壊すのは一日の無思慮な行動で十分だ

(日経「春秋」2013/1/25付) 80年前、ちょうど両大戦の間にドイツの有名な批評家、クルティウスが書いた。「仏独両国の和親を心から望んでいるフランス人とドイツ人は幾百万幾千万あるか知れない」。「和親に成功しない場合、何が我々を待ちかまえているか。文明の崩壊である」。予言通りの惨禍があって、重い犠牲のうえに両国が協力条約(エリゼ条約)を結んだのが半世紀前、1963年の1月だった。そのころ、米国の国務長官が言ったという。「英国は帝国を失い、その後、果たすべき役割を見いだせていない」。キャメロン英首相が欧州連合(EU)離脱の是非を国民投票で問う考えを打ちだした。アウトサイダー気分の抜けぬ島国英国。「フランス人は考えた後で走りだす。英国人は歩きながら考える」などという。4年先までの間、チャーチルの言葉を思うこともあろうか。「築くのは幾年もかかる遅々とした骨の折れる仕事だが、壊すのは一日の無思慮な行動で十分だ」
(JN) もう二度と惨事を起こしたくない。そんな思いで、EUは誕生し、ノーベル賞も得た。地つながりの国々と島国では考え方にも差があろうか。果たすべき役割の見出せない我が日本も島国、英国の形振りを習ってきたが、これからも見習うべきか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50971680V20C13A1MM8000/