ニッポンの日常食にしびれる、「英国一家、日本を食べる」

(日経「春秋」2013/6/23付) ソース焼きそば、鉄板で盛大に炒めて青のりと紅ショウガたっぷりの、あれが、ある英国人の家族は東京・新宿のガード下でその一皿に出合い、ニッポンの日常食にしびれる。列島を北へ南へ、A級B級なんにでも挑みつづけた親子4人のグルメ紀行「英国一家、日本を食べる」(マイケル・ブース著、寺西のぶ子訳)は、われらが食のたくましさを浮かび上がらせて痛快だ。政府のクールジャパン推進会議がまとめた行動計画に、「正統な日本料理」の料理人などを「食の伝道師」として海外に派遣する事業が盛り込まれた。成長戦略として和食を世界に売り込みたい気持ちはわかるが、「正統」とか「伝道師」とか大仰なことである。この路線だとソース焼きそばなど相手にされないのだろう。食の世界は変幻自在。和洋中にエスニックまでまぜこぜの、なじみの居酒屋メニューだって「正統」からは遠くともいまの日本の味だ。政府の伝道師にはたしなめられるかもしれないが、うまいんだから仕方がない。
(JN) 食べ物、その素材についての思いには地域に差はあろうが、味は人類共通、美味い物はうまい。格式ばっているところではないのであろう。東京には世界各地の料理が美味しく食べられ、そこへ行くよりおいしものが食べられるとも言われるが、やはりそこでというものもあろう。それが「正統」なのか。そんなことを頭の中で考えるより、食べに行こう。その前に、マイケル・ブース氏の著書を拝見しようか。図書館で順番待ちはあと2人だ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56531340T20C13A6MM8000/