「春秋」2015/2/28付) 「リア王」は辛口のホームドラマでもある。「お前なぞ生まれてこぬほうがよかった」。激怒した王は誠実な三女を追放する。その陰で長女は父のむら気を嘆き、次女と反乱を企てる。大塚家具…

やってはならないことを自身が考え、胸に刻むこと

やってはならないことを自身が考え、胸に刻むこと (日経「春秋」2015/2/27付) どこかから指令が出ているようでもないのに、一匹一匹が整然と泳ぐ。そろって一気に方向転換もする。そんな魚の群れは会社の組織の理想的な姿であると、元花王社長の常盤文克氏…

まるで機械じかけのような桜の集団行動

まるで機械じかけのような桜の集団行動 (日経「春秋」2015/2/26付) 梅かと思い歩み寄ると、桜だった。寒空の下で、色もあざやかに開き始めている。早咲きで知られる「河津桜」である。全国に何万本あるだろう。60年前にはたったの1本だった。原木が伊豆の…

「あの上司 記憶の容量 フロッピー」

「あの上司 記憶の容量 フロッピー」 (日経「春秋」2015/2/25付) デパートでちょっと値の張る品を買い、クレジットカードを差し出したが、サインではなく、暗証番号の入力を求められたのだ。売り場の女性は笑ってサインに切り替えてくれたけれど、どうにも…

ヤジという品のない行為で「にやにや」と安倍首相

ヤジという品のない行為で「にやにや」と安倍首相 (日経「春秋」2015/2/24付) オノマトペ、日本語はこれが豊かだ。学術論文や公文書にはなじまないけれど、日本語の魅力の一つだ。先週の19日に安倍晋三首相が見せた笑顔は、どう表したらいいだろう。「日教…

異なる文化同士の接触や交流は人々を幸せにしていくものでありたい

異なる文化同士の接触や交流は人々を幸せにしていくものでありたい (日経「春秋」2015/2/23付) 長い棒の先にスマートフォンや小型カメラを取り付け、自分たちの姿をパチリと撮影。そんな「自撮り」のブーム。自撮りのための棒である「自撮り棒」は1980年代…

「心をこめて見るべきもの」はあの戦争だ

「心をこめて見るべきもの」はあの戦争だ (日経「春秋」2015/2/22付) 「平家物語」には、名場面がたくさんある。壇ノ浦の戦いで、「波の下にも都がございます」。幼い安徳帝も、こうなだめる祖母。「見るべき程の事は見つ」と平知盛が言うのはこのときだ。…

「水戸納豆」、フランスへ売り込んだ

「水戸納豆」、フランスへ売り込んだ (日経「天声人語」2015年2月21日) 落語家の五代目古今亭志ん生は一時期、寄席から締め出されて納豆売りをした。しかし、売れなかった。「納豆ぉ〜」という呼び声が恥ずかしくて出せなかったからである。仕方なく売れ残…

夫婦別姓問題を直視したい 

夫婦別姓問題を直視したい (日経「社説」2015/2/20付) 夫婦別姓を認めない民法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた訴訟について、最高裁は大法廷で審理することを決めた。社会全体で改めて正面から向き合い、考えていく必要がある。民法は結婚の際、…

春節、中国では行先として日本はなかなか人気

(日経「春秋」2015/2/19付) おととい、京都市東山区にある高台寺の敷地内で火事があった。物置が焼けただけで貴重な文化財に被害がなかったのは、不幸中の幸いか。かつては今より広大な敷地を擁していたらしい。ここが昨年末、中国のネット空間で話題にな…

米連邦最高裁は6月までに同性婚そのものの是非に決着をつける

(日経「春秋」2015/2/18付) 結婚を男女間のものと規定している法律は違憲だ――。米国の連邦最高裁がこんな判断を下し、同性カップルの権利拡大に道を開いたのは一昨年の6月だった。画期的な話だが、こういう動きに日本人の多くはまだピンとこない。でも、…

サルですら紛争回避の知恵がある

(日経「春秋」2015/2/17付) こんにちは。ありがとう。意識せずとも頭は下がる。おじぎのしぐさは日本人の身に染み込んでいる。しっかり目を合わせて握手するつもりが、視線が外れて戸惑う欧米人も少なくない。京大の研究者がニホンザルの独特な挨拶の文化…

金沢には「目に見えない魔力のようなもの」が宿っている

(日経「春秋」2015/2/16付) ある老舗で寄せ鍋をつつき、丸谷才一さんは驚嘆した。「食通知つたかぶり」に登場するその土地は金沢、白菜や糸こんにゃくまで作家にたたえてもらえる町は、そうあるものではない。泉鏡花や室生犀星、吉田健一と名だたる文人が…

種の存続を懸けた闘いは終わらない

(日経「春秋」2015/2/15付) ガラパゴスといえば進化論で知られた島々だがご存じの通り、最近では「国内で独自に進化し、国際市場で通用しない製品や技術」の意味でやや侮蔑的に使われることが多い。その代表例の携帯電話「ガラケー」の出荷台数が、7年ぶ…

