人の心の奥に巣くうものがいかに根深いか

(日経「春秋」2014/8/22付) 成績には何の問題もない一人の黒人の若者が大学への入学を希望する。その願いを町ぐるみで潰しにかかる。最高裁は入学を認めるよう大学に命じ、ついにはケネディ大統領が派遣した軍に守られ、白人群衆が罵声と怒号を浴びせるなか、若者は大学の門をくぐる――。1962年、米ディープ・サウス(深南部)、ミシシッピ大学に初めての黒人ジェームズ・メレディスが入学したとき、こんな経緯があった。きっかけはやはり黒人の若者だった。ミズーリ州ファーガソンで白人警官が18歳の黒人少年を射殺した。事件に抗議する黒人の一部が暴徒化し、商店が襲われたりした。オバマ大統領は被害者を悼みつつ、こうした行為を「正義とは逆行する」と批判した。ミシシッピで黒人の若者一人を護衛した軍と、ファーガソンで黒人と向き合う重装備の警官隊と。半世紀を隔てて現前した二つの異常な光景が、人の心の奥に巣くうものがいかに根深いか、語る。
(JN) 我々人類は、なぜに社会的階層を生みだし、そして、下層に対して憎しみを持つのか。下層は、様々な方法で下へ下へと更に下層を作り出す。例えば、下層白人は自分達よりも下層、例えば下層の黒人が存在しなければならない。この階層について、下層白人は力で差別をみせつければ、これを受けて黒人も抵抗する。最後は、上層部が更なる力で押さえつけ、上層部の力を思い知らす。国内だけでなく、国際関係でも下層間での摩擦に、米国の力を注ぎこむ。「正義」とはなんだ。憎しみは永遠に続くのか。その力の方向が違うのではないか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75989090S4A820C1MM8000/