1973年、黄金の高度成長はこれを機に終焉、日本人はすこし大人になっ

(日経「春秋」2013/10/13付) 1973年のテレビドラマに「それぞれの秋」という作品があった。家族の脆(もろ)さを正面から描き、タイトルどおり、物語は秋の深まりとともに回を重ねた。ちょうどそのころ、日本中を騒然とさせていたのが石油ショックである。第4次中東戦争をきっかけに原油輸入が激減し、モノ不足への心配から、なぜかトイレットペーパーに人々が殺到して在庫がなくなった。黄金の高度成長はこれを機に終焉(しゅうえん)に向かうのだが、日本経済は省エネ徹底などを進めてしぶとくよみがえる。この時期を境に世の中の雰囲気は変わり、日本人はすこし大人になった。憂色ただよう「それぞれの秋」の登場もその気分に似合っていたかもしれない。あれから40年。戦後日本の青年期ははるかに遠い。
(JN) 1973年の「それぞれの秋」、筑波大学開学、公害健康被害補償法制定、第四次中東戦争オイルショック・モノ不足・大手商社の買い占め、セ・リーグ終戦で巨人が阪神を下しセ・リーグ9連覇(V9)達成し阪神ファンが巨人の選手や報道陣に暴行、江崎玲於奈ノーベル物理学賞受賞、セブン-イレブン設立、第2次田中改造内閣発足、熊本市大洋デパート火災。いま日本は「それぞれの冬」を迎えているのか。あの40年前に働き盛りの世代が60歳を超えている。筑波大学構想は成功したのか疑問だが、ノーベル賞受賞は多くなった。石油不足の恐怖に陥らないように二酸化炭素を多発しないように原発を推進し、公害日本は改善されたようだが原発に呪われている。常勝巨人ではなくなったが阪神ファンは過激なままだ。デパートが潰れて、コンビニエンスストアーが日本中に展開される。箱もの政治は健在か。今の日本には「傘がない」、「夢の中へ」もう行けないのか。「わたしの青い鳥」はどこへ行ってしまったのか。40年前の「青い果実」はどうなったか。もう「冬物語」なのか。高齢期の日本だが、精神は大人になったのであろうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO61048600T11C13A0MM8000/