人に媚びない。それはいまも、求められるリーダー像だ

(日経「春秋」2015/1/27付) アテネは、スパルタとのペロポネソス戦争のさなか、疫病に襲われた。農地も荒れて、戦争続行への不満が広がり始める。そのとき指導者ペリクレスは民会で市民に呼びかけた。「諸君の義務は、現在耐えるべからざるを耐え忍べば、すなわちこれ青史に残る栄光たるべしと先見の明をひらき、ふたたび勇猛心をあらたにして、現在と未来をかちとることだ」と。「民衆の意向に従うよりもおのれの指針をもって民衆を導くことをつねとした」。人に媚(こ)びない。それはいまも、求められるリーダー像だ。ギリシャの議会選で、反緊縮財政を掲げる最大野党の急進左派連合が勝利した。民意に迎合しすぎて財政再建路線が空中分解しないよう願う。チプラス党首は低所得者への電力の無料供給など、バラマキともいえる選挙公約で有権者の支持を伸ばした。緊縮財政が国民生活に及ぼす影響を和らげる必要はあるとしても、行き過ぎてギリシャ危機が再燃すれば困るのは国民自身だ。嫌がられることでも言う勇気と見識が指導者にあるか。この国の歴史は格好の教材だ。
(JN) 一般大衆は、目先のことで必至であり、将来など展望できない。それを導くのが指導者たちである。ある方向性を見出し、一般大衆に希望を持たせ、また我慢をも附して、その方向に進む。片や、そうでないものもある。様々な人たちの要望を聞き入れていて、自分たちの政権を維持しようとする者たちである。しかし、それでは、国を維持することはできない。でも、能力のないものは、一般大衆のご機嫌をとらねばならないのが常である。でも結局、方針で約束しても、実現できない。そこでまた、次の勢力が夢を約束しても、その政権も約束を果たせない。民主主義は、まとまらない国家であったり、しかし、間違いを起こすと、とんでもない独裁者の政権を生むこともある。民主主義とは最も愚かで難しい。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO82424760X20C15A1MM8000/