事故を二度と起こさないために

(日経「春秋」2014/8/26付) 雪煙のなかを落ちていった友が残したものは、切れるはずのないザイルのすり切れたような跡だった。「氷壁」は、1955年に前穂高岳で起きたナイロンザイル切断事故が題材になっている。この事故で弟を失った登山家の石岡繁雄氏は原因究明へ独自に実験を重ねた。その結果、原因を突き止め、国を動かした。ザイルの安全基準ができ、製造物責任の考え方を広げるきっかけにもなった。事故を二度と起こさないために一番大事なのは、それがなぜ発生したかを明らかにすることだ。福島第1原子力発電所の事故の記録が公開されることになった。福島の事故は今もはっきりしない部分が多い。「吉田調書」を究明に役立てたい。電源喪失で原子炉を冷やせなくなったのは地震が理由か津波のせいか。吉田氏と政府や東京電力本社との間にはどんなやりとりがあったのか。原因を追究しなくてはならないのは汚染水問題も同じだ。原発建屋から汚れた水が広がるのを防ぐ「氷の壁」は、なぜ十分に凍らないのか。
(JN) 原発は、3・11以降、ずっと続いている。その現場でのこと以外にも、なぜに危険性を隠してまで原発をそんなに推進しなければならないのか。電力は、生産から生活までの要であり、石油がストップされれば日本は真っ暗になることはわかるが、なぜに原発でなくてはならないのか。他に方法を見出すことはできるであろう。一つの方法に偏ることなく、電力を確保することをなぜに行わないのか。そして、現実として、なぜに隠し続けるのか。「吉田調書」も全てが公開されるのか。情報は、洩れてもごまかすことができるが、放射能が漏れた場合にはごまかしがきかない。それは、水に流せないし、四季が変わっても消えない。現場で起きたことの究明とともに、原発に係る利権構造を誰が解明するのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76155360W4A820C1MM8000/