ウイルスにヒトが触れたときから始まった災厄

(日経「春秋」2014/8/5付) 1960年代、大阪市の真ん中で奇妙な病気が流行した。発熱や頭痛をともなって腎不全を発症、ひどくなると皮下出血を起こす。約120人の患者が出て2人が亡くなった「梅田熱」である。原因は、ネズミを自然宿主とするハンタウイルスの感染とわかった。本来は特定の動物の体内でおとなしくしているのだが、何かのきっかけで外に飛び出すと人間に襲いかかる。そういう病原体による感染症が20世紀の後半から相次いで確認されるようになった。ラッサ熱やエボラ出血熱はヒトからヒトへもうつる始末の悪さだ。そのエボラ出血熱がアフリカ西部で深刻な広がりをみせている。致死率は最悪90%に達するという。エボラ・ウイルスの自然宿主は未特定だが、コウモリの一種とみられる。さまざまな生き物と平和共存していたウイルスにヒトが触れたときから始まった災厄を人類はどう乗り越えたらいいのだろう。たけだけしき勢いのエボラ禍は、遠い場所の出来事ではない。
(JN) 西洋文明の発展というか人類の生活圏の拡大は、自然との闘いである。偉大なる大自然について人類は、まだわからないことが多々あり、その見えぬ敵と人類は闘い攻防を繰り返し、そしてお互いに興亡を繰り返している。水に流す文化の日本は、自然とともに共存をしていたが、明治維新以降の西洋化により自然破壊を繰り返し、生活圏は鎖国から世界の隅々まで広がった。それは、日本だけではなく、地球上の人類の生活はその差あれど、一体化して動き、病も共有するに至った。遥か彼方の西アフリカで起きていることは、別世界ではなく、直ぐに襲ってくる危機でもある。私たちは、エボラ出血熱に対して、それぞれのできることを協力し、解決をして行かねばならない。それは、流行を抑える西洋的な対応の他、今後、自然との共存をして行くための日本独自の対応がないであろうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75241580V00C14A8MM8000/