民法の改正案がまとまった

(日経「春秋」2014/8/29付) どなた様に限らず、現金でお願いいたします。飲食店などでたまに目にする。「ツケお断り」の意思表示である。裏返せばそれだけツケが通用していたということだ。ツケ払いでたまった飲み代を、年の瀬に店のママさんが徴収して回る。そんな職場風景も昭和の昔はそこかしこで見られた。なにしろその年のうちに取り立てないと、飲み代のツケは1年たつと回収の権利がなくなるのだから無理もない。法律では消滅時効という。民法はこの消滅時効を細かく規定している。飲食代は1年で、弁護士費用は2年、診察料は3年といった具合だ。ややこしさゆえ、トラブルも起きる。そこでこれをわかりやすく、5年に統一する民法の改正案がまとまった。改正案には飲み代に限らず身近な問題が広く含まれる。たとえばそれまで規定がなかった家を借りる際の敷金や、商品を買うときの約款についてもルールが設けられる。なじみの薄かった民法を肴(さかな)にして、行きつけの店で一献傾けるのも悪くない。もちろんここは現金払いで済ませたい。
(JN) この社会において、その構成員として生きて行くためには、規則に従わねばならない。でも、あまりに細かく決められては、敵わない。同じ枠の中に詰め込まれては、多様な人々がそれぞれの固有の地域において、時間の流れの中で生きているのであるから、お国の法規の中にすべて押し込まれて良いのであろうか。枠にはめれば楽なのかもしれないが、私たちの行動はお互い様を考えながら、関係を持ちながら生きて行かねば、なんだか法律に従うロボットになりはしないか。私たちは「考える葦」であり、プログラムに従うロボットではないはずだが、その能力がもうないと私たちは判断したのか、それともファジー道徳心のない民を抑え込み「考えない葦」とするためなのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76319180Z20C14A8MM8000/