思い出しておきたい。自分が一人の力で生きているわけではない

(日経「春秋」2014/2/17付) 首都圏はたった一日の吹雪で大混乱になる。悪いニュースばかり目立つが、都会の大雪には良い点が一つある。困っているはずなのに街で会う人々が明るく生き生きとした顔になる。歩行者が滑らないよう店先で雪かきに精を出す店員さんに、ありがとうの一言が素直に出てくる。駅の掲示板を見上げる赤の他人が、同じ困難と闘う「同志」になる。誰をも等しく襲う悪環境に遭遇すると、人は他者に優しくなるらしい。3.11の時もそうだった。子供と老人が被災地で助け合い、支援者が日本全国から駆けつけた。あたりの景色が雪で白く変わると、薄れかけていた大切な記憶が、色鮮やかによみがえることがある。誰も悪くないから人は力を合わせて頑張るしかない。溶けきれぬ雪はビショビショで厄介だが、消える前に思い出しておきたい。自分が一人の力で生きているわけではないことを。
(JN) 私たちはこの便利な社会の中で、人と協力を直接しなくても生活ができている思ってしまう。でもそれは何も事故が無ければ孤立してしまう。物理的にも精神的にも孤立しないために、コミュニケーションが必要だ。それは言葉だけでなく、体を使っての協力関係である。いつも利用している通りで雪かきをする方々と、何時もならなんら挨拶も交わさないが、声は出さなくとも感謝の気持ちが出る。これを機会に挨拶の継続ができないものか。なかなか他人同士では難しいが、せめて職場や学校ではもう少し挨拶が増えても良いのではないか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO66926920X10C14A2MM8000/