「環境難民」

(日経「春秋」2013/10/23付) 人口10万人強、陸地面積700平方キロあまり。赤道直下の太平洋に浮かぶキリバスは、海抜3メートル以下の高さしかない。この島国を6年前に離れてニュージーランドで暮らしてきた男性が、難民として認めてほしいと裁判に訴え、大きな話題となっている。地球温暖化がもたらした海面の上昇で母国に住めなくなった。難民認定を申請した理由として、そう主張しているからだ。飲み水や農業用水に塩水が混じるなど国民生活への影響がもう出ている。「母国では生きていけない。何より子どもたちに未来がない」。訴えは切実だ。一審では「条約・法律上の難民の定義に当てはまらない」との理由で敗れ、先週、上訴した。アノテ・トン大統領はじめキリバス政府は、国土の大半が沈没するとの最悪のシナリオを前提に据えて、秩序だった国民の海外移住を進める考えだそうだ。「環境難民」ではなく、役に立つ移住者として世界の国々に受け入れてもらえるように、教育と職業訓練に力を入れているのだ。SFめいた現実が、今、ここにある。
(JN) 地球温暖化は我々の住む場所を徐々に浸蝕している。この事実について皆理解はできているが、条約や法律が追いついていない。キリバスの住民を助けるためにはどうすればよいのだろうか。いやいや、他国のことではなく、日本でも、国を捨てて出て行かねばならないことが今後おきるかもしれない。今週は伊豆大島の人たちのある程度の人数が島を後にする。それが富士山の爆発や大きな地震により原発事故が起きたら、日本にいる者が近隣諸国に避難しなければならないことだって可能性はある。我々はそういうことを個々人でも考えて行かねばならない。直ぐそこに、危機はあるかもしれない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO61492370T21C13A0MM8000/