入念な制度設計で「到達度テスト」に道開け

(日経「社説」2013/6/9付) 大学入試の改革は教育改革の本丸である。日経は、1979年の共通1次試験導入以降続く「一発勝負型」入試体制を改めるべきだと主張してきた。受験生が複数回挑戦できるテストを新たに設け、そのうえで各大学が工夫を凝らした選抜を行うのが望ましいという提案である。こんど文部科学省などが検討を始めた「到達度テスト」は、これと同じ方向性を持つものだ。入試制度の歴史は試行錯誤の連続である。共通1次が始まったのも、それまでの個別入試の弊害が大きかったからだ。その理念は大学入試センター試験に受け継がれたが、ねらいとは逆に1点刻みで受験生をふるい落とす手段となっている。センター試験は一部科目だけの利用もできるため多くの大学に広がったが、十分な学力を問わない「お手軽入試」に使われることもある。センター試験の廃止と「到達度テスト」新設は、こうした問題を解決するカギになり得る。加えて、この入試改革は各大学の2次試験の抜本的見直しとセットで考えなければならない。私立大も含めて各大学が手間ひまかけた試験を行ってこそ、多様な才能を持つ人材を選び抜くことができるはずだ。教育界全体が問題意識をもって今後の動きに対応し、構想実現への道を開いてもらいたい。
(JN) 一発試験で何が図れるのか。大学は今の入試のような勢力の使い方ではない方法を考えて行きたい。数回のチャンスのある統一テストにより、受験生側は一発悲劇が少なくなり、大学側は学力の適切な基準を得られる。しかし、現在は弱小大学等は自校のポリシーよりも学生の量の確保に目が行き、A・C・Dポリシーによる選抜と教育研究が疎かである。そんな状況では、センター入試がどう変化しようと大学改革に至らない。どんな生徒を選抜し、学生をどう育て、どんな卒業生を輩出するのか、これから大学が生きて行くための礎である。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56005010Z00C13A6PE8000/