ウクライナの停戦、16時間かけて得られた「かすかな希望」

(日経「春秋」2015/2/14付) 戦争を回避する最後のチャンスはいつだったか。平和を維持しようという願いや決意が戦争容認に変わるのはいつなのか。その要因はなんなのか。これは過去を検証する学者にとっては事実や論理の問題だが、現実に直面する政治家に…

名字、江戸時代まで約1万種が、10万種ほどへと多様化

(日経「春秋」2015/2/13付) 今後は必ず名字をなのらなければならない――。こんな命令を明治政府が出したのは、140年前のきょうのことだった。その5年前、武士でなくても名字をなのってよい、とする政令を政府は出していた。維新に際してかかげた四民平等と…

日本から消えつつある喫茶店文化が海の向こうで進化した

(日経「春秋」2015/2/12付) 運河が縦横に走る東京の下町、深川近くの一角に若者たちが押し寄せている。米国で人気のコーヒー店が先週、日本1号店を開店したためだ。古い倉庫を改造した店内は工場を兼ねる。焙煎(ばいせん)したての豆を使い、1杯ずつ手…

今年はいつまでも寒い。わが精神も寒い。日本も寒い

(日経「春秋」2015/2/11付) 「限りなく降る雪何をもたらすや」(西東三鬼)。敗戦の年の2月もよく降った。「今年はいつまでも寒い。わが精神も寒い。日本も寒い」。作家・高見順は日記に書いた。人と人が、国と国とが信じ合い許し合う日はいつくるのか、…

高校の2人の生徒が考えた寄付の「見える化」

(日経「春秋」2015/2/10付) お金を出すのはいいけれど、何に使われるのか詳しく知りたい――。そんな要望に対し、愛知県立五条高校の2人の生徒が考えた。寄付の「見える化」だ。スーパーや書店などに、お金を収納して、いつ、いくら入ったかも記録する「募…

芝生の上の八百長は想像以上にはびこっている

(日経「春秋」2015/2/8付) 女優の奈良岡朋子さん、「一番刺激を受けて、嫌な思いをしないで済むのはアスリート(運動選手)の世界ですね」と語っている。スポーツには台本がなく、勝つために鍛えて鍛えてなお「負け」という残酷な結果を突きつけられること…

安全を押しのけるように「経済」がぬっと前に出て

(朝日「天声人語」2015年2月8日) 長崎で被爆した歌人の竹山広さんから、記憶の風化を静かに憤る一首をお借りしたい。「孫よわが幼きものよこの国の喉元(のどもと)は熱きものを忘れき」。竹山さんの歌が、「ノクターン―夜想曲」という舞台劇を見るうちに…

142年前の今日、「復讐を厳禁す」という太政官布告

(日経「春秋」2015/2/7付) さるかに合戦は、かたき討ちの物語である。かたき討ちを終えて、その後は平和に暮らした、かと思いきや。芥川龍之介が短編で書いている。主犯の蟹は警察に捕まり、裁判の末に死刑。臼や蜂ら共犯も無期徒刑を宣告される。昔は、父…

年寄りにやさしい仕組みこそが、すべての人にやさしい仕組み

(日経「春秋」2015/2/6付) 高速道路でおじいさんが車を走らせている。するとカーラジオから「高速を逆方向へ走っている車が1台あります。気をつけてください」とお知らせが流れてきた。周りを見渡して、おじいさんが驚く。「なんや1台どころじゃないで。…

その仕掛けに乗るべきではない

(日経「春秋」2015/2/5付) 悪逆無道。鬼畜の所業。かの「イスラム国」が、拘束していたヨルダン人パイロット殺害の一部始終をインターネット上で公開した。こんどはあろうことか、焼殺である。心に憎悪と恐怖を募らせ、世界を報復の連鎖に引きずり込むプロ…

死ぬために生れてきたのではない。生きるために生れてきたのだ

(日経「春秋」2015/2/4付) 「ほめたたえるために生れてきたのだ。ののしるために生れてきたのではない。否定するために生れてきたのではない。肯定するために生れてきたのだ」――。「冬に」と題した谷川俊太郎さんの詩。静寂が包む雪の日、何のために生きて…

日本でも敵意や憎悪のほむらが勢いをましていないか

(日経「春秋」2015/2/3付) 「若い人たちにお願いしたい。他の人びとに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい」。先月31日に死去したワイツゼッカー元ドイツ大統領の演説にこうあった。1985年、戦後40年に際した「荒れ野の四十…

命の尊さと平和を忘れぬ誓いを胸に、ひたすら手を合わせる

(日経「春秋」2015/2/2付) 後藤健二さんは、ちょうど1年ほど前にもシリアで身柄を拘束されたことがある。数日後に「出てきました」と元気なメールが届いた。死への恐怖と報道への情熱。行く者の誇りと、行かない者の安堵。そして負い目。フリー記者と組織…

突拍子もない事件に驚き、前のめりの議論を進めるのは禁物

(日経「春秋」2015/2/1付) 「少年事件が増えている」「しかも凶悪化するばかり」「昔はなかった残忍な犯行だ」。テレビのワイドショーやネット空間にはこういう声がほとばしる。名古屋大の女子学生が知人女性を殺した疑いで逮捕された事件をめぐっても、目…