旺盛な起業家精神と地域のつながりの健在が米国の強さの土台

(日経「春秋」2013/10/12付) 米デトロイト財政破綻してから、まもなく3カ月たつ。そのデトロイトがいま、起業やニュービジネスにわいているという。2年前、高級時計の工場を開いた経営者がいる。今年夏にはこの街とニューヨークに直営店を開くまでになった。工場では社員75人が働く。職を失った技術者が訓練を経て新たな舞台を得たのだ。市バスは頼りにならないからと貧困地域を走る私営バスが誕生、台数を増やす。空き家が店に変身する。老後用にためた資金でクレープ店を開いた元教員がいた。この街を愛しているから、と動機を説明したそうだ。公共交通の復活や環境、街づくりなど、コミュニティーの再生につながるビジネスが目立つのが特徴だそうだ。ビジネスではないが市民多数の参加で廃虚街を清掃した例もある。旺盛な起業家精神と地域のつながりの健在が、米国の強さの土台かもしれない。地域の衰退は日本でも差し迫った課題だ。皆のために起業し、汗をかく人が、それぞれの街にどれくらいいるだろう。
(JN) 開拓精神はこの新大陸をここまで開き、発展させた。その中で都市は生成発展没落と変化を繰り返した。資本はそのように様々なものを破壊し捨て去り、そして新たな場所に新しいものを作り出す。しかし、生身の私たちは生活していた場所をそう簡単に捨て去ることはできない。またその場所を生成させなければならない。巨大都市デトロイトでは起業家精神と地域のつながりが土台となり再生が期待されていると。一方、日本はどうなのか。あの戦後復興のパワーはどこに行ってしまったのか。何でも御上の保護を求める発想が根付いてしまったこの国の民には市民の精神が根付かなかった。そこから考えることが課題ではないか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO61007830S3A011C1MM8000/