8月から運用を始める「特別警報」

(日経「春秋」2013/6/12付) 「特別」なる言葉には力がある。特別捜査部特別会計、特別委員会、特別急行……。この2文字が付けば一般とは違うはずだと存在感が強まり、オーラを放つことだってある。近ごろ気になる特別は気象庁が8月から運用を始める「特別警報」である。従来の注意報、警報の上に位置し、大雨や暴風は「数十年に1回程度の強さ」の場合に出すという。特別警報が出たら、市町村は住民に周知する義務を負うことになった。NHKも同じ役割を担うが、さて私たちはどうする。「身を守るために最善を尽くしてください」「直ちに命を守る行動をとってください」。気象庁はこんな強い表現で呼びかけるという。「特別」が悩ましいのは、このクラスを設けるとその下がかすみがちなことだ。JRからはただの急行が消えてほとんど特急となった。まだ特別警報じゃないから大丈夫――よもや、そんな気を起こしてはいけない。6月というのに、台風が列島をうかがっている。
(JN) 「特別」はインフレを齎すのであろうか。一度使うと、それが標準になり、更なる形容詞をつけて行くしかないのか。人とは順位が好きなのか。また人より上と優越感を求めるのか。だから、中身に変わりがなくとも、形容詞で騙されてしまう。買い物はそれでもよいが、警報にはそれなりに考えねばならないであろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56106670S3A610C1MM8000/