コスプレは文化交流にも役立つが、詐欺は言語道断

(日経「春秋」2014/8/2付) 狐狸庵先生、遠藤周作は変装が大好きだった。あるとき、仙人のような格好で杖をついて銀座の酒場の扉をくぐる。山口瞳池田弥三郎といった旧知の人々もホステスも仰天。ポカンと見ていたが、正体にまったく気づかなかった。衣装や化粧で声や気分も別人になった気がする。年齢も性別も違う。別世界で暮らす。理想の人物になりたい。だれにもあるそんな願望を古来、奇抜で滑稽ともみえる仮装が満たしてきた。その思いにいま応えているのはコスプレだろうか。名古屋で「世界コスプレサミット」が開催中だ。12回目の今回は22カ国から愛好家が集まり2日に優勝者が決まる。一方、電話での成りすましやスマホのID乗っ取りなど、悪い変装が横行している。コスプレは文化交流にも役立つが、詐欺は言語道断。ギリシャ神話のペンテウス王は女装して祭儀をのぞき見したことで、八つ裂きにされてしまう。よこしまな仮装には、身を滅ぼす奈落が待っている。
(JN) 成りすましは、現代、姿が見えないものからコスプレまで、その本物より本物以上の魅力を持っているほどの技術力の高さがある。それが、人々の楽しみとしてあるなら良いが、怪しからん輩が多くある。年寄りを電話で騙す詐欺行為、IDの乗っ取りなど、自分の能力の使い道を間違えている。私たちは、お互いの存在を認め合い、そしてお互いの弱いところを相互に支援して生きているのであるから、他人の存在を無視するような行為や許されない。成りすましにも狐狸庵先生のように「違いがわかる」ようでないと、身を滅ぼすことになる。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75137070S4A800C1MM8000/