そんな意識が社会の中になお消えず残っている

(日経「春秋」2014/6/22付) 吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件で、警視庁は脅迫電話の声の分析を試みた。犯人が自供したため活用されなかったが、この事件以降、声紋鑑定は広く知られるようになる。犯罪がらみのそんな言葉を、東京都議会で耳にするとは思いもよらなかった。18日の本会議で、妊娠や出産への支援策を尋ねた30歳代の女性都議に「早く結婚しろ」「産めないのか」などとやじが浴びせられた問題のことだ。女性都議は発言者の処分を議長に求めたが、発言の主が特定されていないため受理されなかった。そこで声紋を調べよ、という声が上がっている。だが都議会は、犯罪者の集まりではないはずだ。当人が名乗り出て謝罪し、撤回する以外に解決の道はないだろう。周りにいた議員たちもこのまま口をつぐんでいれば、有権者とつなぐ信頼の最後の糸が切れてしまう。結局本音では女性を一段低く見ている。そんな意識が社会の中になお消えず残っていることも、また否定しきれない事実であろう。それがたまたま都議の口からこぼれ出たのだとすれば、犯人を捜す以外にもやることはたくさんある。
(JN) 議場での行動を議員は、一つ一つ責任を持って行動しているであろう。それがやじであろうと、同じである。私たちの代表者である議員は、自分の言ったことに責任が持てないならば、辞めていただくしかない。否、とにかく、私ですと名乗り出ていただき、非難を浴びるべきであろう。自分も言いたいことがあろうから、言うべきであろう。それが議員である。そうでないなら、静かに議場を去ることである。そして、党派ではなく、都議全体として、この醜態を日本の社会の現れであることを認識し、日本国民に対して声を出していくべきである。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO73142360S4A620C1MM8000/