彼女とその文章は類いまれな生命力を得た

(日経「春秋」2014/2/26付) 「あなたになら、これまでだれにも打ち明けられなかったことを、なにもかもお話しできそうです」。東京や横浜の図書館で「アンネの日記」や関連の書籍が破られた事件が気味悪いのは、人の記憶を切り裂くような仕業だからである。ジャーナリストか作家になりたかったアンネは記している。「わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること!」。彼女とその文章は類いまれな生命力を得た。事件は生命力に対する卑劣な挑戦ともいえる。菅官房長官は「恥ずべきこと」と述べ、警視庁は捜査本部をつくった。犯人には、言いたいことは堂々と言え、とだけ伝えておく。こそこそ本を破いて回るような甘ったれに、人の記憶やアンネの生命力が揺さぶられるはずなどないのだから。
(JN) なぜ、読めないように書籍を切り裂くのか。それがなぜ、東京の図書館で広範に起きたのか。いったい誰が、何のためにそんなことをしなければならないのか。それも、対象が「アンネの日記」である。不可思議な現象である。対象を限定しているので、それは人種、宗教、思想的な背景があるのか、どうなのか。そのようなことをした者が間近にいるというのも、不気味である。この人(達)は、何を望んでいるのか、警察には間違えなく犯人を捕らえていただき、その真意を明らかにしてほしい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO67406800W4A220C1MM8000/