人と人が顔突きあわせる大切さにあらためて思い至る

(日経「春秋」2014/2/14付) 電車の中、「私は役者のタマゴです。朗読するので聴いてください」、顔を真っ赤にして戯曲や詩の一節を読み続ける青年がいた。60年近く前の仲代達矢さんの姿である。引っ込み思案だった仲代さんは、こうして俳優としての自意識を鍛えたという。その殺気立つような覚悟に比べ、なんとも薄っぺらい自意識ではないか。そう思ったのがパソコン遠隔操作事件だった。安全な場所に身を置きながら、悪知恵をひけらかしたくなる下卑た心根が頭をもたげたのだろう。被告は一貫して犯行を否認し、犯罪と被告を直接つなぐ証拠はないという。暗がりでパソコンを操るその犯人と恥ずかしさで赤面した若き日の仲代さん。顔をふたつながら想像してみれば、人と人が顔突きあわせる大切さにあらためて思い至る。
(JN) このメッセージもパソコンから発信されている。誰に届くかわからず、勝手にこちらの考えを発信していくという身勝手で、顔も知られることなく自意識を発信するので、赤面もしない。但し、私はFBにもつなげているので顔は露出しているが、今、赤面してこれを書いていても、赤面は知られることはない。ウェッブサイトを使った情報伝達は便利であるが、やはりライブが真実を伝える力を持っている。仲代達也氏のあの眼は何も言わなくても心が伝わってくる。音や声は鼓膜だけでなく身体でも感じる。私たちは知らず知らずのうちに、画面中に納まってしまった。子供たちもすっかり画面の中でゲームにはまり込んでしまった。早く画面の外にでて今日は雪を楽しみましょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO66807660U4A210C1MM8000/