こころをば、なににたとへん。こころはあぢさゐの花。

(日経「春秋」2013/6/11付) ミュージカル、万華鏡、ピーターパン、剣の舞、花吹雪、隅田の花火……。アジサイは、品種改良のたびに新しい名前がつく。クルクル回ったり、四方八方に飛び散ったり。この花の名所が多い鎌倉では「国際アジサイ会議」が開かれ、海外から多くの来客が訪れている。移ろいやすい世相が、どこか人々の心に作用しているのかもしれない。微妙に色が変わるアジサイの人気は、日本だけでなく欧米でも高まっているという。そんな移り気なアジサイの花にも似て、株価や長期金利が乱高下している。目の前で何かが刻々と変化するとき、人は落ち着かない気持ちになることがある。生命力を感じて、元気づけられることもある。「こころをば、なににたとへん。こころはあぢさゐの花。ももいろに咲く日はあれど、うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて」(萩原朔太郎)。湿った空気に、つい感傷的になりがちな季節である。だが、ここはアジサイの勢いに負けぬよう、前を向いて進みたい。激しい動きの夏が始まる。
(JN) 梅雨に入ったが、晴れた日もあるこの昨今、変化が激しい。体も心も対応が大変な中、金融市場の変化に、懐も対応しなければならないのか。このジトジトの時期、人の心は重くなり、それが良からぬ行為に動くこともある。人は、アジサイのように美しく散ってはならなず、この気候の重さを感じつつ、激しい夏を迎える。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56063790R10C13A6MM8000/