無慈悲な物語が絶えない地球

(日経「春秋」2013/1/21付) 1972年2月、長野県軽井沢町で起きた「あさま山荘事件」は解決までに219時間を要した。犯人の母親による説得、送電停止、放水と手を尽くした末に、あの有名な鉄球作戦がとどめを刺す。さすがに当時でもあまりの慎重ぶりにいらだつ声はあった。ましてや現下のアルジェリア当局からみれば、これなどは理解を超える日本式にちがいない。天然ガス関連施設がイスラム武装勢力に襲撃された人質事件で、軍がみせた行動は容赦なき掃討だった。世界とは、なんと非情なのか。日本人が巻き込まれる事件だけでなく、無慈悲な物語が絶えない地球なのだ。「あさま山荘」の2年前に、瀬戸内海での旅客船乗っ取り犯を警察は射殺した。これが批判を呼び、その後は慎重手法が主流になったという。そうでありつづけられた日本を揺さぶる、アルジェリアの現実である。
(JN) テロには屈しない。自勢力を守るためには諸外国の人々も巻き込む。じっくり交渉などをしている時間はない。日本でこのような諸外国の人たちを巻き込んだ事件が起きていたら、日本政府や首相はどのような判断を下していたであろうか。判断できずにずるずると時間ばかりを弄しているかもしれない。どのように対処しても、ベストな方法はないのであろう。国家が力(軍事力)で成立しているこの世界で、ゆがみを力で抑えている以上、どこかでテロ事件は起きてしまうのであろう。今回のアルジェリア当局の対処により、このテロ勢力が鎮圧されてとしても、必ずまた次のアクションが発生するはずだ。我々の豊かという暮らしのために、このようなリスクの中で資源開発が必要なのである。多くの人たちの命が犠牲になっている。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50809800R20C13A1MM8000/