多すぎる情報、人々からじっくり考えるという営みを奪っている

(日経「春秋」2014/6/1付) 月刊誌「中央公論」の元編集長で評論家の粕谷一希さんが84歳で亡くなった。雑誌「東京人」や外交専門誌「外交フォーラム」の創刊編集長も務めた。「文明が成熟すると人々は都市に興味を持つようになる」と語っている。1977年から3年余り、154回にわたり「戦後思潮」と題したコラムを執筆した。戦後のオピニオンリーダーを取り上げ、活動や主張を紹介しつつ、思想史の中での位置や限界を丁寧に描いた。若者に歴史感覚が欠けているのは大人に責任がある。そんな危機感からの連載だった。連載をまとめ81年に出版した本で、多すぎる情報が、人々からじっくり考えるという営みを奪っているのではないか、と早くも指摘している。あふれる情報を整理し、意味づけてみせるのも編集者の役割。晩年「自分は生涯一編集者だった」と振り返った粕谷さんも、その名人の1人だった。また惜しい人が鬼籍に入った。
(JN) 現在の都市生活者は、常に何かに追い立てられるような生活である。日本に住む者は、四季折々を感じながら生きて行く、生活のリズムを持っていたはずだが、今では年中無休の枠にはめられた生活だ。文字を読み考えることもなくなり、今出てくる目先の情報に流されている。毎日の新聞や週刊誌の次々に出される情報に溺れる中、じっくりと雑誌を読むことを忘れてしまっている。じっくりできる時間をつくろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO72116460R00C14A6MM8000/