こうして人々は一色に塗りたくられていく

(日経「春秋」2014/8/15付) 「この大戦争でパパはなにをしたの?」。第1次世界大戦の初期、英国ではこんな図柄のカラー刷りポスターがつくられた。英国は当時、参戦した主要な国の中で唯一徴兵制度がなかった。軍に志願せず子どもの疑問に答えられるのか。身内も肩身の狭い思いをするぞ。ポスターはそんな脅しを込めている。勃発から100年の今年は「武器によらない戦争」を振り返る試みも盛んだ。結局のところ、戦時に国が国民向けに発するメッセージにはどこも差はない。祖国を蛮行から救え。正義のため立て。家族を守れ。古着姿を恥じてはいけません。欲しがりません勝つまでは……。こうして人々は一色に塗りたくられていく。揚げ句、命を失い、傷つくのは国民である。せめて惨禍を胸に刻み、もう一色に塗りたくられはしないという心構えをあらたにする。69回目の8月15日は、そうした日でもある。
(JN) 戦争というものが、どれだけ私たち国民を虐げるのか。毎日のように、悲惨なニュースが世界から伝わって来るが、我が身ではない。でも、何時、我が事になるかもしれないのである。そうなってからでは遅い。一般大衆には、それを現実に体験しなければ、戦争の悲惨さは解らない。言葉で言われて、文章を読んでも、他人事である。結局、勇気づけられて戦場へ赴くのである。そうならないためには、人々にその戦争の傷跡の現物を見て感じてもらうことであろう。現実の傷跡を見て、また戦場での記録映像を見れば、その惨さを感じないものはないであろう。でも、人はすぐに忘れるし、嫌なものは見たくないのである。心地よい言葉の方が良いのである。そのために、私たちは、今日を含めて、それぞれの日に機会を作り、例えは、広島平和記念資料館長崎原爆資料館沖縄県平和祈念資料館平和祈念展示資料館東京大空襲・戦災資料センターなど、現物を見て、言葉では言い表せない戦争の苦しみを一人ひとりが見つめ感じよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75686490V10C14A8MM8000/