資本主義と格差をめぐる問題の議論は尽きない

(日経「春秋」2014/12/24付) 「何がクリスマスおめでとうだ!」、「何の権利があってお前がめでたがるのかってことよ。貧乏人のくせに」。「クリスマス・キャロル」に登場する、強欲を絵に描いたような商人スクルージの悪たれ口。そんな老人だが、幼いころの自分、クリスマスを祝う貧しい人々の助け合い、それを冷笑してきた自らの末路……。子ども時代にこの小説を読み、スクルージが改心する場面に胸がいっぱいになった人は少なくないだろう。ディケンズがこれを書いたのは1843年、産業革命期だ。当時の英国社会の格差の広がりが背景にあるといわれる。以後170年余を経たが、資本主義と格差をめぐる問題は現代人を悩ませて議論が尽きない。トマ・ピケティ氏の大著「21世紀の資本」が世界的なブームになっているのも。さて「クリスマス・キャロル」では、かの老人は心を入れかえ雇い人の給料を上げる。そんな物語を思いつつ、刺激的な「21世紀――」のページをめくってみる。
(JN) 資本は常に進化してきた。それを我々は後追いし、追いつかない。人の欲望を資本は見事にコントロールし、量的拡大を続ける。マルクスさえ、共産主義を夢見ながら、資本主義の力に魅了され、その力強さを資本論に著した。人の心を資本から取り返すには、どうすれば良いのか。我々の価値観が、資本に支配されている限り、改心することはないだろう。「巨大な商品のかたまり」から我々は、脱出することができるのか。せめて、一時逃れをするために、今日は家族とともに、ケーキを食べ、皆の幸せを考えよう。八百万の神々を信ずる日本人だから、今日はイエスを崇めることもできよう。それにしても、ピケティ氏の大著は、分厚くてなかなか読む気にならないが、とにかく、年内には読み始めてよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO81247310U4A221C1MM8000/