NPB、昨今はひそかに猛打の増産も企てるらしい

(日経「春秋」2013/6/13付) 7年前に亡くなった清岡卓行さんは戦後の一時期、日本野球連盟に勤めていた。日本野球機構(NPB)の前身である。「アカシヤの大連」の芥川賞作家らしからぬ経歴だ。清岡さんの仕事でいまも受け継がれているのが、1試合に3安打以上放った選手に贈る「猛打賞」創設だ。復活したプロ野球の人気を高めようと、球界あげてアイデアを競った時代である。そんな歴史を持つNPBだが、昨今はひそかに猛打の増産も企てるらしい。NPBがおととし導入した統一球は、たしかに飛ばなすぎた。ホームランが減って退屈だという声が噴き出していた。だから「飛ぶボール」へと調整したのはわかる。けれど、どうしてシーズン前に公表しなかったのか。加藤良三コミッショナーは昨夜の釈明では「変更を知らなかった」そうだ。かつての連盟の仕事を、清岡さんは「最も好きなものの一つの現場に親しむことのできる職業」と本紙「私の履歴書」に書いた。そんな先輩も泣く、この不実である。
(JN) ボールの質が変われば野球が変わる。2月から2か月をかけてトレーニングをしてきた選手たちはどう思っているのか。おかしいな、と思ってもまさかである。良くもここまで、隠し通したものだ。野球を楽しむファンや選手たちをここまで化かす必要があったのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56147360T10C13A6MM8000/