笹井氏の死は科学の進歩にブレーキをかける

(日経「春秋」2014/8/6付) 死者は、どんな厳しい、また見当外れな非難を受けても、聞く耳がない。傷つけられても、傷つけられたことを永遠に知らない。これこそ死者の特権である――、と串田孫一。死者からすれば「なんと身勝手な言い草か」ということがあるだろう。しかし、「死者の特権」への誘惑に屈するかのように渦中の人物が自殺することは何度もあった。理化学研究所笹井芳樹氏(52)の自殺にもまた、そんな印象を持つ。笹井氏には、論文の不正を何もかも明らかにする責任があった。サイモン・シンは「死は、科学が進歩する大きな要因のひとつなのだ」という。頑迷な大御所の死とともに、古くて間違った理論が消え去るからである。しかし、笹井氏の死は科学の進歩にブレーキをかける大きな要因になるだろう。そのことだけにでも聞く耳を持ち続けてほしかったと思う。
(JN) 我々の命は、その人個人だけのものではない。私たちは、共存で存在しており、共同体の財産である。その共同体の大事な命を勝手に消し去ることはできない。また、平常時には人は人を殺めてはならない。もう、何も聞きたくない、考えたくない。自分がいなくなれば良いのだなどど考えてはならない。周りからの圧力が大きいほど、それを聞き、考えて行かねばならないのが、共同体の構成員の役目である。人は自分であろうと殺人を犯してはならない。人が死ぬのは必然であるが、それを速めてはならない。私たちは、共同体の仲間とともに役目を果たしていかねばならない。自分より辛い人のためにも。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75300760W4A800C1MM8000/