華やかなブームのかげで、在来線は第三セクター化

華やかなブームのかげで、在来線は第三セクター
(日経「春秋」2015/3/14付) 「窓硝子にアイスクリームのやうな灯(ひ)が映つて/青海(あをみ)といふ駅/しらしらと夜明のうすあかりの中に/日本海は荒れてゐる」(田中冬二「日本海」)。旅に出たくなるだろう。列車が信州や越後の山々をゆっくりと越えていく。やがて見知らぬ海に出る。その感慨が作品を紡いだに違いない。ところがきょう開業の北陸新幹線は、長野から金沢まで最速でたった1時間5分。華やかなブームのかげで、並行する在来線は例によって第三セクター化した。しなの鉄道えちごトキめき鉄道、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道――。JRから線路を引き継いだ4社だ。もうひとつ、冬二の作品の一節を。「北陸線の/能生(のう) 梶屋敷(かぢやしき) 糸魚川(いといがは) 青海(あをみ) 親不知(おやしらず) 市振(いちぶり) 泊(とまり) 入善(にふぜん)/みんな何といふさびしい名であらう」(「北陸にて」)。詩人が詠んだそんな駅のどれもが、再出発する三セク鉄道の路線図にはしっかりと生き残っている。新幹線を降りたら、海沿いの道をたどってみるのもいい。
(JN) 旅の楽しみ方は色々、それは早かろう遅かろう、楽しめばよい。でも、そこで生活する者は違う。特にローカル線の途中駅に住む人々は、どうなのだろうか。私には、旅人の気持ちしかわからないので、勝手な想像である。新幹線ができると、ローカル線は、経営状況に応じて様々な形で整理させる。それは、そこで生活するためではなく、その路線の経営者のためである。そうやって、地方は寂れ、そして地域再生のためと、原発を受け入れる。勝手なお粗末な想像だが、もしそうであるなら、それでいいのか。北陸新幹線開通、そんなに喜んで踊っていてよいのか。勝手だが、私は旅人、三セク鉄道存続のためにも、大いにローカル線の旅をしたい。北陸へ行こう。それは、いいでしょうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO84390320U5A310C1MM8000/