「秘密」

(日経「春秋」2013/10/30付) はやり歌に多い言葉といえば、昔ながらの歌謡曲であれ近年のJポップであれ基本はそんなに変わるまい。恋、愛、心、夢、涙、別れ……。それに秘密。スマートフォンの歌詞検索アプリで調べたら「秘密」を含む曲が2955件。人の世に、しのびやかな物語が満ちているのを歌は映すのだろう。けれど国家の抱えた秘密となると剣呑(けんのん)すぎて詞になりそうもない。特定秘密保護法案は曖昧なことだらけである。ここでは何が秘密かも秘密なのだ。困った発言が飛びだした。自民党小池百合子氏が、メディアに出る首相の動静記事について「知る権利を超えている」と述べたそうだ。首相が昨夜は誰と、どこで会ったか。官房長官は「動静記事は特定秘密の要件にはあたらない」と語ったが、くだんの努力規定の脆(もろ)さを示してあまりある。ゆうべのことはもう聞かないで――そうはいかない。
(JN) 国家の運営のために秘密にしなければならないことがあるであろう。それは現行の法でも定められているのに、なぜ更なる法律が必要であるのか。そんなに秘密にしたいことがあるのか。信用と情報が命であるこの資本主義社会であるのに、なぜそんなに秘密を必要とするのか。国家にとって秘密にしなければならないことがあるなら、その範囲とその後公開できる時期などを十分に練り上げることができないのか。自民党はなぜそんなに急いでいるのか。それは秘密なのか。秘密だからあいまいなの。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO61844630Q3A031C1MM8000/