見せたかったのはチームの力

(日経「春秋」2013/6/15付) 今はJFEスチール、川崎製鉄の千葉製鉄所といえば、高度成長への道を開いたところだ。「業界秩序を乱す」との批判にひるまず建設したこの最新鋭工場の成功で鉄鋼業界は投資競争に入る。川鉄の初代社長、西山弥太郎氏の決断のたまものといわれる千葉製鉄所だが、社内一丸になっての周到な準備があった。意見の応酬がチームワークを生んだ。千葉製鉄所第1高炉の火入れは1953年6月17日。稼働から還暦を迎える。この節目に、三井造船との経営統合交渉をめぐり経営陣が対立し、推進派とされる社長が解任された。統合の是非が真剣に議論されてこなかったらしい。西山氏は千葉製鉄所を、松下幸之助氏には新しい鉄板の見本を持って、「松下さん、この製品にはこういう特色があるんだ」と売り込んだ。見せたかったのは最新鋭設備や新製品に詰まった会社というチームの力だったろう。
(JN) チームの力、これが日本にはかけているのではないかとよく言われる。組織の力が日本の力であったろうに、どうなったのか。変に西洋風の合理主義が蔓延ったりしていないか。トップの判断による速やかな決定を要求されているが、履き違えているのではなかろうか。組織を掌っているのは人の心である。そこの文化である。人は私利私欲だけの合理主義では動かない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56232900V10C13A6MM8000/