今宵も欲望と熱気が渦を巻く新宿

(日経「春秋」2015/1/13付) ハードボイルド小説に一番しっくりくる街は、やはり新宿だろうか。「新宿鮫」、物語の中の新宿では今宵(こよい)も欲望と熱気が渦を巻く。暴力団と外国マフィアがにらみ合い、銃声が響く。かくして街は眠らない。こんな新宿のイメージを象徴するのが歌舞伎町だった。ここでなら新宿鮫の主人公とすれ違っておかしくないような時期が、確かにあった。官民をあげた浄化作戦が10年続いて、いまの街の表情はずいぶん穏やかだ。だが映画の街でもあった歌舞伎町としては、寂しい話題が続いている。古くからの歌舞伎町の映画館は相次いで閉館に追い込まれた。最後まで踏ん張っていた新宿ミラノ座も昨年暮れ、ついに看板を下ろした街は今度はどんな顔を見せてくれるのだろう。猥雑(わいざつ)さが懐かしくもあるけれど、スリル満点の街は新宿鮫に任せよう。
(JN) 世間から怪しげな街並みが消えて行く。我が府中も、嘗ては、駅の南口は怪しげな通りがあり、魅惑に満ちていたが、都市再開発で姿を変えてゆく。我が青春の新宿も、あの歌舞伎町は、怪しげなところはもちろんでが、映画街であり、ディスコがあったり、焼肉屋がったり、バッティングセンターなど、思い出のところである。デートにも、男同士の場としても、環境が揃っていた。ミラノ座や名画座で、何本見ただろうか。若者の街でもあったが、やはり夜が書き入れ時であったろう。きれいなお姉(お兄)さんやぼったくりの客引きがうようよしていたあの魅惑に満ちた活気ある町並が歌舞伎町であった。もう、めったに行かなくなったが、どのように変わって行くのか。さらばミラノ座。
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