国力を高める(2) 富を生む民間の活力を引き出そう

(日経「社説」2013/1/3付) 米国の学者リチャード・イースタリン氏が「幸福の逆説」を唱えたのは1974年である。1人あたりの国内総生産(GDP)が増えても、国民の幸福感が高まるとは限らないという意味だった。だが雇用や賃金を生み出し、国民に富をもたらす経済成長の効用が、色あせたわけではない。「成長は幸福の基盤になる」(法政大の小峰隆夫教授)という言葉を重く受け止めるべきだろう。 成長は国力の源泉といってもいい。民間の力を引き出す経済改革を急ぎ、富を創出する基盤を固めなければならない。第1の課題は海外の活力をどう取り込むかだ。アジアの潜在的な成長力は強く、米欧にもまだビジネスチャンスがある。要になるのは環太平洋経済連携協定(TPP)への参加だろう。法人課税の実効税率は12年度に、40.69%から35.64%(復興増税を除く)に下がった。これを主要国並みの25〜30%に引き下げることを検討してほしい。行き過ぎた円高を修正する金融緩和や通貨外交も続けなければならない。第2の課題は内需の掘り起こしである。少子高齢化が進む日本では、勤労世代が多く買う住宅や自動車、家電の市場が縮み、高齢者が求める医療・介護サービスの市場が広がりやすい。重要なのは規制改革だ。医療、介護、保育、教育などの規制を緩和・撤廃し、民間企業の参入を促すことで、「官製市場」を真の成長分野に変えられる。私費の自由診療保険診療を組み合わせて受けられる「混合診療」を原則解禁すべきだ。学校経営に対する学校法人と企業の参入条件をそろえ、強い経営基盤を持つ大学などを増やしたい。知識や経験が豊かな社会人を小中学校の教員に登用しやすいような制度改革も急いでほしい。第3の課題は地方分権だ。公共事業ばらまき型の地域活性化には限界がある。過剰な国の規制をなくし、地方に権限を移したい。ひもつきの国庫補助金を減らし、地方の自主財源を増やす必要もある。こうした改革が特産品を使った新産業の創出などにつながる。観光振興や企業誘致は地方の判断に委ねる方が効率的だし、自然エネルギーの事業化も地方でこそ生きる。安倍晋三政権は「成長による富の創出」を掲げた。抵抗勢力の壁を破り、必要な手段を繰り出せるかどうかが問われる。もちろん新しい産業や技術を生む民間の知恵も要る。すべての力を結集し、日本経済の再生を目指す時だ。
(JN) 幸福とは個々それぞれに異なる。まずは我々が生活しているこの世界が貨幣を価値尺度とするところである以上、その富を蓄積して使うことが一般的な幸福の表現になってしまう。自分としてはとても賛成できる幸福表現ではないが、これが現実である。でも、この配分に偏りがあることにより、様々な不幸が生じていることは事実である。地球全体の話は別として、日本に住む者の幸福のために、その国力を高めるのが短期的にはこの3つ(?海外の活力をどう取り込むか、?内需の掘り起こし、?地方分権)なのであろうか。経済理論の上ではそうであるのかもしれないが、我々はいつまでも国や都道府県に頼っていてはならないようであると考える。御上の押しつけにいつまでも従っていてよいのであろうか。自分たちで考えることから始めて、自分たちで行動しなければならないのではないか。自分たちこの心の幸福を高めるために、3つまず考えてみてはどうか。?幸福とは何か、それぞれの自分の幸福を考える。?自分の幸福のためには、生活する者同士の互いの幸福を認め、自分だけが良いのではなく、幸福の分配を狭い世界で終わらせないと考える。?そのために自分たち出来ることは何か。まあとにかく、政治家の皆様には、その目的が国民の幸福なのか、参議院を勝つことなのか、十分に考えて教えていただきたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50227090T00C13A1PE8000/