可能性に挑む勇気の大切さを教えてくれた

(日経「春秋」2014/2/22付) 森喜朗元首相が、「真央ちゃん、見事にひっくり返りました。あの子、大事なときにはかならず転ぶんですね」と。残念無念の思いで口にしたに違いない。この人は2020年東京五輪組織委員会の会長である。いまに始まった話ではないけれど、どうにも軽いご仁だ。そんな森さんを尻目にかけるように、浅田選手は失意の底から1日で立ち直って最高の演技を見せた。リンクに流れるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。深夜のテレビの前で涙ぐんだ方もたくさんおられよう。あきらめない心、可能性に挑む勇気の大切さを、この大健闘は教えてくれたのだ。森さんではないが、世間を眺めて、つい利いたふうな口をききそうになるオトナたちを「あの子」は深く恥じ入らせるのである。
(JN) オリンピックに出場できる方々は、世界の一流である。その一流選手でも、日頃の積み重ねが実らないことがある。森喜朗氏、それは重々承知であろう、浅田選手を応援するつもりであったのであろうが、何とも軽々しく「あの子」と話し方がまずい。長い話をする上で、誤解を招くような言い方をなぜするのか。また、マスコミはこれから頑張ろうとする選手がいるのになぜ、このタイミングで流すのか。流すならば、オリンピックが終わってからでもよいのではないか。いや、一一こんな失言老人につきあっていたくない。せっかくのラフマニノフのピアノ協奏曲の調べと軽やかなスケーティングの記憶を大事にしたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO67232880S4A220C1MM8000/